全米バスフィッシングトーナメントの『B.A.S.S. バスマスターエリートシリーズ』に6年連続、前年度の成績上位者のみが出場できる 、年に一度のビッグイベント『バスマスタークラシック』に5年連続で参戦しているコロンビア・スポンサードアスリートの伊藤巧さん。広大な北米を舞台に世界最高峰で戦い続ける伊藤さんに、前半では今シーズンを振り返りながら自身の成長や変化について、後半ではバス釣りが大好き なコロンビアスタッフが昨今のバス釣りのマナーや今後も釣りを楽しむために残しておきたい環境づくりについてじっくりお話をお聞きしました。
PROFILE
国内で数々の功績を収め、 2019年より本場アメリカのB.A.S.S.ツアーに参戦、参戦初年度にしてバスマスター・セントラルオープン年間4位となる。2020年は最高峰であるエリートシリーズへ昇格し、2021年セントローレンスリバー戦、2024年にスミスレイク戦で優勝を果たす。2025年シリーズは自身の最高位である年間順位6位にランクインするなど、日本のみならず海を渡ったアメリカでも偉業を成し遂げるプロアングラー
Twitter:@takumi_no_oheya
Instagram:@takumiitou4663
厳しい戦いが続く中で過去最高の年間順位を獲得。
まずは、『B.A.S.S. バスマスターエリートシリーズ2025』シーズンの年間順位で、過去最高となる6位獲得、おめでとうございます。
トータルの順位は6位と自分の中では過去最高なんですが、やっぱり一度は優勝したかったですね。それと3月ごろから左手首に怪我をしてしまって……。カラダが資本と考えると決していいシーズンを過ごせたとは言えないなと。試合中は痛み止めを服用していたので、自由に動かすことができるのですが、力が入らず踏ん張りが効かないんですよ。最終戦では結果に関わる重要な1匹のランディングをミスしてしまいました。それまで、スピードは遅くなっていましたが、魚を取り逃すことがなかったので本当に悔しかったですね。今まで無理が蓄積して、カラダにガタが出てくるタイミングの年齢になってきたことと、自分の中でもっとケアするべきだったという点では反省が残った1年になりました。
怪我の影響で釣りのスタイルなど、大きな変更点などはありましたか?
もともと左巻きでも右巻きでも 使うルアーによって使い分けていて、巻物と呼ばれるクルクル糸を巻きながらの釣り方を左に変更しただけだったので、あまり難しくはありませんでした。ただ、手首のスナップを使って動かすミノーと呼ばれるルアーや、ペンシルベイトという首を振るために細かく手首を動かす2つのルアーには苦戦していて、今シーズンが終わるまで一度もアジャストできませんでした。現在、怪我の状況はいかがですか?
シリーズ戦が終わり、帰国してすぐに手術をしてリハビリの最中です。手首の固着が起きていて、 可動域がすごく狭くなっているのを元通りに戻すために動かすようにしています。
昨年のインタビューでは、アメリカでのタフなコンディションやスケジュールに対応できているとお伺いしました。
アメリカでの生活が始まると、休みなんて全然ないですし、クルマを運転して移動する時間も距離も桁違い。船を操船している時でも荒れた環境下では、ボクシングマシーンの激しく叩かれるような衝撃がボートに当たってそのままカラダに伝わってくるので、操船しているだけでも相当疲弊してしまいます。ブラックバス自体も力強いですし、重たいウエイトを使って厚みのある草を撃ち抜いた先にいる魚を狙うなど、何をするにも体力が必要なんです。これまではステーキを食べるなど食事をベースに体力をつけていましたが、それ以外にもプロテインを摂取するようになったり、トレーニングをコツコツと取り入れるように改善しました。今年は特にハードな釣りが多かったんですが、そういったシーンでも疲れにくくなったので、これからはもっと積極的にカラダつくりをしていこうと前向きに捉えることにしています。
これまでは日本で培ってきた技術で釣りをやっていればどうにかなっていましたが、来年からはもっと積極的にアメリカの釣りも取り入れて行かなければいけません。今シーズン優勝はできませんでしたが年間成績が良かったのは、状況の変化に対応できること、とっさの変化に 対応できる技術レベルが上がったことです。たくさんの選手が本気で勝利を掴むために魚のいるポイントを攻めますが、これが ストレスとなり魚が枯渇します。そんな厳しい状況でもバスを釣るということや、遠くのポイントへの移動を含めた8時間という試合時間の中で 、結果を残すことへの経験値がついて成長できたと思います。ただ、やっぱり優勝したかった。勝てる大会はどこかで爆発力があるといいますか、勢いに乗れる爆釣な日が4日間ある大会の中で必ずあります。今日のパフォーマンスは最高だったという1日がないと難しいとあらためて体感しました。
今シーズンの成績を踏まえて、来シーズンの目標はなんですか?
