Masterpiece

コロンビアが残した歴史的名品

独自のアイデアでアウトドアウェアに
革命をもたらしてきたコロンビア。
これまで生み出してきたマスターピースたちから、その足跡を辿る。

FILE 01 Fishing Vest [Since 1960s]

コロンビアの真髄を伝える
ギアとしてのウェア

コロンビアを代表する名品といえば、マルチポケットフィッシングベスト。1960年に現会長のガート・ボイルが、夫と友人のために作った一着が製品化され、時を超えて多くの人々に愛されるロングセラーとなった。70年代後半に作られた本モデルを見ると、水に濡れないように短めに設定された着丈、胸元の複数のフラップポケット、下方に二重に配されたジップポケット、そしてロッドを固定するループといった特徴的なディテールが、すでに採用されていることがわかる。徹底してユーザー目線に立ち、アウトドアでリアルに機能するギアとしての服作りを続けてきたコロンビアの姿勢を深く理解できる逸品だ。

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初期モデルのフィッシングベスト。フロントはスナップボタン留めでポケットの数も少なく、ロッドホルダーも付かないなど、後に続くモデルの原型になっている。
80年代に作られたモデル。上の70年代製モデルをほぼ踏襲しているが、胸元のDリングをプラスチック製にし、ジッパーの色をボディと合わせるなどの改良がなされている。
フィッシングベストをベースに、カメラマン仕様にアレンジした珍しいモデル。フロントにはフィルムを収納するポケット、バックには三脚を入れるための斜めポケットが付く。
フィッシングベストを身につけて釣りに興じる男性。
ローゲージのニットやウールパンツ、武骨なブーツなど、当時のフィッシングスタイルがわかる貴重な資料。

FILE 02 Mountain Parka [Since 1970s]

定番アウトドアウェアの
最初期モデル

マウンテンパーカというウェアが初めて登場してから間もない70年代後半に作られた一着。大きなフラップポケットやフードといった、定番のディテールがすでに備わっている。その一方、身頃から袖にかけて縫製がなく、一体となった作りやゆったりとしたシルエットが初期モデルらしい素朴さを漂わせる。この当時からフロントはスナップボタンとダブルジップで閉める仕様となっており、胸元にはプリーツ付きのポケット、下方にはサイドから手を差し込める二重ポケットを備えるなど、機能性を追求する姿勢がうかがえる。その後アウトドアウェアの定番アイテムとして親しまれるマウンテンパーカの原型になっている。

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フードと前立てで顔がすっぽりと覆われるため、寒風の吹き込みを防ぐことができる。フードに加え、ウエストにもドローコードが付くため、フィット感の調節も可能だ。
ゴアテックス®を採用したアウターシェルとシンサレートの中綿により防水透湿機能と保温性を両立したマウンテンパーカ。80年代当時としては画期的な試みだった。
コロンビアはいち早くゴアテックス®を採用したアウトドアブランドのひとつ。こちらはその当時のモデル。ラグランスリーブや胸元の縦ポケットに進化が見られる。
“マーケットには見た目のいいパーカはあるけれど、ちゃんと機能するものは少ない”というコピーで、自社のマウンテンパーカをアピール。昔からユーモアがきいていたのだ。

FILE 03 Bugaboo Parka [Since 1980s]

タウンでも受け入れられた
画期的な一着

80年代、コロンビアの躍進を支えたのが、1986年に発売されたバガブーパーカだ。アウトドアの基本的な着こなしであるレイヤリングを一着のウェアで実現するという発想から生まれたインターチェンジシステム。それを初めて採用したウェアであるバガブーパーカは、100万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。ナイロン製のアウターとフリースのインナーは、ジッパーで簡単に着脱できるようになっており、それぞれ単体でも着用可能。別売りのダウン入りのインナーに付け替えることもできた。また、ポップなカラーリングや大胆な配色の切り替えは、街着としても映えたため、アウトドアウェアをタウンウェアとして取り入れる先駆けとなった。

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アウターとインナーをジッパーにより着脱することで気候の変化に対応する画期的なインターチェンジシステムを初めて搭載。コロンビアの先進性を広く知らしめた。
フロントはあごの上まで比翼仕立てとなっており、ジッパーとベルクロで風の侵入をしっかりガード。引き手のストラップの色を切り替えるなど、デザインにもこだわりが。
肩口で色を切り替えたり、襟裏に柄をあしらうなど、高いデザイン性が盛り込まれたインナーのフリース。ジップポケットも備えており、一枚でも着用できる仕様になっている。
“今年は新しいスキーウェアラインを披露するため、ティムを表紙に登場させることに同意した。ある条件の下で”というコピーとともに、現CEOティムがバガブーパーカを大々的に紹介。

FILE 04 Fleece Jacket [Since 1980s]

