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【CSJ magazine特別対談】為末大×トレイルランナー上田瑠偉(中編)

2018/03/15

アウトドアにまつわる情報をお届けしているCSJ magazineのスタート2周年を記念して、400mハードルで活躍し、現在はDEPORTARE PARTNERSの代表としてスポーツとテクノロジーに関わるビジネスに取り組まれている為末 大さんと、CSJ magazine登場回数1位のコロンビアスポーツウェアジャパン所属のトレイルランナー上田瑠偉選手の対談、前中後編の中編をお届けします。(前編はコチラから)


プロとしての生き方

上田 今日、為末さんに話を聞きたいと思ったのは、「プロとしての生き方」について、為末さんにいろいろとアドバイスをいただけないかと思っていたんです。

為末 上田選手は、現状、どんな形で活動されているんですか。

上田 まず、トレイルランの世界の話をさせていただくと、スポンサー収入だけで活動できる選手はいないのが現実です。僕も当初、アスリート雇用の形で週3日は出社して仕事をしていたんですが、競技に専念したいという気持ちを理解していただき、今は競技を中心に生活しているんですが、もっともっとトレイルランを知って欲しいという気持ちが強いですし、そうなればプロとして自活できるチャンスも広がるんじゃないかと。


為末 僕も現役時代、プロとして活動していましたが、陸上単体でいうと、プロとして成立している選手はいないわけです。実際には、陸上をベースとして、タレントビジネスを展開する例が多いです。大切なのは、「プロとして、どんなスタイルが心地がいいか」ということです。これは、生きていくスタイルの選択につながるわけですが。でも、上田選手の話を聞いていると、やはり「競技のプロ」として活動していくことがベースになると感じました。走りながら自然に目をむけているわけだから、「考える」方向性が合ってる気がするので。

上田 そうですね。あくまで競技力がベースにあってこそ、プロのランナーだと思っています。


為末 そうなると、トレイルランのマーケットを大きくしていくのがひとつ大切になると思います。ただし、ひとりの選手がマーケットを大きくするのは、たとえば、ウサイン・ボルトであっても、そこまでの影響力は持っていなかったと思うんです。だからこそ、上田選手をはじめとして選手たちが、トレイルランの魅力を発信していくことが大切でしょうね。ただし、その時に上田選手には、これまでとは違った「フック」を用意できる気がするんです。

上田 フック……。引っかかりですか?

為末 そうです。きっと、上田選手は我々が見たことがないような光景を目にしてきたはずです。そういうシーン、あったんじゃないですか?

上田 ヨーロッパアルプスの最高峰、モンブランの麓を走った100kmのレースでは(UTMBのCCCレース)、2000m以上の山や峠が6つもあるんです。キツいレースでした。何度も失速したんですが、最後の最後、夕陽に染まるモンブランを目の前に、シャモニの麓のゴールを目指して全力で追い上げた時の風景、体験は忘れられないですね。

為末 それです。僕はスポーツを通じて人間を考えてきたんですが、トレイルランにはまったく違った形でのアプローチがあるように思いました。たとえば、上田選手が体験してきたことは、認知心理学や、脳科学を研究している人たちにとって、すごく興味深い対象だと思う。

上田 まったく想像もしていなかった世界です。トレイルランをすることが、そんな可能性を持っているんですね。


為末 不整地を走ること、自然と調和しながら自分の体をコントロールすること。これって、面白いことですよ。

上田 自分が体験したことを、別世界だと思っていた人たちと語り合う。そうすることで、トレイルランの新たな魅力が発掘されるなら、自分がやってきたことの意味も広がってきますね。やってみます。

後編へ続く  文/生島淳



為末大
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。 男子400メートルハードルの日本記録保持者(2018年3月現在)。
現在はSports×technologyに関するプロジェクトを行うDEPORTARE PARTNERSの代表を務める。 新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『走る哲学』、『諦める力』など。



上田瑠偉
1993年長野県生まれ。トレイルランナー。2014年の日本山岳耐久レース。大会記録を18分も更新し、夢の7時間切り目前まで迫る走りで最年少優勝を果たした。2016年はアメリカで開催された100㎞レースを大会新記録で優勝。スカイランニングと言われるより競技性が高く、標高の高い山で行われるジャンルのU-23世界選手権で優勝など、海外でも結果を残している。コロンビアスポーツウェアジャパン所属。


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