いつも話していることですが、『バスマスタークラシック』のチャンピオンを獲得することが一番の目標です。本当に優勝できたら引退してもいいと思っています。『B.A.S.S. バスマスターエリートシリーズ』は、来シーズンから魚群探知機(魚探)などのエレクトリックが使用できない大会が増え、これまで以上に経験とスキルが必要とされるシチュエーションが増えることは間違いありません。実を言うと、今シーズンはこれまでで一番魚探を使用していません。他の選手たちがライブスコープと呼ばれるより精度の高い魚探を使って泳いでいる大きなバスを探していることを逆手にとって、魚探の使えない浅瀬を狙った釣りをよく展開していました。他の人もみつけられる魚を釣り上げても意味がないんですよ。自分が賞金を稼げるであろう魚を探し出して戦うことが、成績に繋がっていくと感じました。どれだけ厳しい条件でも結果を出すことがすべてなので、その時にできることをやっていく。それだけですね。
さまざまな魚群探知機を見ながらエレキと呼ばれる電動モーターを操作して魚へのアプローチをする伊藤さん。ボート釣りでは、釣果に大きく影響するフットコントローラーの繊細な操作は、
『セイバー シックス ロー アウトドライ』の高いグリップ力が支えている。
次世代の釣り人たちが楽しめる環境づくりのために自分たちができること。
日本とアメリカを行き来する過密なスケジュールの中、ファンとの交流を図るイベントへの参加や主催を務める伊藤さん。11月9日に千葉県の片倉ダムで開催される「親子で挑む! U-12ジュニアドリームカップ」には、親子で参戦するとのこと。そんな次世代のアングラーに向けて、今できること、未来のための環境作りについて、コロンビアスタッフ“いち”のバス釣り好きである鎗田志郎が、憧れのバスボートの上で釣りをしながらお話を聞いてみました。
伊藤:鎗田さんは普段どんなフィールドで釣りを楽しまれているんですか?
鎗田:週末になると、関東近郊のレンタルボートレイクによく通っています。金曜の昼過ぎには、どんなルアーを投げようかなんて考えてしまっているので、きっと仕事の効率が下がっていると思います(汗)。
伊藤:お好きとは聞いていましたが、かなり本気なんですね!
鎗田:幼少期から本当に釣りが好きで、放課後や休日に自分達が見つけたよく釣れるポイントへ通っていましたね。ただ最近は魚を求めていろいろなフィールドを訪れてみると、自分達が釣りを始めた時よりも釣り人のマナーが問題となって、湖や川で気軽に釣りができる場所が減少している気がするんですよ。私はこれまで楽しませてもらっていたことを、次世代の子どもたちにも体感してもらいたいと思っていますが、日本だけではなく、本場であるアメリカの釣りを肌で感じている伊藤さんはどう考えていますか?
