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機能、使い勝手~メンテナンス性まで3ヵ月間みっちり検証!超軽量バッグ『サミットロケット30』

2018/12/03

マウンテンハードウェアのテストユーザー募集(サミットロケット30)のキャンペーン当選者より、レポートが届きました!さまざまなフィールドと天候で使用いただき、メンテナンス性までしっかりと検証していただいています。マルチにアウトドアをこなす方はもちろん、軽量バッグに興味がある方もぜひご一読ください!


マウンテンハードウェアのザック「サミットロケット30」をご提供いただき、7月から10月まで、3か月ほど使用させていただきました。マウンテンハードウェア(以下MHW)の製品は、これまでソフトシェルのシンクロジャケット、3シーズンテントのスカイレッジ2.0、高所にも対応するテントEV2などを使ってきました。どれも細部までよく作り込まれた、素晴らしい製品でしたが、ザックはどうなのでしょう?機能、使い勝手、サイズ感、デザイン、メンテナンス性など、いろんな視点から検証してみます。


【スペックを検証】
サミットロケット30は故ウーリー・ステック(Ueli Steck、アルプス三大北壁を駆け上るように登攀していく勇姿が印象的ですよね)のアルパイン・スピードクライミングを支えるために設計・開発されたギア群の一つです。
The Ueli Steck Project - SummitRocket 30/40 Pack

限られた荷物だけで素早い行動ができるよう、最低限必要なパーツと軽量素材で作られていて、「アタックザック」と言われているカテゴリーに相当するかと思います。容量30Lで重量は511g。同社の同容量モデルと比べてみると、スクランブラー30OD(マルチパーパス)が778g、コア28(一般登山向け)が1020g、ディアティッシマ35OD(アルパイン向け)が1470g、パラディンV.2(33L、デイパック)が1170gですので、群を抜いて軽量であることがわかります。
軽くするために、
 ● 天蓋からサイドには極薄の生地を使用
 ● ショルダーパッド、背面パネルも薄い素材
 ● ショルダーベルト、チェストストラップは薄いウェビング(テープ)
 ● サイドストラップと接続パーツも軽いものを使用
 ● ウエストベルトはストラップのみ
 ● 天蓋は一体型で、ストラップ不使用
 ● 背面フレームは軽量なハードウェーブ
など、細部にわたってさまざまな工夫が見られます。

軽量化は、ザックの耐久性や快適性を損なう可能性がありますが、サミットロケット30では傷つきやすいボトムとフロントにはHardWear X-Plyという縦・横・斜めに補強が入った頑丈な素材を使用し、ショルダーパッドとバックパネルは1日背負っても痛くならない程度の厚みは確保しています。また、薄いストラップは普通のバックルでは固定しづらいのですが、サミットロケット30では食いつきのよいバックルを使っていて、使用中にずれてくることはありませんでした(このタイプのバックルは初めて見ました)。


機能としては、
 ● トレッキングポールやピッケルを2本装着可能
 ● ハイドレーション対応
 ● サイドコンプレッション(取り外しも可)
 ● 収納スペースが大きい天蓋
 ● 前後にホーリング(引き上げ)用のループ
 ● フロントとサイド下部のデイジーチェーンにギア取り付け可能
と、アタックザックとしては十分な装備で、軽量化されていても最低限必要な機能は損なわれていません。レインカバーやサイド/フロントポケット、ドリンクホルダーなどはありませんが、必要ならばデイジーを使って工夫するとよいかと思います。私はバンジーコードを付けて、脱いだジャケットを挟めるようにしてみました。



■容量について
容量30Lでどれくらいの装備が入るのか、気になります。小屋泊まりで、ロープを使ってパートナーを確保しながら岩稜帯を進む場合の装備を入れてみました(雨具、防寒具、ヘッデン、ツェルト、行動食・非常食、救急用品、コンロ、ガス、コッヘル、ハイドレーション1.5L、携帯トイレ、地図、コンパス、筆記用具、ライター、ナイフ、スペア電池、着替え、替グローブ、替ソックス、洗面用具、日焼け止め、虫除け、サングラス、ロープ8mm×30m、登攀具若干、ストック)。

ちょっと厳しいかなと思いきや…

生地が薄いせいか、綺麗なパッキングは難しいですが、全部入りました。まだ若干余裕がありますが、ヘルメット、ハーネスは入りませんので、最初から着用していくことになります。ロープや登攀具を使わないルートであれば、もっといろいろ持って行けそうです。

