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高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2018秋冬新作チェック(前編)

2018/10/03

テレビの登山番組や、アウトドア・登山系の雑誌、ウェブサイトなど、多くのメディアで活躍されている山岳ライターの高橋庄太郎さんに、マウンテンハードウェアの2018秋冬の新作アイテムをチェックしていただきました。

高橋 庄太郎
宮城県仙台市出身。山岳/アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌などを中心に執筆。特に好きな分野は、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでも野外のテントで眠る」こと。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。



毎年、毎期、さまざまなアウトドアブランドから新作ウェア&ギアが続々と登場している。定番的なアイテムのディテールを微調整することで完成度をあげているメーカーもあれば、これまでにないデザインとアイデアを盛り込んだ新機軸の製品を積極的に開発しているメーカーもある。
正直なところ、見ていておもしろいのは、やはり新機軸のウェアが多いメーカーだ。そういう意味では、マウンテンハードウェアはズバリ。だから僕はこの会社の新製品をチェックするのをシーズンごとに楽しみにしているのだ。そこでここでは注目のニューモデルを前編、後編にわけてチェック。冬を前に、そのポテンシャルを探っていった。

コアストラータジャケット

これは、今期のマウンテンハードウェアのイチオシのひとつだという、インサレーション。つまり、防寒着だ。ただ、防寒着といっても、ただ温かいのとは違う。近年になって多くのアウトドアブランドが開発している「行動中にも着られる」ウェアである。
ボリューム感があり、行動中ほど体温があまり上がらない「動かないとき」ももちろん充分な保温力を発揮する。しかし、行動中の着用も想定しているということは、体を動かして体温が上昇してもウェア内部が暑くなりすぎず、蒸れにくいという意味だ。

このウェアをチェックしたのはまだ温かい9月上旬。じつはこの原稿、コアストラータジャケットを着ながら書いている。体感温度は高いはずなのに、さほど暑くは感じない。防寒用なのになんだか矛盾する話のような気もするが、事実そうなのである。
コアストラータジャケットに使われている中綿は、プリマロフトアクティブというもの。素材はポリエステルだが、特殊加工を施すことによって保温力を高めている。雨で湿っても一定以上の温かさをキープするのと同時に通気性が高く、だからこそ暑くなりすぎないわけである。素材の進化というものはスゴい。また、表面からはわからないが、どうやら首元だけは中綿が2倍くらいの厚みがある。熱が逃げやすい部分だけに、この工夫はありがたい。

もうひとつの特徴は、伸縮性が素晴らしいことだ。自分の体にジャストフィット、いや、たとえ若干小さめのものを着ていたとしても、体を締め付ける感覚はほとんどない。これは伸縮性があるだけではなく、身体工学に基づいて立体裁断されているからで、着ていることを忘れるほどだ。ストレッチは、左右もしくは上下に伸縮する、いわゆる2WAYタイプ。左右にも前後にも伸縮する4WAYではないが、体の動く方向に合わせて使用することで、2WAYでも並みの伸縮性を体感できるようである。

ちなみに左ポケットにはウェア本体を押し込めるパッカブル仕様。僕は中綿がつぶれるインサレーションはそのままバックパックに突っ込んだほうがパッキングしやすいと思うので、個人的にはとくに必要ない機能ではあるが、パッカブル仕様を好む人も多く、メーカーのサービス心が発揮されているディテールともいえそうだ。

コアストラータジャケット(Men’s)
¥23,760(税込)
女性用はコチラ→Women’sコアストラータジャケット



コアストラータフーディ

こちらは同じコアストラータながらも、頭部が「フーディ」。コアストラータジャケットはハイネック仕様であるが、こちらにはフードがついている。インサレーションとしての基本的機能は同じだとはいえ、より温かさを求める人には、やはりフーディがいいだろう。血管が表面を流れている頭部は体の中でも熱が逃げやすい場所だが、そこを温かな中綿で守れば体温を守れるわけだ。また、ウェア内部で温まった空気は上昇して首元から逃げていくものだが、そのときフードをかぶっていれば暖気の流出を止める働きも期待できる。

ハイネックのジャケットとフーディのどちらを選ぶのかは、人それぞれだ。インサレーションの上にハードシャルジャケットなどをレイヤードすることが多い人ならば、ハイネックのほうがいいだろう。ハードシェルジャケットにもついているフードと2重にならず、着用時に首元がすっきりするからだ。だが、インサレーションをアウターとして着用する機会が多い人ならば、フード付きのほうが体温調整しやすく、降雪時には雪から頭部を守ることもできて好都合である。

コアストラータフーディのフード部分も伸縮する。ただし、その方向は左右。だからフードをかぶってから下を向くと、伸縮性が高い生地だからといってタイトめのサイズを選んでいると、人によっては窮屈に感じるかもしれない。とくに分厚いニットキャップやヘルメットを合わせていると、フードが頭部の動きに追従しきれず、脱げてしまうかもしれない。フード使用時の快適性を考えれば、タイトすぎないサイズを選ぶのがお勧めである。ちなみに、フーディのほうもパッカブルだ。

コアストラータフーディ(Men’s)
¥25,920(税込)
女性用はコチラ→Women’sコアストラータフーディ


ドライステインジャケット

DRY Qエリートというマウンテンハードウェア独自の透湿防水素材を使ったハードシェルジャケットだ。汗による水蒸気を生地に吸収せず、ダイレクトにウェア外に放出することで、透湿性にスピードを加えた製品である。重量は564gで重くはないが、現代のハードシャルとして見れば軽くもない。その代わり、ウェアのどの部分を見ても強靭でタフな使用に耐えうるようにデザインされているようだ。

