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高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2019秋冬新作チェック(後編)

2019/10/08

あれほど暑かった夏が遠ざかり、肌寒さを覚える日も多くなってきた。もはや防寒着が手放せなくなりつつある時期だ。だが、こんな季節だからこそフィールドを長い時間歩いても汗をあまりかかずに済み、心地よく行動できるのだ。

寒い冬に適したハードシェルジャケットとパンツを取り上げた「前編」に引き続き、「後編」ではインサレーションとパンツ、バックパックをピックアップ。日常生活にも取り入れたい、着心地がいい新製品がラインナップされている。

コアストラータクライムジャケット
近年になって非常に増えている「着たままで行動しても、一定以上の保温性をキープする」というウェアの新作。中綿には通気性と保温性に秀でたプリマロフトゴールドアクティブを使い、その表面を通気性と軽量性に富むパーテックスカンタムエアで覆ったインサレーションだ。

軽くドライな着心地

中綿、表地、どちらの特徴にも出てくる「通気性」がポイントで、最大の長所は行動中に着ていても過度に「蒸し暑くならない」ことである。だが今回は涼しい室内でのチェック。体を動かして汗をかくようなシチュエーションでいかほどの機能性を発揮するのかは確認しきれなかったが、かなりのポテンシャルをもっているウェアではないだろうか。ちなみに、パーテックスカンタムエアは同社が2019年春夏から販売を開始して大ヒットとなったコアプレシェルと同じ素材である。


裏側は全面的に起毛されたフリース素材で、薄手でも温かさは抜群だ。サイドと腰回り、そしてフードは伸縮性の素材で、体の基本的な動きは妨げられず、バックパックのハーネスで押さえられた部分の湿気も抜けやすい。ただし、パーテックスで覆われた部分の伸縮性はわずかなもの。胸から肩にかけて立派な筋肉を持つ人や極度に腕回りが太い人は、窮屈な思いをするかもしれない。インサレーションというものは体にフィットしない大きめのサイズだと、体温で温まった暖気が逃げやすいため、不必要に大きめのフォルムにはデザインされないということもあり、購入時にはサイズ感をよく試してみたほうがよい。僕の上半身は一般的な肉付きであり、身長177㎝でサイズMがちょうどよかった。

ほとんどが起毛したフリースで、脇下は別素材

サイドには左右にポケットが付いているが、そのファスナーは極細だ。少し力を入れなければスムーズに開閉せず、使いにくいと思う方も多そうだ。だが、あえて細いファスナーにしてあるのは、ウェア全体のしなやかさをキープするための判断に違いない。そう考えれば、僕はこれでいいのではないかと思う。

このジャケットは行動中にアウターとして着用できるほか、ハードシェルジャケットの下に着ればミッドレイヤーの役割を果たしてくれる。腕回りが細めだとは先に述べた通りだが、その点はレイヤードの際に腕の部分が無用に膨らんで着心地が悪くなることを避けるためにも都合がよい。

腕周りの細さはミッドレイヤーになり得る

過度に暑くならないという特徴は、山中で激しい行動をしているときだけではなく、街の中でも有用だ。なにしろ、外は寒いのに、建物のなかは必要以上に暖房を効かせてあるのが都会というもの。そんな寒暖差があっても、コアストラータクライムジャケットならウェアを何度も脱ぎ着しないで済みそうだ。街着としての活躍も期待できる。

製品:コアストラータクライムジャケット
価格:26,000円(税抜)

チョックストンプルオンパンツ
コアストラータクライムジャケットと同様に、チョックストンプルオンパンツも街着として使えそうだ。正確に言えば、街着ではなく、室内着かもしれない。着ていることを忘れそうなほど軽く、体の動きに合わせて伸縮するので、なんともリラックスできるからである。

テイパードのシルエット

しかし本来は、外岩やジムでクライミングを楽しむ人を想定して開発されている。驚くべきストレッチ性をもつ薄手のソフトシェルが使われているのは、そのためだ。足を大きく開いても引っ張られるような感覚が少なく、一般的な登山のときでも楽に歩けることだろう。

伸縮性があり足上げがしやすい

フロントにはボタンがなく、着用時に大きく開くことはできない。だが、その下にファスナーはつけられており、用足しに支障はないの。また、ウエストにはコードが付属し、緩い場合は少し絞ることができる。両サイドのポケット、右後ろのポケットにもファスナーがつけられ、足を大きく上げても内部に入れたモノはこぼれ落ちない。これらすべてのファスナーはウェアに使われているソフトシェルの柔軟さを妨げないほどしなやかで細く、まるでファスナーがついていない布地だけのウェアのような着心地を得られる。

僕はサイズMがジャストだったが、ウエストやヒップに合わせてサイズを選ぶと、裾が余ってしまう人もいるだろう。しかし、このパンツの裾はただ縫い合わせただけのシンプルなもの。だから丈詰めが可能だ。しかも体型に合わせて非常によく伸縮するため、足の太さやお尻の大きさもあまり関係がない。誰の体にも合うのは大きなメリットだ。