【フィールドでの使用感】
今年の夏から秋は、台風などによる悪天候が多かったのですが、以下の山行でサミットロケット30を使って登ってみました。

 1. 北アルプス・針ノ木岳・蓮華岳(小屋からの頂上往復)7月中旬
 2. 神津島・天上山(ベースキャンプからのハイキング)7月下旬
 3. 北アルプス・西穂高岳(小屋からの頂上往復)
 4. 南アルプス・塩見岳(小屋からの頂上往復)8月初旬
 5. 高妻山(ベースキャンプからの頂上往復)9月中旬
 6. 谷川岳・幽ノ沢(ルート工作しながらの沢登り)10月中旬


1は比較的穏やかな登山、2は盛夏の海岸部からの暑いハイキング、3、4は岩稜帯のあるルート、5は行動時間の長いルート、6は沢登りです。小屋からの頂上往復(1、3、4)では、小屋までは大型ザックで登り、その後不要品を小屋にデポしてサミットロケット30で登っています。

初投入の『1.北アルプス・針ノ木岳・蓮華岳(小屋からの頂上往復)7月中旬』では、肩・腰への負担をチェックしました。通常の登山ではウエストベルトのしっかりしたザックを使い、荷重を主に腰にかけて歩いていたのですが、アタックザックではほぼ全てを肩で背負うことになります。肩から脊椎にかけて、いつもよりも荷重がかかりやすくなるのですが、サミットロケット30のショルダーパッドとバックパネルは薄くても意外と快適で、上半身に負担がかかるという感じは皆無でした。そもそも荷物量を絞っていますし、ザック自体も超軽量なので、ウエストベルトは振れを止める機能があればよいようです。またサミットロケット30のハードウェーブフレームは前後に曲がりやすいため、ザック本体をくるくるっと巻いてコンパクトにすることが可能です。大型ザックの中への収納は容易でした。

次の『2.神津島・天上山(ベースキャンプからのハイキング)7月下旬』では、暑熱期のパッドの蒸れをチェックする予定でしたが、途中から雨天となり、下山時はすっかり濡れてしまいました。サミットロケット30の生地はある程度の撥水性はありますが、完全防水ではないので時間と共に内部に染みてきます。

下山後、晴れてきたのでタープのポールにザックをかけておいたところ、30分程度で完全に乾燥。薄い素材を使っているだけあって、乾くのは非常に早いです。

『3.北アルプス・西穂高岳(小屋からの頂上往復)』、『4.南アルプス・塩見岳(小屋からの頂上往復)8月初旬』では岩稜帯での動きやすさに注目してみました。西穂山荘~西穂岳では、念のためにショートロープの準備をして臨んでいます(結局使うことはありませんでしたが)。

ハーネスに登攀具を付けてザックを背負うと、ハーネスやギアとザックが干渉して背負いづらくなることがありますが、サミットロケット30は腰よりもだいぶ上で背負える感覚で、ハーネスを付けていても全く違和感がありませんでした。また、ウエストベルトとチェストストラップを締めることで、ザックに振られる感じもありませんでした。横幅が狭いので、ザックが岩にあたって進みづらいということもなく、快適な岩稜歩きが可能でした。塩見岳の場合、通常は塩見小屋まではヘルメットとハーネスはザックに入れ、小屋に着いてから装着するのですが、サミットロケット30は容量が少ないため、三伏峠小屋出発時からヘルメット・ハーネス共に着用することになります。また、山岳会等のグループで登る場合、調子の悪いメンバーの荷物を分担するケースも考えられますが、サミットロケット30では荷物の追加が難しくなります。

『5.高妻山(ベースキャンプからの頂上往復)9月中旬』は、麓の戸隠キャンプ場から沢ルートで一不動避難小屋を経て山頂に向かい、弥勒尾根から下山するルートで、標準タイムは8時間ですが、弥勒尾根の状態が悪く、10時間の行動となりました。長時間の行動では、ザックの重量バランスが悪かったり、パッキングがうまくできていないと背中や腰が痛くなりやすいのですが、バックパネルとショルダーパッドは背中になじみやすく、振れも少ないため、不快感等は全くありませんでした。ハードウェーブフレームは、横方向への剛性は高いのですが前後方向には動きやすいので、これが背中へのフィット感を高めているのかもしれません。