まずは生地。表面は切れにくい糸を格子状に織り込んだ細かなリップストップナイロンで、防水透湿性素材を表地と裏地で挟み込んだ、いわゆる三層構造。しかも厚めとあり、簡単には破けないだろう。もしも破けてもごくわずかで済むに違いない。
各部のファスナーも同様に丈夫そうだ。フロントはそれだけで水の侵入を防ぐ防水タイプ、左右の胸ポケットと脇下のベンチレーター部分は屈曲性にも配慮した止水タイプと1枚のウェア内で2種類を使い分けているが、どちらも壊れにくいしっかりとしたものである。じつは止水ファスナーのなかには、滑りが悪くて開け閉めに難儀するものも多いのだが、ドライステインジャケットに使われているものは、見るからに高質。実際滑りがよく、ストレスなく開閉できるのがいい。細部にも手を抜いていないのは好印象だ。

このウェアの特徴は、頭部にある。首元に付けられている伸縮性のドローコードは、片手で引くだけで絞れる便利なタイプだが、おもしろいのはこのコードはかなり長くとられており、鎖骨部分を引くと頭部から首元までが一気に絞れるということ。より正確に言えば、かぶったときに左側に来る部分を引くと前頭部が締まり、右側を引くと後頭部が締まり、左右を均等に引くと頭部全体の口径が円状にきれいに絞れるのだ。これならばヘルメットをかぶった場合もずり上がりにくく、強風にも強いだろう。このコード使いにより、首元の生地のたるみを取ることにも成功している。

首の裏部分にも注目してほしい。スナップボタンによって、フードの生地のたるみを縮めることもできるようになっているのだ。その差は5cmほど。この部分の調整をベルクロやドローコードで行なうウェアは多いが、スナップボタンを利用したものは珍しい。しかも大ぶりのボタンなので、グローブをしたままでも調整しやすそうだ。

個人的にうれしいのは、フロントのファスナーがダブルタイプであること。ジャケットを着たままで屈むと、たるんだ生地が腹部に溜まり、しかも硬いファスナーがゴワついて不快だ。しかしそんなときもファスナーの下だけを空けると、腹部のたるみが開放されてストレスがなくなる。
できるだけ軽量に、できるだけシンプルにと作られたハードシェルジャケットにはダブルファスナーではないものも多い。だが、僕が個人的にハードシェルジャケットを選ぶ際は、シングルファスナーというだけで「使いにくい」というイメージが先行してしまい、セレクトの選択肢から落としがちになる。その点、このジャケットは、選択肢のひとつとなりそうだ。

なお「軽くはない」と書いたこのジャケットだが、内側のパウダースカートを取り外すと、実測で62gほど軽量になる。スキー、スノーボードではなく、登山中心にこのウェアを着るのならば、パウダースカートはあまり必要ないので、取り外して軽量にして着てもいい。しかも外せばバックパックのヒップハーネスと干渉することもなく、より快適に着られるはずだ。
うれしいのはアジアンフィットで作られていること。海外メーカーのジャケットの多くは腕が長すぎるものが多く、手首に生地が余って使いにくいものだ。じつはマウンテンハードウェアの製品にも同じことがいえるものもあるので、この配慮はありがたい。中国や韓国を含めたアジア各国の市場がますます広がる現代において、こういうウェアは今後もっと増えるのかもしれない。

ところで、ドライステインジャケットは3色展開だが、そのなかでオレンジだけは腰から下の色を変え、カーキになっている。これを同色のパンツと合わせると……。なんだか足が長く見えるから不思議だ。

ドライステインジャケット
¥39,960(税込)


ドライステインパンツ

ドライステインジャケットと対になって活躍するのが、ドライステインパンツである。素材はジャケット同様のため、ここでは省略する。ただし、ジャケット以上に傷みやすいパンツだけに、裾から膝下まではより強靭な素材に一部変更してあるのがポイント。この部分はエッジガードといわれ、クランポンの爪などを引っかけても容易には破れないようにするための配慮だ。裾にはインナーゲーターが付き、雪中に足を突っ込んでもブーツ内に雪が入ることを防いでいる。滑り止めもついているのでブーツにフィットしやすいが、最近増えている足首部分が細めのアルパイン系ブーツだと、もしかしたらずり上がってしまうかもしれない。自分が冬山で履くブーツに合うかどうか、確認したほうがよいだろう。

このパンツで特筆すべきは、サイドのファスナーだ。止水タイプの上をフラップで覆い、防水性をあげている。この部分もダブルファスナーなので、上だけを空けると腰元に空気が入り、ベンチレーターとしても機能する。行動中に体感温度が上昇したときはありがたく感じそうだ。引き手も大きめで、グローブをしたままでも操作しやすいはずである。
サイドファスナーをフルオープンし、腰の裏に付けられたスナップボタンを外すと、ブーツを履いたままでも脱ぎ履きできる。雪山用のゴツいブーツはいったん履くと脱ぐのが面倒なだけに、こういう仕様は非常に便利だ。だが、このスナップボタンは、思いのほかデカい。グローブをしたままでも操作できるようにとの配慮なのだろうが、バックパックのハーネスに押され、腰に当たってしまう。重い荷物を背負い、腰に荷重を分散すると、人によっては傷みが生じる可能性もないではない。ぜひしっかりとショップなどで試し、自分で判断してほしい。

このパンツもジャケット同様にアジアンフィットだ。簡単に言えば、足が短い。僕もアジア人の一員として、その現実を突き付けられると忸怩たる思いにもなるが、着用感の向上という意味では、これでいいのだ。

ドライステインパンツ
¥32,400(税込)


そんなわけで、この「前編」ではインサレーションとハイドシェルジャケット&パンツをチェックした。次回の後編では、パンツ、グローブ、バックパックをピックアップしていく。
後編はコチラ

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2018/10/03