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ハセツネCUP覇者 三浦裕一選手×モントレイル商品開発担当 「秋冬トレイルランニングの楽しさ&ギア解説」

2019/08/08

左:三浦裕一 選手 右:新木知範さん

2018年トレイルランニングレースの元祖、ハセツネCUPで優勝した三浦裕一選手が、2019年7月よりコロンビアスポーツウェアジャパンに入社しました。今回は三浦選手と、ハセツネCUPに長年出場されているコロンビア モントレイルの商品開発担当の新木知範さんにハセツネCUPについて、そしてコロンビア モントレイルの最新トレイルランニングシューズの特徴や秋冬のトレイルランニングの楽しさについて語っていただきました。

ちなみに「ハセツネCUP」の正式名称は、日本山岳耐久レース 長谷川恒男カップと言い、国内で開催されるトレランの大会のなかでも最も歴史のある大会です。長谷川恒男さんは、アルプス三大北壁の冬季単独登頂を世界で初めて成功させた偉大な登山家です。ヒマラヤを目指す若いクライマーのトレーニングの一環、登竜門としてこのレースを位置づけているそうで、長谷川恒男さんの名前が名付けられています。つまりそれだけ過酷なレースに値し、奥多摩の主要峰全山、距離にして71.5km、累積の標高差は4582mを、24時間以内で走破する大会です。

ーーまずは、お二人のハセツネCUPの参戦履歴を伺わせてください。

三浦さん:僕はもともと陸上競技をやっていて、大学一年までは箱根駅伝を目指していました。その練習の一環としてトレイルのレースは面白そうだなと思って、年に1回は何かしら大会に出ていました。ハセツネCUPに出場したのは、2014年からなので、昨年で5回ですね。

新木さん: 2000年から出ているので、第8回の大会ですね。数えたら今年で20回目。あの頃はまだ、トレランブームが始まる前でした。2000年の参加者数は1000名程度で、ずーっと参加者が埋まらず、出たい人が出られました。それがだんだん人気になって、規模も2倍。参加者数が増えたこともありますが、様相が変わりましたね。

その頃はまだまだトレランのシューズが普及していなかったので、足元はランニングシューズや、トレッキングシューズを履いている人が多かったんですよ。レースも「走る」というより、歩いている人が多かったんです。シュラフ持ったり、バーナーおこしたりね。24時間あるから、そういった山を楽しむタイプの人も多かったんですよね。

ーー出場している選手も変わってきているようですね

新木さん:そうですね。中心となる世代は40代で、それは今と変わらないけれど、世代の幅が広がった印象があります。最近はランニングしている若い方が興味をもって参加してくれているため、タイムを競う、競技的な面が強くなっていますね。

ーートレランの大会におけるハセツネCUPの位置付けは?

新木さん:ハセツネCUPは、日本三大山岳レースのひとつで、ランナーにとってはトレランの最高峰みたいな位置にありますね。なので、日本一を決めるレースのひとつといってもよいかもしれません。

ーー三浦さんはそんなハセツネCUPで優勝されたわけですが、それ以前の戦績はどうだったんですか?

三浦さん:初めて参加した2014年は17位、翌年15年は準優勝できましたが、16年、17年はリタイヤ。そして2018年のハセツネCUPで優勝することができたんです。優勝ができたのは、レースの戦略がよかったと思っています。
というのは、2018年は前年と同じように暑かったんですよ。暑さを踏まえて、レースの序盤は力を温存してゆっくり走って脚の体力を残し、後半から上げるという流れをあらかじめ考えました。それがよかったみたいです。

ーー昨年のハセツネCUPで履いたシューズは?

三浦さん:アルパインFTGですね。アルパインFTGは、アウトソールが非常に薄いのですが、ハセツネCUPのコースは登山道が踏み固められていて突き上げがないため選択肢に入りました。

アウトソールの薄さが特徴のアルパインFTG

ショートレース向きのアルパインFTGを70kmに使うのは、正直やや不安で、少し迷いがありました。ただ、ハセツネCUPは過去に出場してコースや登山道がわかっていたので、よく検討した結果、これはいけるかもな、と思って選びました。

新木さん:シューズの名前についている「FTG」とは、Feel The Groundの略。これはどちらかというと経験者が必要とする勝負シューズです。
トレランを始めたばかりの人や、まだ初級に当たる方はバランスのよいログFKTや、バハダ、カルドラドあたりがプロテクションもしっかりしているのでおすすめですよ。

アルパインFTG


薄いアウトソールだが、滑りにくい加工がされている

アルパインFTG
¥16,740(税込)


トランスアルプスは、アウトソールががっちりとして、プロテクションがあるためUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)など標高が高いところを走ることを想定して作られています。

トランスアルプス F.K.T. II UTMB 限定モデル(WOMEN’S)

新木さん:トランスアルプスは、ハセツネCUPで使うならスピードよりもフィニッシュ(完走)を目的とする方にもおすすめです。実際にこのシューズは上州武尊スカイビュートレイル70kmのレースで使われて、優勝した実績がありますし。あと、これは限定モデルでカラーリングが黒く重そうに見えますが、実際は軽くて、履いた時には非常に軽やかです。

トランスアルプス F.K.T. II
¥15,984(税込)


ーー10月のハセツネCUP以降、山は秋から冬へとうつっていきますが、秋冬のトレイルランニングの魅力とは?