『6.谷川岳・幽ノ沢(ルート工作しながらの沢登り)10月中旬』は、水量は少ないですが滑りやすい岩場のトラバースや滝の登攀があり、油断できませんが楽しい沢でした。今回は支点を構築しながらフィクスロープを張り、メンバーの安全を確保しながら大滝上までの遡行となりました。今回は8.4mm×50mロープを携行しましたが、このサイズなら、ロープをすぐに出せる状態での収納が可能でした。詰め込めばもう1本程度パッキングできます。滝の登攀では腕の動きやすさ、ギアの取り出しやすさ、背中での安定性、振られにくさなどがチェックポイントとなりますが、サミットロケット30はいずれも問題なく、よくデザインされているなと感じました。


■フィールドテストのまとめ

サミットロケット30は、
○非常に軽量で疲れにくい
○背面と肩へのフィット性が高い
○必要なものは十分収納できる
△容量はギリギリともいえる
○登攀時の動きやすさは非常に優れている
○濡れても乾くのは早い
△防水性はない
○サブザックとしての携行が容易


【メンテナンス】
ボトムとフロントに使われている白い生地HardWear X-Plyは、機能的かつフィールドでよく映えるカラー/デザインです。が、使用するにつれ徐々に汚れが目立ち始めます(特にボトムの泥・草汚れ)。

なんとか綺麗にしたいと思い、まずはお湯をかけて布で軽く拭いてみましたが、あまり落ちず。次にネットに入れて洗濯してみましたが、これもあまり効果無し。この生地は若干凹凸があるために、泥汚れが中に入ってしまうと落ちにくいようです。そこで、柔らかいボディブラシと洗剤を使って優しくブラッシングしてみました。また、生地の境界付近の頑固な汚れにはメラミンスポンジを使ってみました。

結果…



真っ白に!

毛先の強いブラシだと生地表面や縫製部にダメージを与えてしまいますが、ボディブラシで優しく洗えば、大丈夫のようです。

【テストのまとめ】
アタックザックは、これまで使ったことがありませんでした。その理由は、フィット感に不安がある、容量が少ない、機能が不十分、荷物になる、などがありますが、今回ご提供いただいたサミットロケット30は、高機能なアルパインザックでありながら軽量化を実現していました。3ヶ月間、さまざまなフィールドで使ってみましたが、背負い心地は申し分なく、アタックザックとしての機能は高いレベルで維持されています。容量は一般登山用としてはぎりぎりですが、割り切って使うのであれば問題ありません。ポケットサイズまでは小さくなりませんが、大型ザックの隅っこに巻いて入れられるくらいのコンパクト性はあります。小屋やテントをベースにした頂上アタックに最適のサイズですが、日帰りはもちろん、荷物が少ないルートであれば単体での小屋泊まりも可能です。レインカバー等での雨対策さえしっかりしていれば、ハイキングからアルパインクライミングまで、広く使えるザックだと思います。

フィールドテストでは、防水性の他にロープがやや出しにくい点が気になりました。一般のアルパインザックはストラップ式の天蓋の下からロープを通すのですが、サミットロケット30はダブルジッパー式なので、ジッパーの位置によってはロープが出しにくくなります。試行錯誤の結果、ロープはザック中央あたりから出すとよいようですが、これは個人差があるかもしれません。また、今回は8.4mm×50mのロープを携行しましたが、太径のシングルロープだとかさばりますので、容量的には厳しくなってきます。

また、ハイドレーション用のホールとストラップはありますが、ザック内にはホルダーがありません。またハイドレーションバッグを吊すバックルもありません(ループはある)ので、バッグ固定用にプラスティックの小さなカラビナなどを用意するとよいです。

デイジーチェーンがフロントに2本、サイドに2本、天蓋にも短いデイジーが着いており、いろんなギアを後付けすることが可能です。ただ、アルパインクライミングや沢登りに使うのであれば、なるべくシンプルにした方がよいように思います。

フィールドテストは無雪期に行いましたが、これからの季節、雪上のベースキャンプからの頂上アタックに使うのも楽しそうです。その場合は、ウーリー・ステック・プロジェクトが本来目指していた使い方に近くなるのでしょうか。軽快に雪山を登って頂上を踏みたい。そんな気持ちにさせるザックです。



今回のテストアイテム→マウンテンハードウェアサミットロケット30

2018/12/03