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国際山岳ガイド 近藤謙司│FOCUS vol.4 中編

2016/08/19

エベレスト登頂6回。その仕事は一般登山者をヒマラヤの頂に登らせること。
これまで14年間で70人近くの8000m峰登頂をサポートしてきた国際山岳ガイドにヒマラヤ公募登山隊を続ける理由とその意味を語ってもらった。

FOCUS vol.4 前編はコチラ

標高8750mの南峰を越えた先に待ち受けるのが最大の難所「ヒラリーステップ」と呼ばれる岩場だ。

標高8750mの南峰を越えた先に待ち受けるのが最大の難所「ヒラリーステップ」と呼ばれる岩場だ。

食欲をそそる食事を用意する
それも重要な仕事です


─近藤さんの遠征隊は食事がおいしいと聞きましたが。
「登山活動が始まってキャンプ1以上では、基本的に軽いドライフーズが中心になりますが、ベースキャンプでゆっくりできる時は、手作りの日本食ですね。天丼やカツ丼も出しますよ。何年もかけて同じネパール人コックに作り方を教えて、毎年2、3品ずつメニューを増やしてきたんです。彼らは今では広島風お好み焼きだって作れますよ。具材を別々に焼いて、三層に重ねて(笑)」

ベースキャンプ帰着後、無事に登頂できたお礼を神棚に捧げる近藤隊長と伊藤伴さん。

ベースキャンプ帰着後、無事に登頂できたお礼を神棚に捧げる近藤隊長と伊藤伴さん。

─近藤さんが教えるんですか?
「教えますね。まあ、僕だけじゃなくお客さんや他のチームのトレッカーも教えますし。また、ネパールでの手配を請け負ってくれるのが日本人の会社なので、そこのオフィサーも教えていますね」

─たとえば、朝食は?
「ごはん系かトースト、卵料理。お粥も出ます。ごはん派の人もパン派の人もいますからね」

─昼食は?
「ベースキャンプでは、比較的凝ったものを作りますね。おいしい日本のラーメンとかチャーハン、冷やし中華とか。パスタなら、きちんとアルデンテで茹でてトマトベースかクリームベースのソース。 寿司系もよくやります。さすがに生の魚介はありませんが、ちらしやカッパ巻きくらいはできるので。米はネパール米なんですけど、日本の米に近いものを選んでもらっていて、日本食を作るときはそれを上手に炊いてもらう。あと、チャーハンやピラフを作るときはパラッとした普通の現地米を使っていますね」

─かなり細やかですね。
「そこまでいくには時間がかかりましたけどね。まあ、10年以上やってきた歴史というか(笑)。食べることで栄養を採ってもらうことが大事ですから、できるだけ食欲をそそる食事を用意することも重要な仕事ですからね」

一生に一度はエベレストへと考える人は少なくない

エベレストのネパール側登山ルートで最初の難関、アイスフォール帯を登る。常に崩壊のリスクがつきまとう。

エベレストのネパール側登山ルートで最初の難関、アイスフォール帯を登る。常に崩壊のリスクがつきまとう。

─近藤さんのエベレスト隊に参加するための条件は何ですか?
「基本的には、エベレストの前に8000m峰をひとつ登っていること。ウチでいえばチョー・オユーかマナスル(8163m)あたり。
で、8000m峰登山隊に参加するには、6000m前後のトレッキングピークを登っておく必要があり、それ以前にエルブルース(5642m)か、キリマンジャロ(5895m)を登っておくことをお勧めしています」

─しっかり段階を踏んで、ということですね?
「まあ、若くて体力のあるお客さんなら、ごく例外的に間を飛ばすこともあるんですが、特に高齢の方の場合は、低酸素の高所で体がどう動くかを実際に体験してみることが大事です。また、高所登山装備を使う経験だったり、酸素マスクのうっとうしさにも順応する必要があります」

─たしかに。
「山が好きで、これまでに6000m峰をいくつも登ってこられたような方なら安心なんですが、そうじゃなくて、一生に一度は富士山に、というのと同じような意識でエベレストを登りたいという人が世の中にはたくさんいるんですよ。特にアメリカ隊のお金持ちのお客さんなんかには多いですね。山が趣味ではないけど、一生に一度登れるのなら、といって参加している人がね。まあ、そういう方も受け入れるのがプロのガイドだとは思いますけどね」

左)標高7000mを越える高所キャンプでは就寝時も酸素供給が続けられる。酸素マスクに慣れるのもエベレスト登山に必要なこと。右)ベースキャンプには登山活動の安全と成功を祈願する神棚が。

左)標高7000mを越える高所キャンプでは就寝時も酸素供給が続けられる。酸素マスクに慣れるのもエベレスト登山に必要なこと。右)ベースキャンプには登山活動の安全と成功を祈願する神棚が。

─今はどんなタイプのお客さんが多いんですか?
「そうですねぇ、より一般人に近い方が多くなってきました。以前は、どこかの山岳会で山をやってましたって方が半数以上だったんです。けれども今は、山岳部にも山岳会にも所属したことがなく、正式に山登りを教わったことがない人。ガイドとしか山に行ったことがない人も中にはいます。スタイルは変わってきてますね」

─近藤さんのお客さんたちは皆さん仲が良くて、互いに影響し合ってる雰囲気がありますよね?
「よく集まって飲み会を開いてますね(笑)。『いやいやヒマラヤなんて無理』って言ってた人が、周囲に影響されて、だんだんその気になっていくパターンもあります。たまたまスノーボードで参加した人が、グループの集まりに参加しているうちに、気の合う仲間たちがヒマラヤ経験者ばかりなことに気がつく。『え、みんな登ってるの? じゃ私も行こうかな』って。普通では、あり得ない状況なわけですよ。だからウチの場合はちょっと特殊ですね(笑)」(後編へ続く)

Text / Chikara Terakura
soto8号(双葉社スーパームック)より転載


近藤謙司
国際山岳ガイド。冬季チョモランマ北壁最高地点到達などの記録を持ち、2002年からヒマラヤ公募隊登山のガイドとして活躍。これまでにエベレスト登頂者17名を含む日本人70名近くを8000mの頂に導いてきた。(株)アドベンチャーガイズ代表。著書に『エベレスト、登れます』(産業編集センター)がある

Impression 近藤謙司のアイテム

トーレストマウンテンジャケット PM5945

ピナクルシリーズのAGエベレスト隊2015&16の限定カラーのモデルで、機能・素材・重量などは同じです。
基本コンセプトは、軽量化と大型ポケット。
ハーネスに干渉しないポケット位置、大きく開くベンチレーターはクライマーを意識してデザインされていて、とても使いやすいです。


2016/08/19


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