丈詰めしやすい裾まわり

ただし、生地が柔らかいだけに体型が出やすく、スタイルに自信がない方は、しっかりと試着してから購入するのをお勧めしたい。ちなみに僕が着用すると、やたらに太いふくらはぎの部分だけ生地が伸びて妙に目立ち、一般的な肉付きの方が着たときほどカッコよく見えず、ちょっと残念なのであった。

製品:チョックストンプルオンパンツ
価格:15,000円(税抜)

アセントパンツ
チョックストンプルオンパンツよりも、一般的な山歩きで使いやすそうなのがアセントパンツだ。その着用時のフォルムはチョックストンプルオンパンツとかなり似ており、裾にかけてテーパードしていくラインを遠目から見れば、見分けがつかないかもしれない。ファスナーつきの両サイドのポケットと右後ろのポケットもチョックストンプルオンパンツと同様である。

見た目はチョックストンプルオンパンツと似ている

だが細部を見れば、その性質は大いに異なるようだ。素材には厚みがあり、耐久性をアップ。この素材は伸縮性が高いとはいえ、厚みの分だけ体の動きを妨げる恐れがあるので、膝は立体裁断にして屈曲しやすくしている。裾にはドローコードがつき、ブーツの上で絞れば、ブーツ内に小石が入ることを防ぐ簡易ゲイターの役割も果たしてくれて便利だ。だが、ドローコードが付いているので、チョックストンプルオンパンツとは違って、丈詰めはできない。

裾が絞れるドローコード

ウエスト部分にはバックルつきのベルトがあらかじめ付属し、フィット感を調整できる。このベルトの大部分はパンツの内側に隠れるようなデザインだが、一方でその外側にもベルトループがつけられており、もともと付属していたベルトを引き出して外側につけたり、まったく別のベルトにチェンジできるようにもなっているのがおもしろい。とはいえ、別に必要ないようにも思えるのだが……。その使い分けの意味を考えてもよくわからないのは、僕の知識が不足しているからか?

ベルトの扱いは2パターン用意されている

アセントパンツの素材は通気性のよさもあって、着用していると少々涼しく感じる。まだ温かい初秋は気持ちよさそうだが、晩秋になれば寒さを覚える可能性が高く、春から秋の半ばまでの使用が適している。冬は室内着に利用してもよさそうだ。

製品:アセントパンツ
価格:15,000円(税抜)

アルパインライト50バックパック
最後は、容量50Lの大型バックパックである。最大の特徴は、メイン素材に強靭極まるダイニーマを使っていること。雪山での休憩中に背中から下ろしたら、どこにあるのかわからなくなりそうなほど透明感があるホワイトだ。

クリアなホワイトに赤と青のカラーが映える

ただでさえ強靭な素材なのに、フロント部分は生地を重ねてさらに補強。ストラップでアイゼンやスノーシューを直接固定したり、鋭い爪が強い力で押しあてられたりしても穴が開いたりしないだろう。サイドにはスキーも取りつけられるようになっているが、この部分は生地が一枚。スキーのエッジが触れる程度ならば、この部分は補強する必要がないほど、ダイニーマという素材は強靭なのである。しかも軽量だ。

さらなる軽量化のために、このバックパックのフレームやパッドは、取り外せる。荷物が少ないときはリッドも分離して容量を減らすことができ、ポケットつきのヒップハーネスも引き抜ける仕様だ。さらに内部につけられたポーチ状のポケットまで外すことが可能で、それらすべて(リッド(雨蓋)、アルミフレーム、フォームフレームシート、ヒップベルト、内部ポケット)を取り外すと、重量は610gに。もとの重量(1050g)から、なんと440gも軽量になってしまうのである。しかしフレームやシートを組み合わせたときと、外したときの背負い心地や使い勝手の差は大きく、山中では快適でありたい僕としては、外して使う可能性があるのは、せいぜいリッド程度になりそうだ。とはいえ、本気でアルパイン的な登山に取り組む方は、軽量性を重視するはず。使い方はそれぞれが決めればいいのだ。

左から時計周りにアルミフレーム、フォームレームシート、内部ポケット、リッド、ヒップベルト

そんなわけで無雪期を中心とした一般登山が中心の方は、別のバックパックを選んだほうが背負い心地の点では失敗がない。マウンテンハードウェアには、他にもさまざまなバックパックがそろっており、他の製品もチェックしてみるとよいだろう。また、このアルパインライトはひとつのシリーズで、他に容量35Lや28Lがそろっている。ただし、素材は同じだが、ディテールはかなり変わっているようだ。僕自身はアルミフレームが省略されてより軽くなっていて、日帰り登山に便利そうな28Lにも興味があり、いつか山中で試してみたいと思っている。

製品:アルパインライト50バックパック
価格:32,000円(税抜)

2019年秋冬の新製品を「前編」「後編」にわけて行った今回のチェック。アウトドア以外に街でも使えるものが目立ったのが印象的だ。この感想はあくまでも僕個人のものであり、いちばん大切なのは、使う人本人の考え方や用途である。できれば店頭などで実物を確認し、失敗のない選択をしていただきたい。


高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2019秋冬新作チェック(前編)

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2019/10/08