TRANSIT 10 月山 traveling Around the World Top TRANSIT.ne.jp

第10回 月山 1ページ目 2ページ目

山形駅から車で月山を目指す。市街地を出ると田んぼが広がり、黄金色の稲穂が頭を重たそうにしている。遠くに、雲のかかった山が見える。出羽三山の最高峰、そして日本百名山のひとつでもある月山だ。豊富な残雪のため、国内では乗鞍岳や立山と共に夏スキーが可能な山として知られる。うねるようなカーブの続く月山高原ラインを行くと8合目登山口に到着。標高1984mの月山山頂へは、ここから約2時間半の登山行。装備を確認し、いざ出発!

あいにく天候は良いとは言えず、あたり一面、霧に覆われている。しかも風がごうごうと音を立てて吹き抜けていく……。天気予報は曇り。雨は降っていないし、これから降りそうもない。予想外の風に、様子を見ながら進むことに。鳥居をくぐり、山頂を目指す。笹の原っぱの中を歩く。霧で遠くは見えないから、この笹の草原がどこまでも続いているような感覚になる。笹の葉が強い風に煽られ波打っている。ときおり、足下にリンドウの青い花が咲いているのを見つけると、ちょっとうれしくなる。こんな厳しい環境の中、花をつける小さなリンドウのたくましくも美しい姿に見とれる。まだまだ道のりは長い。しっかりと踏みしめて歩く。

日本海側から煽るように襲いかかる風が、だんだんと強くなってきた。尾根にさしかかったところで、風の強さは最高潮に。こんな状況めったにないなぁ、と思いながらも登ろうとしたけれど、だんだんと立つこともままならなくなってきた…!岩にしがみつき、なんとか体勢を立て直そうとした。でもこの先も天候がどうなるかはわからない。残念だけど諦めて引き返すことに。山では引き返すことも勇気のある行動である。山の厳しさが身にしみた。下山すると決めたものの、今度は向かい風。ジェットコースターに乗っているみたい。すると向こうから人がやってきた!しかもおおきな荷物を背負っている!「すごい風ですよ…」と声を掛けると、「そうですね〜」と、そのままスタスタと登っていってしまった……。きつねにつままれたようだった。

翌日はもちろんリベンジ。相変わらず霧が目の前を遮っているけれど、風はずいぶんと優しい感じ。昨日の尾根も、うそのような静けさ。むしろ風が心地よい。行者さんがもう山から下りて来た。行者さん、つまり山伏は、白装束を身にまとい、俗世界から離れて修行の一端を体験し、出羽三山の自然修験道を学ぶ。。真剣なまなざしで一歩一歩踏みしめている。行者さんが手に持っている杖が石をたたく音が風の音に混じって響いている。挨拶をかわしつつ、わたしも先を急ぐ。空がたまに明るくなるときがある。天気はだんだんよくなっているみたい。ちなみに予報は午後から「晴れ」。山頂に着くころには晴れ間が広がっているかな、と思うと足取りも軽くなった。

尾根を登ると晴れ間が広がった。光が飛び込んで来た!まぶしさに目を細めると一面の草原と尾根の稜線が遠くまで続いているのが見えた。いままで歩いてきた登山道がその上をうねるように走っている。雲の流れは相変わらず早い。でも、晴れたかと思えばまた霧がかぶってくる。それでもときおり見せる光景に立ち止まりながら残りの道をゆく。ほぼ予定の時刻に山頂へ到着。山頂には神社があり、古来から修験道を中心とした山岳信仰の場とされ、現在も多くの修験者や参拝者が集まる。わたしも神社でお参りをして、お昼ご飯を食べた。やっぱり山のおにぎりは美味しい。遠くから飛んでくる雲が山頂を越えてまたどこかへ消えてゆく姿をただ、眺めていた。

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第10回 山と人がクロスする修験道――月山・羽黒山を旅する 第9回 仏教の教えを現在に伝える「世界の屋根」―聖地チベット 第8回 デバダー達が舞踊る、クメール文化の集大成アンコールを歩く 第7回 101年目のオリーブの島、小豆島を行く、小さなお遍路旅 第6回 数々の伝説が残る神が降り立った地、秘境・高千穂へ 第5回 幽玄な苔と瑞々しい水が織りなす、屋久島の深部へ 第4回 本当の静寂を求め、奇岩立ち並ぶ世界遺産・ハロン湾へ 第3回 世界中のトレッカーの聖地・ヒマラヤを目指して、ネパールへ 第2回 流氷を歩く、という奇跡を目撃しに世界遺産・知床へ 第1回 中国 雲の上を歩く、という奇跡を求めて中国の霊山へ
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