三浦さん:秋冬のトレランのよさは、やはり空気が冷たいこと。以前、朝の5時スタートの大会に出た時に、早朝で空気が冷えすぎてダイヤモンドダストが発生した時があったんです。朝日によってダイヤモンドダストが細かくキラキラと輝く中を走っていた時は、とても感動しました。

新木さん:秋は紅葉する頃の景色のよさはもちろんですが、紅葉が落ちきったあと、フカフカの落ち葉の上を走るのもいいですね。踏み出すごとに枯葉の音が鳴り、自然の中にいることを実感できます。

ーー秋冬によいシューズなどもあるんでしょうか

新木さん:防寒のシューズですと、バハダIIIウィンターはアッパーのメッシュによって防風性が高く寒さを防ぎます。インナーの生地はフリースで、足入れをした時に暖かく感じます。水はけがよく乾きも早いのも嬉しいですね。
冷え性の人や、寒い地方の方などにも重宝すると思います。

バハダIIIウィンター(9月入荷予定)


防水シューズなら、カルドラドIIIアウトドライです。

カルドラドIIIアウトドライ(画像のカラーは9月入荷予定)
¥18,360(税込)


新木さん:カルドラドIIIアウトドライは防水ですが、シューズ内の蒸気を外に逃がす透湿機能を備えた「アウトドライ」が使われているため、蒸れることがありません。
 
一般的な防水透湿シューズは、足の中が濡れてしまうと蒸気が外に出ないんです。なぜかというと、アッパーの布地に透湿機能があるといっても、インナーの防水のメンブレン(膜)と、アッパーの生地の間には隙間ができるんです。外部からの水があると、直接足に水が沁みないとしても、その隙間に水が溜まり、その水が邪魔をしてシューズに透湿性がなくなります。
結果、足の中が濡れて水分が溜まりバケツみたいになってしまうんです。その結果、シューズが重くなったり、足が冷えたりします。

その点アウトドライのすごいところは、アッパーと防水のインナーが一体となっているため、水が溜まるような隙間がなく、透湿性の機能も最大限に発揮できるんです。
これは動画だとわかりやすいので、気になる人は観てみてくださいね。



ーー秋冬はシューズのほかウェアも吟味して選びたいですよね。トレランの大会ではレインウェアが必携品となっている事が多いですね

新木さん:そうですね、しかし最近のハセツネCUPでは、レインウェアが必携品ではなくなりました。あくまでセルフマネジメントでやってね、という状況になっていると思います。

ーー規定がなくなり、みなさん持っていかないんですか?

新木さん:今のランナーはライトウェイト志向の人が多いですよね。エリートランナーはレースに慣れているので、ライトウェイトにしても実力や経験値があるので問題ありません。ですが、ビギナーがエリートランナーの影響を受けて、同じウェアやギアを使いたいという動機で、実力に見合わない装備をする人はいるかもしれません。
もちろん軽いほうが体に負担はかかりませんが、何かあった時に頼れる物がないというのは安全面でちょっと怖いですね。

ログランナーウインドジャケット(9月入荷予定)

ーーこのログランナーウインドジャケット。これはどういった状況で活躍するウェアですか?

新木さん:このウェアは熱が極力こもらず、着て走れる設計になっているため、走っている時でも活躍すると思います。
これは防水でレインジャケットですが、さきほどのアウトドライと一緒。オムニテックもコロンビアの防水透湿テクノロジーで、水は入らないけど中の蒸れは排出してくれます。

背中にも脇口くらいまで大きく入れてあるベンチレーションが特徴で、防水素材で全部クローズしているウェアよりも、はるかに熱がこもりにくくなります。

口元へのあたりを防止するチンガード付き

これだけコンパクトになる


ーー実際に、大会でこうしたウェアは必要だと思いますか?

新木さん:去年出場したUTMBはずっとスタートから雨だったのでずっと着ていました。あの時、ほんとに持っていてよかったです。なかったら完走すらできていなかったです。私はログランナーウインドジャケットの前のモデルを使っています。大会でレインウェアは必携品ですね。

三浦さん:もちろんレインジャケットは必ず必要ですし、着用のタイミングも重要だと思います。僕は今年のUTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)の天候が悪くて、低体温症になってしまい、140kmでリタイヤしたんです。リタイヤ直前は、明け方の時間帯で雨も風も強く氷点下近くまで下がっていました。
その直前のエイドで先を急ぐあまり、上を着るだけで下を履かずに行ってしまったのが原因です。どんどん冷えて、動きが鈍くなってきたあたりで下のパンツを履いたものの、タイミングが遅かったんです。
脚が全然動かなくなりましたが、なんとか次のエイドまで辿り着くことができ、リタイヤを決めました。もしあの時、レインウェア持っていなかったら、下手したら死んでたかもなと思います。
同じくらいの順位でそのまま通過している方がいて、つい焦って僕もそのまま通過してしまいました。周囲には僕と同じような状況になってしまった選手もいましたね。

新木さん:今ではハセツネCUPには必携品の規定がありませんが、レインウェアは必携です。絶対に持っていったほうがいいです。本当に。

ーーやはり大会にはレインジャケットは必須ということですね。では、日常のランであるとよいウェアはありますか?

