野球解説者の古田敦也さんは兵庫県出身。ヤクルトスワローズ一筋で、2007年に引退後はマラソンや登山などさまざまなアウトドアアクティビティに挑戦してきました。そんな古田さんは50歳を過ぎてから本格的に新しい趣味としてスキーをはじめます。スキーをはじめたきっかけや魅力について、古田さんのスキー旅行に同行しながら聞いてみました。
興味があることに対して、自分から積極的に飛び込むようにしています
スキーをはじめたきっかけを教えてください。
大学生の時に数回だけスキーをやったことはあったんですが、その後プロ野球選手になってからは30年近くスキーから離れていました。引退後、とあるテレビ番組の企画がきっかけでスキーを再開したんです。その番組は50歳になってからスキーにトライしてみようという内容で、私は51歳から52歳になる年に、30年ぶりに改めてスキーを始めました。50歳を過ぎてからスキーに再挑戦。年齢的なハードルはなかったんでしょうか。
最初は怖くて全然滑れませんでした。怪我もつきもので、「歳をとってからは無理をしない方がいい」という意見もあると思います。私もよく奥さんに怪我をしないようにと心配されます。それでも、興味があることにはできるだけ自分から積極的に飛び込むようにしているので、年齢をあまり気にせず、まずはやってみたんです。振り返ってみると、プロ野球選手・監督を引退した時から、趣味をどうしようか、仕事をどうしようかと考えて、いろんなことに挑戦してきました。
当時はメディアからも頻繁に「今後は何をしたいですか?」と聞かれることが多くて、当時はじっくり考える暇もなかったので勢いで「マラソン」とか「富士山に登りたい」とか答えていたんです。発言したからにはやらないといけないですし、マラソンや登山で得られる達成感というのを味わってみたい気持ちもあったので、引退後すぐに挑戦しました。
マラソンや登山もそれぞれの良さがあり、フルマラソンに7回挑戦したり、アイアンマンレースにも出場してみたり、富士山にも登りました。感じ方は人それぞれで、私はそれほどのめり込むことはありませんでしたが、やってみないことにはわかりません。50歳を過ぎてからも同じで、少しでも興味があるならやってみようという思いで始めてみて、今では毎シーズン、少なくとも5日~10日はスキーを楽しむようになりました。
実際にスキーをしてみて、その難しさや魅力はどのように感じていますか?
アルペンスキーの元オリンピック選手である皆川賢太郎さんにスキーを教えていただく機会があったんです。2時間ほどのレッスンを経てだんだん感覚を掴んでいき、1日~2日くらいで初心者向けのコースは滑れるようになりました。上手な人をお手本にして、「なんで上手く滑れるんだろう」と考えながら観察してみたり、見よう見まねでフォームを変えてみたり試行錯誤する。それでもうまくいかないこともありますが、少しでも上手く滑れた時には充実感や達成感を感じられます。リフトやゴンドラに乗って到着してから見下ろす景色や、麓に見えているホテルまで自分の力で滑りながら次々に移り変わる風景も魅力的です。
加えて冒険しているような感覚と、スピード感です。私の場合、日常ではダイレクトに風を感じることがほとんどありません。ただ単に速度で感じる風というよりも、雪山に囲まれながら冒険しているような気分の中でスピード感を味わえます。
オンとオフの切り替えにメリハリをつけられるようになりました
複数人のグループでスキーを楽しむことが多いと伺いました。仲間とのスキーにはどのような魅力がありますか?
仲間と行くことで旅行のような楽しみ方ができます。スキーやスノーボードが得意なゴルフ仲間と予定を合わせて、これまで最大で8人のおっさんだけで行ったこともあります。日中はスキーをして、夜はみんなでお酒を飲みながら食事をして、その後はだれかの部屋に集まってその日撮影したスキーの映像をみんなで見直すんです。テレビにつなげて大画面で観て、「なかなかいけてるな」などと言って互いに褒め合っています(笑)。
スキーを始めたことによって、プロ野球解説者などの仕事にいい影響を与えていることはありますか?
オンとオフの切り替えにメリハリをつけられるようになりました。自分の遊びとしての趣味に注力することで、仕事をおろそかにできないという気持ちがはっきりと芽生えました。遊ぶためにもお金を稼いで貯めていく。本業の野球解説者の仕事は、プロ野球のシーズンと同じ時期に稼働するので12月や1月は仕事があまりないんです。ちょうどその時期にはスキーを楽しんで、2月からまた仕事をがんばるというように、前を向くことができます。最後に、今後はどのようなスキーライフを送っていきたいですか?
50歳を過ぎてから本格的に始めて、毎年行くことになるなんて思ってもいませんでした。東京に住んでいても、少し足を伸ばせば非日常を感じられる贅沢な趣味だと思っているので、できればもう少し上手くなりたいなと思っています。
スキーシーズンがオフになると、来シーズンはどのスキー場に行こうか、想像を膨らませながらネットで調べたりして、計画するところから楽しむ。
海外遠征にも興味があります。リフト代だけでも数万円するという世界のスキーリゾートに1度は訪れてみたいです。
(プロフィール)
野球解説者/元プロ野球選手・古田敦也
東京ヤクルトスワローズ一筋で活躍。ソウル五輪銀メダル、MVP2回、首位打者(1991年)、日本一4回、リーグ制覇5回。2005年には、2000本安打を達成。2006年からは選手兼監督を務め、2007年に引退。テレビ、執筆、講演など幅広く活動している。
ext:Nobuo Yoshioka
Photos:Matthew Jones