降り立ったのはベトナム北部のノンバイ空港。成田から直行便で約5時間半。そこから首都ハノイへ向かった。そこかしこにヨーロッパを感じさせる建物が残るハノイの街を散見する。ハノイ最大の市場、ドンスアンマーケット、多種多様な店が軒を連ねる旧市街をまわる。雑貨や食器に目を奪われているといつの間にか夕刻。屋台でフォーを食べ早めの就寝。そして一夜明け、目的地「ハロン湾」を目指した。
空港から車でまず向かったのはハノイ駅。日本で言えば東京駅にあたるターミナル駅だ。ベトナムの南部、産業の中心ホーチミン市までの縦断路線がメインとなるが、他にも東のハイフォン、北東のランソン、北西のラオカイに通じる路線がある。印象的だったのが駅舎に組み込まれたファーストフードショップ。日本では当たり前の光景だが、ベトナムで見るとどこか異質だった。
駅を後にして向かったのは旧市街。市民の生活を支えるとともに、旅行者の買い物スポットにもなっている。ハノイ市街の中心にあるホアンキエム湖。その北側一帯が旧市街だ。通称「ハノイ36通り」といわれ、通りごとに売り物が異なる。一本道が変わると景色が一変するので歩いていて飽きない。ただ信号が極端に少ないため、道を横断する際は勇気を振り絞らなければならない。
午後になると雨が降り出した。これも東南アジアらしさと思い散策を続けた。雨煙の中、その存在を主張するようにたつ建築物がある。ハノイ最大の教会、セント・ジョセフ教会だ。地元の人は愛着を込め大聖堂と呼ぶ。1886年に仏教寺院の跡地に建てられ、1900年に今の姿に改修された。フランス統治が長かったハノイではキリスト教徒も多く、朝と夕に行われるミサには多くの人が集まり、教会の中だけでなく外にまで人が溢れ出す。
気温は高いとはいえ、雨に打たれ続ければ流石に体は冷える。そこで少し休憩することにした。街のどこに行っても必ずある、歩道にプラスチック製の机と椅子を並べただけの簡易喫茶。席に座るや否やおばちゃんが、ガラスのコップに暖かいお茶を出してくれた。聞けば烏龍茶だという。ありがたく一口飲むと、強い渋味が口を支配した。再度確認しても烏龍茶という答えしか返ってこない。しかし、この渋味とは裏腹に、体は熱を取り戻していった。
雨が止み、しばらくすると街の色が変わりはじめ、気づけば夜になっていた。陽の光の代わりに、人口の光で街は包まれ、昼とは違った姿を見せる。米の麺「フォー」やベトナム風お好み焼き「バインセオ」の店は人々で賑わい、笑い声に満ちている。ホテルの帰り道、花屋の前を通りかかった。白熱灯の光を受ける鮮やかな花々は、どこか少しエロティックで、ベトナムの夜を象徴しているように見えた。