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高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2018秋冬新作チェック(後編)

2018/10/10

テレビの登山番組や、アウトドア・登山系の雑誌、ウェブサイトなど、多くのメディアで活躍されている山岳ライターの高橋庄太郎さんに、マウンテンハードウェアの2018秋冬の新作アイテムをチェックしていただいた後編です。(前編はコチラ

高橋 庄太郎
宮城県仙台市出身。山岳/アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌などを中心に執筆。特に好きな分野は、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでも野外のテントで眠る」こと。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。



インサレーションとハードシェルジャケット&パンツをチェックした前編に続き、後編ではパンツとグローブ、そしてバックパックの新作を見ていきたい。どれも興味深いものがそろっているようだ。

ダブルドラゴンパンツV.5

モデル名の最後にある「V.5」という言葉で想像できるように、このパンツは新機軸の製品ではなく、以前から展開していたモデルをいっそう進化させたもの。「Version 5」という意味を持っている。革新的なモノ造りで知られるマウンテンハードウェアだが、定評あるものは少しずつ手を加えながら作り続けているのだ。

このパンツの素材はソフトシェル。厚みがあるのでけっこう重いが、その分だけ保温力があり、強靭でもある。前篇でピックアップしたドライステインパンツは防水性が高いハードシェルタイプだが、いくらDRY Qエリートの透湿性が高かろうとも、さすがにソフトシェルの透湿性、通気性には敵わない。防水性よりも透湿性を重視する場合は、ドライステインパンツよりも、このパンツのほうがいいだろう。
シルエットは非常に細身だ。これでも以前のダブルドラゴンパンツよりもタイトさを抑えているというのだが、それでも人並み外れて太い太ももとふくらはぎを持っている僕が足の長さを合わせてパンツを選ぶと、少々窮屈さを感じる。もうすこしだけ余裕がないと、僕のような体型の人ははきにくいだろう。しかし……。僕ほど足が太い人間はあまりいないので、一般的な足の太さの方ならば、このサイズ感は太すぎず、細すぎず、じつに絶妙なのではないか?

このパンツは擦れやすい膝とお尻の部分をストレッチケブラーという別素材で補強している。メイン生地のソフトシェルの上に張ってあるので、そこだけは二重になっているわけだ。それはよいポイントなのだが、膝部分に関してはストレッチケブラーが少し上に付きすぎている気がしないでもない。実際に試着し、何度か足を屈伸させていると膝のストレッチケブラー部分がさらに上にずれてしまい、膝をついたときにソフトシェル生地が地面に接してしまう。ただ、これも一般的な人よりも僕の足の膝の位置が低く、そのためにズレてしまっているからかもしれない。いずれにせよ、きちんと試着して、自分の体に合うかどうか確認したほうがいいだろう。

フロントのファスナーはダブルタイプ。バックパックのヒップハーネスやクライミング用のハーネスを腰に付けている場合、ファスナーの引き手が上にあると、小用のときに引き下げにくい。だがダブルであれば、いかようにも開けられて便利だ。こういうディテールからも手を抜いていない。

ダブルドラゴンパンツV.5
¥18,360(税込)



プラズミックゴアテックスグローブ

外側に透湿棒恣意性素材のゴアテックスを使ったグローブ。ゴアテックスという名称が入っているだけで防水性、透湿性、防風性は保証されているといっても過言ではないが、手のひらの部分には合成皮革が使われ、スティミュラス技術の導入でスマートフォンなどのタッチパネルに対応しているのが現代的だ。この機能自体はもはや珍しくはないが、その性能にはけっこう大きな差がある。実際、なかなかタッチパネルが反応せず、ストレスばかり溜まってしまうものもあり、ついにはグローブを脱いで操作したくなることも。その点、このグローブは優秀だ。素材に張りがあって指先が尖っているので、ますます指先で細かな操作をしやすいのである。

新品の状態でいえば、機能性は上々である。ただし、この手の生地は使い続けて指先の生地が摩耗したり、毛羽立ってくると、反応しにくくなることも多い。だから、プラズミックゴアテックスグローブの機能がどれほど長く保つのかは、実際に長期間使い続けてみないと判断しかねる。だが、丈夫ですべらかな素材だけに期待はできそうだ。

気を付けたいのは、セレクトする際のサイズ感だ。僕の手は一般の人よりも大きめなのだが、日本で展開されるサイズの中でもっとも大きい「L」でも少々小さく、なかなか手が入らない。そして、反対に手を出そうとすると内側のライナーが手に張り付き、よじれてしまう。指の長さも少し足りず、正直なところ使いやすくはない。僕よりも手が小さな人は問題ないだろうが、僕と同様に手が大きめの人は注意していただきたい。できれば来季からはLLサイズでも展開してもらいたいものだ。