フリース黎明期に登場した
ポップな名品

すでにアウトドアウェアがファッションアイテムとして認められるようになっていた80年代後半から90年代にリリースされたのが、このフリース素材のプルオーバーだ。フリースといえば、いまや定番中の定番だが、コロンビアはそれをいち早く導入し、大ヒットを飛ばした。耐久性に優れ、雨にも強く、汚れても洗えるフリースは、誰もが待ち望んだ夢の素材だったに違いない。この一着はプルオーバータイプでポケットもないことから、インナーとして着用することが前提だったと思われる。また、当時を彷彿とさせるコンピュータのドット絵のようなカラフルで個性的な柄からは、ファッション性を強く意識していたことも読み取れる。

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フロントの上部はスナップボタン留めで、脱ぎ着がしやすくなっている。胸元からスタンドカラーにかけて配された補強のためのナイロン素材も全体のアクセントになっている。
フラットシームで縫製されており、縫い目の凹凸が出にくいため、着たときの肌への刺激が少ない。また、生地のカラーバリエーションも豊富に用意されていたようだ。
裾と袖にはゴムシャーリングがあしらわれており、身体にしっかり密着して外気の侵入を防ぐ。フリース素材との相乗効果で、インナーとして着たときに、抜群の保温力を発揮した。

FILE 05 Anoraku Parka [Since 1980s]

技術とアイデアを凝縮した多機能ウェア

80年代に発売されたアノラックパーカ。一見するとシンプルなデザインだが、数々の機能性を備えている。まず、フロントには上下2段の大きなポケットを装備。下部は両サイドから開くジップポケット、上部は中にフリースを張ったハンドウォーマーポケットになっている。また、両脇の下にはジッパーをあしらっており、中の湿気を逃がすベンチレーションの機能を果たしている。さらにパッカブル仕様になっており、フロント下部のポケットに全体を詰め込んでコンパクトに持ち運ぶことが可能。携帯性が向上したことで、よりアクティブな行動が可能になった。また、緊急時のエマージェンシージャケットとしても重宝する。

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襟元にはジッパーを備えており、寒いときはあごの上まで引き上げて冷たい風を防ぐことができる。また、フードのフィット感を調節するためのドローコードも付く。
右側には、裾から脇下にかけてダブルジッパーを装備。これにより、裾が大きく開いて脱ぎ着が容易になる。脇の方からジッパーを開けば、ベンチレーションとしても機能する。
フロント下部のポケットにウェア全体をパッキングした様子。広がらないようにジッパーで固定できるうえ、持ち運びしやすくするためのストラップを装備して利便性を追求。

FILE 06 Quad Parka [Since 1980s]

プロも認める
機能派ハンティングウェア

コロンビアでは、80年代中頃から本格的なハンティングジャケットを作り続けており、スポーティングプロショップには必ず置かれているほど高い信頼性を獲得。このクアッドパーカも、ハンティングに特化した数々の機能的なディテールを備えている。コロンビアが開発したインターチェンジシステムを採用しており、ダウン入りのインナーを付け外しすることで状況に応じた着方が可能。また、フードも着脱できるようになっている。他にも、ポケットの中やインナーのダウンの胸元など、随所にブレットホルダーを備え、獲物の血がたまらないように考慮したメッシュポケットを配するなど、実践的な作りが際立っている。

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胸元に配されたチューブには、すぐに使う散弾を入れておく。下から弾を抜くと上から次の弾が補充される。デイリーウェアには決して見られないギア服ゆえのディテールだ。
ポケットのフラップを上げると、中にはブレットホルダーが見える。ウェットランドカモと呼ばれる、リアルなブッシュの風景を取り入れたカモフラージュ柄もユニークだ。
インナーダウンは単体でも着用可能。カモフラージュ柄と無地のリバーシブルになっており、どちらの面にもブレットホルダーを備えるなど、徹底的に機能性を追求している。
日本では展開されていないハンティングウェアの広告。剥製の鳥たちの下には、狩猟された場所や日付が記されている。アメリカらしい実にワイルドな広告ヴィジュアルだ。

FILE 07 Bishop's Falls Jacket [Since 2010s]

最高峰登頂にも成功した
最強ダウン

8000メートル級の山にも登れる本格的な登山ウェアを作るべく、日本企画で開発されたダウンジャケット。国際山岳ガイドの近藤謙司氏とともに1年をかけて開発した。身体から出る熱を反射させて保温性を高めるコロンビア独自の機能「オムニヒート」を裏地に採用しており、ダウンの量を減らして動きやすくしつつも十分な保温性を確保している。また、酸素ボンベをセットするために襟元のフラップを長めにとったり、ハーネスを付けやすくするためにウエストのポケットを排するなど、登山に特化したディテールを採用。前述の近藤氏は、このウェアを着用して、5度のエベレスト登山に挑戦し、3度の登頂に成功している。

