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2016 UTMB / CCC │ マウンテンハードウェア PICK UP STORY

2017/07/21

全国各地でレースが毎週末行われているトレランシーズン真っ只中、ランナーの皆様もターゲットの大会に向けて走りこんでいるのではないでしょうか。中には海外のレースに向けて準備されている方もいらっしゃると思います。今回は、数ある海外のレースの中でもコロンビア、マウンテンハードウェアもスポンサードしている世界最高峰のトレイルランニングレース “UTMB®”のCCCカテゴリーに昨年参戦した上田瑠偉選手の記事をご紹介します。(当記事は、マウンテンハードウェア SPRING 2017カタログからの転載です。)


ヨーロッパアルプス最高峰モンブランの麓を巡るUTMB大会。山は美しく、そして険しい。その中のCCCは世界一の100kmレースである。夕闇迫るシャモニに向かって、上田瑠偉は時に余裕で、時に死に物狂いで走り続けた。

 クールマイユール、朝9時。CCCはスタート直後わずか10kmのうちに標高差1338mを駆け上がり、コース最高峰テト・デ・ラ・トロンシェ(2571m)を乗り越え、その先でUTMBと同じコースを、そう悪名高きグラン・コル・フェレ(2537m)を上ってゆく。標高差累積はUTMBの10000mに対してCCCは6100mと少ないが、距離101kmのなかに標高2000m以上の山や峠が6つもあり、そのうちのふたつは前述の通り2500mを越える。距離が短いぶん高速レースとなり、平地はもちろん、どれだけ速く山を駆け上り、駆け下れるかが勝敗を決する。CCCは世界一の100kmレースである。

8月最終金曜日の朝9時。CCCはモンブランの土手っ腹を貫いたトンネルのイタリア側、シャモニの真反対に位置するクールマイユールの町からスタートする。トップ選手にとって100kmは短い、表彰台に上がりたいなら、最初から最後までぶっ飛ばすことだ。

 今年も暑い、いや昨年以上に暑い。120kmの「TDS」では出場1794名のうち734人がリタイア、170kmのUTMBにいたっては2555人のうち1087人がフィニッシュできなかった、今年のUTMBは壮絶とも言える炎熱灼熱であった。14時48分トップのミシェルがシャンペ・ラク到着、ベンチに座りもせず水を補給しただけで出ていく。2位に浮上したものの瑠偉は離されていた、18分後に姿をあらわす、あきらかに消耗している。サポーターは氷水に浸したバスタオルでカラダを覆いさらに水をざぶざぶかける。5分ほどで飛び出してゆく。
 ここシャンペは55km地点、もう半分だ。残り3つの山を残すだけ、そろそろペースを上げていい。このとき瑠偉もサポーターも気づいていなかったが、後続のジュリアーノ・カバーノとクレマン・モリエが3位争いに火花をちらし、少しずつ瑠偉との距離を縮めてきていた。次のエイドは16km先のトリアン、ラ・ジエット1884mを越えた先にある。瑠偉は好調だ、この区間でミシェルとの差を11分までに詰めた。ここでも氷水タオルをカラダに巻きつけ、頭から冷たい水をかぶる。瑠偉は滞在6分、ミシェルは滞在4分、残りの山ふたつ。


 18時29分、最後のエイド、バローシンヌにミシェル到着。1分ほどで飛び出していった。瑠偉は16分遅れ18時45分に到着。この前の区間で飛ばし過ぎたのか、再びミシェルに離されている。もうシャモニまで19km、残す山はひとつ、屏風岩のようにそそり立つラ・テト・オゥ・バーン2116mだ。瑠偉は5分ですべてを整えエイドから走り出していく、そのタイミングで駆け込んできたのが順位を上げたジュリアーノ。えらく勢いがいい、獣のような目で瑠偉の背中をにらみつけた。すぐ後ろに4位クレマン、こいつもまだまだ元気。うわあ、瑠偉よ、ケツに喰らいつかれたぞ!


 地元シャモニのヒーロー、山岳救助隊員ミシェル・ランヌにとってラ・テト・オゥ・バーンから先はもはや庭、完全ホーム。ラクに走れる。が、そのミシェルには瑠偉の姿は見えない、追撃の瑠偉には有利だ。
 しかし、その瑠偉の背中は3位ジュリアーノに見えている。屏風岩の上りを駆け上がる瑠偉、ストックワークを駆使して鬼の形相で追い詰めるジュリアーノ。その差は九十九折りの一段違いにまでなった。乾坤一擲、ここで瑠偉は大勝負に出る。もう100%を出し切っているにもかかわらず、最後の最後を絞り出す、ジュリアーノから見えるところではあえて速く走り、力強くパワーウォークを見せつけ、余裕をかます。ラ・テト・オゥ・バーン山頂まで、足の速さ強さをとことん見せつける。ついにジュリアーノは諦めた、あいつ には追いつけない。
 メンタル勝ち、ジュリアーノを退けた瑠偉は山頂の先で「ミシェルは6分先」と教えられる。ジュリアーノから逃げた勢いはミシェルとの差を詰めていた。追いつけるかも知れない。瑠偉は夕陽に染まるモンブランを目の前に、その麓のシャモニを目ざして全力で駆けて行く。


 シャモニの街は騒然。CCCの終盤、トップ4人の壮絶な戦いは街の誰もがwebの追跡サービスで知っている。これまでの流れで、最後の下りで順位が変わってもおかしくはない。いちばんで街に帰って来るのは誰だ?
 フィニッシュでMCが叫び始めた。ゲート横の液晶大画面に花道手前、商店街が写っている。ライブカメラは選手の姿をとらえた、CCC賛歌が鳴り渡る中、MCがミシェル・ランヌの名を叫ぶ、凱旋とはこのこと。ミシェルが愛児を高く抱え上げ、奧さんを抱きしめ、大会ディレクターと挨拶し、世界中のメディアにビデオと写真を撮られる。CCCトップを讃えるイベントの途中で、再びCCCテーマソングの音量が上がった、ふたり目が帰って来る、その到着を街中に知らせている。2位は誰だ。瑠偉か、ジュリアーノか、クレマンか?
 MCの声は『ジャポネ!リュイ・イエーダ!』と聞こえる。うわあ、瑠偉だ!液晶画面にシャモニの商店街を走る上田瑠偉が写し出された。夕暮れのシャモニにCCCテーマ曲「Across The Mountains」が響く中、フィニッシュ、12時間15分20秒。上田瑠偉はCCCのトップ10選手の中で誰よりも速く最後の山を駆け下りて、ミシェルとの差を5分16秒にまで詰めていた。

上田瑠偉●うえだるい。2015年のCCCでは暑さにやられた。脱水とオーバーペースがたたり、スタート後にはトップ争いを演じたもののふたつ目の山、グラン・コル・フェレで順位を落とす。本人曰く、実力の50%も発揮できなかった。同じ失敗は繰り返さない、2016のコンディショニングも完璧だった。猛追に次ぐ猛追、最高の戦いができた。


文/内坂庸夫


【ドキュメンタリームービー】世界最高峰のトレイルランニングレースUTMBに挑戦した3人のトレイルランナーのドキュメンタリー【ENDURE】。タフなトレイルと急峻な山々、素晴らしい景色の中でランニングに人生の意味を見つける3人のストーリーです。

2017/07/21

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