カルドラド 3インシュレーテッドジャケット(9月入荷予定)

新木さん:カルドラドIII インシュレーテッドジャケットが寒さ対策におすすめですよ。中綿入りジャケットなのに、熱がこみにくい工夫がされているので、ランニング、動くアクティビティにちょうどいいですね。正面から風が当たる場所には、ポーラテックアルファというインシュレーション(中綿)が入っています。そして、ザックが当たる部分や背中など熱がこもる箇所には中綿は入れず通気性のよい生地を使用するなどの工夫がされています。

冬の寒い時期や、汗をかかない程度のスローランの時などによいですよ。

ポーラテックアルファの仕組み

ーー構造も工夫がされていますが、使われている素材にポリウレタンストレッチジャージーという見慣れないものもありますね

新木さん:この素材は生地がかなり伸びるんです。ポリウレタン自体が伸びるんですけど、それ以上に伸びるため、腕周りが動きやすいですね。
そしてこれもパッカブルで、携帯性がいいですね。パッカブルにしたウェアは休息時の枕にもなりますよ(笑)
この素材や構造はトレランだけではなく、登山やミッドレイヤーにも使えるし、いろいろと使えると思います。


ログランナートレインパンツ(9月入荷予定)

ロゴはリフレクターの加工がされている

新木さん:このログランナートレインパンツも冬のトレイルでオススメです。生地には撥水機能があり、水を弾きます。前はウィンドブロックで、ふくらはぎ部分は別の生地ですね。
秋冬はこういうのを履いて走れば寒くないですね。冬で生足は寒いですよね。

三浦さん:陸上だとスパイクを履きますが、パンツは脱ぎ履きしやすいようにファスナーが付いているんです。でも、トレランとか登山ウェアとかってファスナーがあるパンツが少なくて。これが出て、使いやすいウェアが出てきたなと思いました。

トレランの人って、レースの前とかどんなに寒くても短パンで待っていたりしますけど、陸上の人はレースのギリギリまで体を温めておくんです。そのためスパイクを履いたまま、すぐ脱げるような工夫をされたウェアを選びますね。
僕もレース前まで温めたいというのがあるので、どうしても靴紐ほどくという手間がありました。このパンツは待機のときに履いてもいいし、寒いときに履いて走るのもいいですし。

新木さん:冬場は寒すぎて走る気力が出ない、なんていう時もありますが、そういう気持ちにさせないのもいいですよ。

ーーでは最後に、秋冬ランの醍醐味は?

三浦さん:冬は特に、他のシーズンにはない自然の美しさを感じられますね。

小川壮太さんがプロデュースした甲州アルプスオートルートチャレンジという山梨の甲州市塩山で行われる大会に出場したのですが、スタートが午前5時と、早いレースだったんです。場所は山梨で気温が低いし、スタートが5時なので、夜空夜景がきれいなうちにスタートし、暗い時間に帰ってくるというレースでした。

気温が低く、一面にダイヤモンダストができたんですよ。周囲がキラキラと細かく輝いている中を走り抜けました。
あれはまさに、寒い季節ならではの体験でした。そういった普段見ることができない景色を楽しめるのは楽しみのひとつですね。

新木さん:紅葉の美しさは、満開になっている景色も圧巻ですばらしいものですが、単に天気がよく、空気が澄み、トレイルに葉が落ち敷き詰められてふかふかだったりとか、落ち葉のカサカサと乾いた音が気持ちがいいんですよね。

晩秋から初冬の低山は、展望がよくなるのもいいですね。冬は葉っぱが落ちるため遠くまで見える。あれはいいときだなと思います。

三浦さん:そうですね。春の新緑もいいけど、秋は寒くなりすぎていないし、落ち葉のふかふかのトレイルの楽しさってありますよね。
秋冬はもちろんですが、春夏秋冬、それぞれの楽しさや季節の美しさがありますよね。
真夏は暑いので標高が高いところを楽しんだり。

新木さん:トレランって、まっすぐな道がないんですよね。どこかで必ず曲がって起伏がある。それが楽しいんです。ロードだと先が見えるけど、自然の中は次に何がおこるか、わからないワクワクがありますよね。

ーー秋の大会に向けて準備できたらいいですね。ありがとうございました。

コロンビア モントレイル 公式オンラインストア

2019/08/08