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【CSJ magazine特別対談】為末大×トレイルランナー上田瑠偉(前編)

2018/03/08

アウトドアにまつわる情報をお届けしているCSJ magazineのスタート2周年を記念して、400mハードルで活躍し、現在はDEPORTARE PARTNERSの代表としてスポーツとテクノロジーに関わるビジネスに取り組まれている為末 大さんと、CSJ magazine登場回数1位のコロンビアスポーツウェアジャパン所属のトレイルランナー上田瑠偉選手の対談をお届けします。


トレイルランの魅力って、なに?

  ーー今日はお二方、よろしくお願いします。上田選手は高校までシリアスに陸上の長距離に取り組んできて、大学時代からトレイルランの世界に飛び込んだんですね。パッと思い浮かぶトレイルランの魅力はなんですか?


上田 同じ2時間を走るにしても、トレイルランの場合は時の経過が早いんです。

為末 時の流れが変わるってことですか?

上田 山の中では、同じ道を走ったとしても、植生も季節によって変化があります。季節だけでなく、1日の中でも変化があって、朝日と夕日では同じ景色のはずなのに、まったく見え方も違ってくるんです。だから、同じ環境で走ることは一度としてなくて、本当に「一期一会」がトレイルランの魅力だと思います。

為末 上田選手の話を聞いていると、ものすごく「おいしい世界」がトレイルランには眠っている気がしてきました。

上田 どんな感じでしょうか?(笑)


為末 整地されていないところを走るって、人間の原始的な体験が反映されているわけじゃないですか。それこそ、狩猟民族の記憶というか。不整地を走ると、人間はいろいろな情報を手にしているわけで、「意図されてない刺激の世界」に踏み込んでいると思うんですよ。これって、都会で直線に囲まれている人間には、この上ない刺激だと思います。

  ーーたしかに、高層ビルは人間が人工的に生み出したものですからね。太古の昔は、整地はなかった。

為末 だからこそ、トレイルランは人間本来の力に訴えかけるものがあって、引退した身からすると、とても魅力的な競技だと思えるんです。たぶん、走るリズムもトラックやロードとは違うんじゃないですか?


上田 陸上のトラックの場合、着地に100%の意識を集中していればいいんです。「1、2、1、2」というリズムを刻み、体を前に進ませていく。ところが、トレイルランの場合は、4、5m先を見ながら、着地に90〜95%くらいの意識でないといけません。

為末 危ないからですか?

上田 そうです。着地ばかりに集中していると、その先に潜む危険を回避できなくなります。だから、走るリズムも「ポン、ポン、ポポーン」という形になることが多いですね。

為末 危険を予知しながら走ることからして、とても面白い営みですよね。トレイルランは、走り、競うというところで陸上競技と変わりはないと思いますが、「勝負どころ」についての感覚はまったく違うのかな、と想像するんです。

上田 100kmのウルトラレースもありますからね。たとえば、20kmとか40kmの短い距離だとーー。

為末 えっ、やっぱり20kmや40kmじゃ短いんだ(笑)。


上田 短いです(笑)。20kmのレースだと、10kmはひたすら上って、後半の10kmはひたすら下るというレースもあります。勝負どころとなると、もちろん後半になるんですが、上りで腓骨筋をはじめとした上りの筋肉ばかり使っていると、下りに入った時に踏ん張りきれなくなり、体を支えきれずにグラグラになることがあります。

為末 上りと下りでは、筋収縮のリズムが違うから、別の能力が試されるんですね。面白いなあ。トレイルランだとどれくらいの差だったら、追いつけるものなんですか? 「差」の感覚もぜんぜん違うんだろうな、と思って。

上田 長い距離のレースであれば、10kmで5分、20kmで10分詰まることは珍しくないですね。

為末 そのあたりの感覚も違うから、きっと、走り始めたらいろいろ新しい感覚を養えそうです。

中編へ続く  文/生島淳



為末大
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。 男子400メートルハードルの日本記録保持者(2018年3月現在)。
現在はSports×technologyに関するプロジェクトを行うDEPORTARE PARTNERSの代表を務める。 新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『走る哲学』、『諦める力』など。



上田瑠偉
1993年長野県生まれ。トレイルランナー。2014年の日本山岳耐久レース。大会記録を18分も更新し、夢の7時間切り目前まで迫る走りで最年少優勝を果たした。2016年はアメリカで開催された100㎞レースを大会新記録で優勝。スカイランニングと言われるより競技性が高く、標高の高い山で行われるジャンルのU-23世界選手権で優勝など、海外でも結果を残している。コロンビアスポーツウェアジャパン所属。


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