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ロングトレイルハイカー 齋藤正史│FOCUS vol.1 後編

2016/04/26

アメリカ生まれのロングトレイルハイキングを、文化として日本に普及させたい。ただその一心でサラリーマンを辞め、プロとしての道なき道を歩き出している。ひとりの人間をそこまで引き込んだロングトレイルの大いなる魅力に迫ってみる。ロングトレイルハイカー 齋藤正史│FOCUS vol.1 後編

ロングトレイルハイカー 齋藤正史│FOCUS vol.1 前編中編

コロラド州サン・サニベル森林公園付近。

コロラド州サン・サニベル森林公園付近。

出会いと刺激、感動。それはまさに旅そのもの

─齋藤さんにとってロングトレイルハイクの魅力とは何ですか?
「自然の中で普段は目にしないことや、味わえない時間を過ごせること。動物の鳴き声で存在を感じながら、景色や季節の移り変わりを見ていく楽しみ。自然を楽しむための、ひとつの方法論なんですね。それともうひとつは、人と出会う楽しみです」

─トレイルで会う人ですね?
「そうです。長い距離を何ヵ月もかけて歩くから、だんだん同じペースの人たちと一緒になっていくんです。キャンプ地も一緒だったり食糧の補給計画も似た感じで、降りる町も決まってくる。自然と集まっちゃうんですね」

左:ワイオミング州ローリンズ手前、乾燥地帯でのトレイルマジックにて。右:野生のヘラジカ。コロラド州アラパホー国立森林公園。 いずれも2013年コンチネンタル・ディバイド・トレイル

左:ワイオミング州ローリンズ手前、乾燥地帯でのトレイルマジックにて。右:野生のヘラジカ。コロラド州アラパホー国立森林公園。 いずれも2013年コンチネンタル・ディバイド・トレイル

─それは楽しそうですね。
「ファイヤープレイス(既存の石組みの炉など)のある所では、誰からともなく焚き火を始めると、みんなその周りに集まってきていろんな話をしながら、それぞれが夕食を作って食べる。情報交換もできますしね。『次のキャンプサイトではトレイルマジック(ハイカーをサポートする人が提供する水や食料)があるらしいぞ』ってことで行ってみたら、町に降りた人が食材を買い込んできて、焚き火の周りでパーティをしている。普段トレイルでは食べられないものを食べて、ワインを回し飲みしたりしながらね」

─小さいけど、濃いコミュニティですね。
「はい。たとえばトレイルから町に降りる時は、たいてい距離があるから、ヒッチハイクしようかな、と思った時にはもうクルマが停まっている。『ハイカーだろ?乗ってけよ』とか、『ウチに泊まりに来いよ』と言われてシャワー浴びさせてもらったり……。そういうことも時々あります。彼らはたいてい、過去に自分や家族が歩いた経験があるんです。だから、彼らは気持ちの上では今でもコミュニティの一員なんですね。そういうのがまた楽しみでもあり、カルチャーとして根付いているなと感じる点です」

─それはまさに旅ですね。
「そうなんですよ」

─出会いと刺激、感動……。
「人の要素は大きいですね。人が半分、素晴らしい景色の中を歩く要素が半分、じゃないかな」

ロングトレイルハイクの文化を日本に根付かせるために

─プロになろうと思ったのは、どんなきっかけでしたか?
「ロングトレイルハイキングの日本の第一人者で、作家の加藤則芳さんとの出会いです。最初に歩いたアパラチアン・トレイルで、ある日偶然にお会いしたんです。加藤さんも何日か違いで同じゴールを目指していたんですね」

─なるほど。
「帰国後、私は就職したんですが、ある日、加藤さんの報告会に誘われて、そこから仲良くさせていただくようになりました。それからは毎年のように加藤さんとそのお仲間と共に信越トレイルでご一緒し、いろんなお話を聞かせていただきました。加藤さんが不治の病気を告白されてからしばらくして、周囲の人たちと一緒にジョン・ミューア・トレイルにお連れする旅に出ました。交代で加藤さんを背負いながらトレイルを歩いたんです。その帰りの飛行機の中で考えたんです。私はこのままサラリーマン生活を続けていいのだろうか。ロングトレイルを紹介し続けた加藤さんがトレイルを歩けなくなったら、この素晴らしいアウトドアカルチャーは日本に根付かないのでは、と。それで飛行機が成田に降りる時には決心していました。ロングトレイルの文化を日本で育てていきたい。それを仕事として生きていこうと」

こうして会社を退職した齋藤は現在、ロングトレイル普及のために様々な活動に就き、今年で4年目になる。毎年のように海外のロングトレイルを歩き、同時に日本で北米スタイルのロングトレイル実現に向けて踏査や行政との折衝を続けている。
 海外のトレイルに行ける人は限られるが、それが日本にあればロングトレイルの文化は少しずつでも浸透していくはず。現在、国内にある本当の意味でのロングトレイルは、今は亡き加藤則芳がアドバイザーを務めた信越トレイルのみといった状況にある。
 加藤の意志を受け継いだ齋藤が目指しているのは、地元山形でのロングトレイル。それは険しい縦走路ではなく、里山や古道を縫いながら進む日本らしい自然を感じる道。ゆるやかなトレイルがあれば、お年寄りや子どもでも無理なく楽しめるし、海外のハイカーが魅力を感じるような景色の中を進む本格的なトレイルを作れれば、それは日本文化の発信にもつながるはずだと齋藤は考えている。

Text / Chikara Terakura
soto7号(双葉社スーパームック)より転載


齋藤正史
山形県在住。ロングトレイルハイクの普及及び、NPO法人山形ロングトレイル理事としてロングトレイルを造る活動を続けている。2005年アパラチアントレイル以降、2013年までにアメリカ三大トレイルを踏破し、日本人2人目のトリプルクラウナーとなる。
ブログ|Weight of the happiness
ブログ|山形ロングトレイル


Impression 齋藤正史のアイテム
リバーズトゥーバドルシャツ PM7766(旧品番 現在取り扱いのシャツはコチラ

トレイルを歩いているとウエアリングが重要になる。トレイルで、私は基本的にシャツスタイル。暑い時は、袖をまくったり、脱げばいい。トレイルでは、刺す虫も多いため、長袖のシャツの使いやすさは外せない。ただ、一般的なシャツは濡れると乾きが遅いのだが、このオムニウィックのシャツは、天候が変わりやすい季節に、多少濡れても乾きが早いので、濡れたシャツを着る不快感も、限りなく少なくなるのが嬉しい。


2016/04/26


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