プラズミックゴアテックスグローブ(Men’s)
¥9,180(税込)
女性用はコチラ→Women’sラズミックゴアテックスグローブ



グラブグローブ

先ほどのプラズミックゴアテックスグローブは、タッチパネルに対応している製品だが、それでも指先を出して操作したい人も多いだろう。その場合、グラブグローブのような存在はどうだろう?指先を切り落とした態のフィンガーレスグローブの上を、ミトンで覆う2重構造になっており、簡単に指先を出せるのだ。

もちろん雨や雪には弱くなり、とくに手を雪のなかに突っ込むとミトンの内側は簡単に雪にまみれてしまう。だからハードな環境には向かない。だが、状況によってはこのような形状でも充分に使用できるはずで、アウトドアだけではなく、日常生活でも活躍するだろう。素材はポーラーテックパワーストレッチで温かく、濡れてもすぐに乾く。中綿はサーマルQエリートで、これまた保温力が高い。あまり過酷な状況ではなく、しかし充分な温かさがほしいというシチュエ-ションでは、大活躍するだろう。
プラズミックゴアテックスグローブと同様、僕はグラブグローブもLサイズを試着してみた。だが、こちらは手の平部分がとてもよく伸縮するために、それほど小さいという感覚はない。しかし、指の第二関節が引っかかる感触もあり、こちらもできればLLサイズがほしいところだ。

グラブグローブ
¥7,452(税込)



スクランブラーRT40

透湿性防水素材アウトドライをメインに使ったバックパックである。ウェアではなくバックパックゆえに、透湿性よりも防水性を生かすためにアウトドライが使われているわけである。モデル内に入っている「RT」とは「ロールトップ」という意味。上部はクルクルと丸めてからバックルで留める方式ということで、パッキングの際にひと手間かかるとはいえ、一般的な巾着式などよりも防水性は圧倒的に高まる。せっかく防水性のアウトドライを使っているのだから、水が浸入しにくいロールトップ式であるのは正解だ。

このモデルがユニークなのは、そんなロール部分がバックパック本体の上部だけではなく、下部にもあって、そこからも荷物の出し入れができることだ。つまり両方を開くと、筒状になるのである。アウトドライ素材は生地の縫い目(シーム)の防水処理もなされており、本来ならば下部も袋状に閉じてしまえば防水性はさらに高まって、沢などに腰まで浸かって歩いても水は侵入しにくい。そう考えると、下部もロール式にすることは、防水性という意味ではマイナスともいえる。だが、一般登山の用途であれば、下部から水が入ることはほとんど考えられない。つまり「防水性」と「荷物の出し入れのしやすさ」のバランスを考えて編み出されたのが、上部・下部ともにロール式というユニークな形状なのだろう。このモデルは、ロールトップ式というよりは、ロール「ボトム」併用タイプといういい方もできるかもしれない。

素材と全体の形状に目が行きがちだが、スクランブラーRT40アウトドライは、背面構造も工夫されている。背骨に沿うように1本の金属フレームが入り、全体の形状を保ちつつ、波型のパネルを併用して通気性を確保しているのだ。ショルダーハーネスやヒップハーネスは比較的華奢だが、それほど重い荷物は背負わないと想定される容量40Lであれば、必要十分である。
フロントとサイドのポケットは伸縮性もよく、荷物をしっかりとキープできる。また、フロントのフラップ的な部分の下にはスリットが入ったテープが張られており、この部分に自分でストラップやバックル組み合わせると、荷物のキープ力はますます上がる。自分なりに工夫すると、より使いやすくなりそうだ。

雨蓋は取り外して使うこともできる。ロールトップ式ゆえに、外して使っていても一般的な巾着型のように見た目上の違和感はあまりない。この雨蓋は本体と同じアウトドライ素材に見えるが、じつは一般的なナイロンで防水性ではないので注意。しかし下部はすべて伸縮性素材で縁取られ、ここにヘルメットを収めるとしっかりとキープしてくれる。わざわざヘルメットホルダーを購入しなくていいのである。

雨蓋を外した状態

かなり個性派のバックパックである。これを使いこなすにはそれなりのアイデアが必要であり、初心者がひとつめのバックパックとして購入することはあまり勧められない。だが、ある程度の経験を積んだ方が、このバックパックの長所と短所を踏まえたうえで2~3個目のバックパックとして選べば、このおもしろい機能を生かすことができる。「使って楽しい」という感覚が味わえそうなバックパックなのだ。

スクランブラーRT40 アウトドライ
25,920(税込)



そんなわけで、2回に分けて行ったマウンテンハードウェアの新製品チェック。今期のモデルにはまだまだ興味深いものが多数ある。自分に合うものがもっとないのか、このウェブサイトからさらに確認してみるとよいだろう。

マウンテンハードウェア公式オンラインストア

2018/10/10