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エベレスト登頂を目指すべく、コロンビアが立ち上げた「Win theSummit Project」。そのロゴをあしらったスペシャルモデルは、参加メンバーだけに支給された。
内側にはコロンビアが独自開発した保温素材、「オムニヒート」が張られている。これにより、保温力が20%向上。その分、ダウンの量を減らすことができ、軽量化が可能となった。
中にヘルメットを着用できるように、フードは大きめの作りになっている。また、大きなフラップの内側には酸素ボンベをセット可能。隅々まで本格的な高所登山仕様なのだ。
国際山岳ガイドの近藤謙司氏らのパーティーが、左のダウンジャケットを着用してエベレスト登頂に成功したときの写真。コロンビアのウェアが初めて世界最高峰に到達した瞬間だ。

FILE 08 Cursher Hat [Since 1930s]

ルーツを物語るアウトドアハット

コロンビアのルーツは帽子問屋だったという事実を物語る名品が、このクラッシャーハットだ。ウール100%の生地で形作られたハットは、ツバが広く日差しを効果的に防げたうえ、リボンがあしらわれるなどファッション性も高く、男女を問わず多くの人々に愛用された。ヒットした理由は他にもある。柔らかいウール素材を使っているため、丸めてコンパクトに持ち運ぶことができる点、またウールならではの高い保温性があり、濡れても冷たくならない点などもアウトドアユースで重宝された所以だ。また、下の写真のように豊富なカラーバリエーションが用意されており、洋服とのコーディネートを楽しむこともできた。

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丸めて持ち運べる携帯性に優れた帽子でありながら、内側にはスベリをあしらった本格的な作りになっている。また、深さがあるため、脱げないようにしっかりかぶることができる。
クラウンには装飾としてリボンが施されている。左サイドには結び目が配され、両端の羽は長めに残している。このリボンにより全体的にシックな印象を受ける。
クラッシャーハットを真横から見た図。クラウンは丸みを帯びており、やや高めに設定。下がりめのツバは波を打ったようにシワが入っている。リボンも良いポイントに。
クラッシャーハットには、赤や黄色、グリーンなど、カラフルな色使いのバリエーションも存在した。また、モデルとして左に写るのは、現CEOティム・ボイルの若き日の姿。

FILE 09 Bugabootoo [Since 1990s]

アウトドアの足元を変えた
防寒ブーツ

コロンビアは、90年代に初めてラインナップにシューズを加えた。その中でもベストセラーとなったのが、このバガブーツーだった。防寒性を第一に開発されたこのモデルは、寒さが厳しい北米エリアに住む人々に諸手を挙げて迎え入れられた。アッパーにはレザーが用いられているが、ソールから続くラバー素材で甲部分を大きく覆うことで防水性を確保。また、シンサレート素材を多く内蔵することで寒気もしっかり遮断した。雪の上でも確かなグリップ力を発揮する独自のソール、オムニグリップも画期的だった。バガブーツーは、アップデートを繰り返しながら、現代まで多くの人々に愛用されている。

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こちらはバガブーツー初期モデルの別カラー。ソールパターンにもいくつかバリエーションがあったことがわかる。ハイトが高めに設定されており、雪の侵入を防ぐのも特長。
“地獄が凍りついたら彼女は喜んで引退するだろうが、そのときこそが、我々が最も彼女を必要とするだろう”と、ガートの開発力とバガブーツーの機能性をユーモアで表現。
“ 足はペットのようなもの。どこかに連れて行ってもらったときが一番嬉しい”という意味のキャッチコピーでバガブーツーを紹介。この靴で行動範囲が広がることを伝えた。
土で汚れたバガブーツーと一緒に「この靴を家で履こうなんて、さらさら考えない方がいいよ」というウイットに富んだコピーを添えている。

FILE 10 Back Pack [Since 1970s]

70年代に登場した
バックパックの原型

70年代、「ハイカスケード」と名付けられた新しいラインがコロンビアから登場した。パシフィックノースウエストを走るカスケード山脈にちなんで名付けられたこのラインは、バックパックを中心とした本格派のアウトドアギアを取り揃えていた。下のバックパックもそのひとつ。耐久性と軽量性に優れたナイロン製ボディ、頑丈なレザーを用いたボトムなど、現代まで続くバックパックの原型がすでに形作られていることがわかる。メイン収納はマチ幅が広く大容量。さらに、両サイドと中央にも収納スペースを備えるなど十分な機能性を有している。鮮やかなイエローは、おそらくアウトドアでの視認性を高めるためのものだろう。

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両サイドに大きなフラップ付きのポケットを装備。フラップを留めるベルトには、強度を高めるためにレザーを使用している。マチ幅が大きく、大容量であることがわかる。
イエローのボディにホワイトのベルトやパイピングをあしらうなど、デザイン性も高い。ストラップにクッション性を持たせて、背負い心地を良くする工夫もなされている。
こちらは3年ほど前に日本企画で復刻されたヘリテージライン。70年代当時に発売されたモデルをベースに、現代的にモディファイされたデザインに仕上がっている。
ハイカスケードは、70年代に一時期だけ登場し、間もなく姿を消した。バックパックなどのギアだけでなく、上のヴィジュアルのようにマウンテンパーカなどのウェアも手がけていたようだ。

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