伊藤:例えば、アメリカのフィールドや川辺にはゴミが落ちていることが本当に少ないです。それはしっかりとゴミ箱が配置されているからで、国として環境を守っていこうとする考え方が根付いているから。ゴミをポイ捨てすることって多くの日本人が悪いことだと認識しています。フィールドがしっかりと整備できるまでは、釣り場で出たゴミはしっかりと持ち帰る。その意識をもっと高めていかないといけませんね。
鎗田:マナーの問題といえば、迷惑駐車も地元の住民たちの迷惑になっている事案ですね。
伊藤:小さな沼や河川には、駐車スペースがそもそも少ないですからね。ただ、ひとりひとりが迷惑にならないように意識を変えていくことが、まずは大切だと思います。
鎗田:例えば岐阜県を流れる大江川や五三川の様に、駐車場や釣り場の整備が進んでいるところもありますよね。素晴らしい取り組みだと思いますし、ここをモデルケースとして全国に広まっていけばいいですよね。
伊藤:キープキャストというイベントを運営している“中部プロショップ友の会”が地元である津漁業協同組合と養老郡漁業協同組合と協力して、 イベントの収益や集まった寄付を使ってマブナなどの魚を放流して魚が増えるような環境を整備したり、釣り人専用の駐車場を設置していますよね。まさに成功例だと思います。例えば、アメリカの様にフィッシングライセンス の制度が確立して、その収益を使って全国的に整備ができる様になればいいですよね。
鎗田:釣り場を守る意識を持って啓蒙活動を続けながら、地域の漁業組合などとうまく連携をとっていければいいですね。
伊藤:本当に課題が多い問題だと思いますが、自分達が率先して進めていかないといけませんね。
鎗田:年齢から話をつなげていくと、私たちと同世代である30代後半から40代前半のいわゆるアラフォー世代は、アニメや漫画の影響もあり第二次バス釣りブームの中心 にいましたよね。釣りに出かけると、子供と一緒に楽しんでいる姿をよく見かけます。
伊藤:若い世代の選手も続々と出てきていますからね。もっと子供たちが釣りに触れる機会や親子で楽しめる環境つくりをしていければいいなと思っています。アメリカでは親がボートの操船をして子供たちが競い合う大会が世代別 で毎月のように開催されていて、毎回300人くらい参戦しているんですよ。
鎗田:やはり、バス釣りを学べる環境が日本よりもっと身近な存在なんですね。
伊藤:日本でももっと親子で参戦できて本気で戦える大会が増えていけばいいなと思い、11月9日に千葉県の片倉ダムで開催される『親子で挑む!U-12ジュニアドリームカップ』に出場することを決めました。
鎗田:大会に出場することで、釣りの面白さをあらためて感じてくれた子供たちがアングラーとして育ってくれるといいですね。
伊藤:そこで味わった勝利の嬉しさや、負けた時の悔しさが自分を成長させる原動力になると僕は思っています。
鎗田:優勝した参加者は、伊藤巧選手に勝ったって言えますね。夢があるなぁ。
伊藤:操船やガイドが良かった結果ですから。うちの子は、まだ釣りがそんなにうまくないので、どんな結果になるか楽しみです(笑)。
写真提供:伊藤巧
写真提供:伊藤巧
2025年11月9日に千葉県の片倉ダムで開催されたU-12ジュニアドリームカップ。パパやママが操船&サポートをして釣りをするのは子供たちという大会で、伊藤選手は息子の壮(たける)くんと参戦し見事に優勝。壮くんのために考えたという電動モーターでアシストする釣り方で見事にブラックバスをゲットしたそう。
*インタビュー取材は10月下旬に実施
初訪問のCOLUMBIA TOKYO FLAGSHIPで今季の注目アイテムをチェック!
対談の前に2025年の6月にオープンした、原宿・明治通り沿いにある最大規模の旗艦店『COLUMBIA TOKYO FLAGSHIP』 を初めて訪れた伊藤さん。 秋冬 シーズンへ向けて最新のアイテムをピックアップすることに。
日本最多の商品を展開している店内には、ハイキングやフィッシング、キャンプなどの専門性の高いアイテムから、アーバンアウトドアライン 『コロンビアブラックレーベル』まで多彩なアイテムをラインナップ。都会的な雰囲気にウッドやグリーンを組み合わせたどこか温もりを感じる空間には、コロンビアが誕生したルーツであるフィッシングベストや歴史を感じるアイテムを展示。
伊藤さんが注目しているのは、防寒と防水、保温力に加えて動きやすさも重要なポイントなのだそう。「標高の高いフィールドでは寒波によってはマイナス11℃ になることも。そんなときはこの裏地がゴールドになっているオムニヒートインフィニティ 高い保温力に助けられています」
・オムニヒートインフィニティ―ニットロングスリーブクルー ¥8,250(税込)
・オムニヒートインフィニティ―タイツ¥8,250(税込)
「このベースレイヤーの上下を愛用しています。極寒の中、着 込み過ぎるとキャストに影響がでますが、これをベースにライトなダウンやアウターを着ていれば、動きやすくて釣りに集中することができるんですよ」
お気に入りのアイテムが見つかり、大満足な様子の伊藤さん。早速フィールドへと出かけて実釣してみることに。

伊藤さんが選んだのは幅広いウインターアクティビティに対応する『サーキューボウルジャケット』。雨に強く群れにくい防水透湿機能にフルシーム処理を施した防水仕様で、裏地にはコロンビア独自の熱反射保温機能であるオムニヒートインフィニティを搭載する ハイスペックな1着。「キャストしやすいストレッチ性と高い防水機能は釣りに最適ですね。中綿も入っているしベンチレーションもあるので、インナーを調節しながら気候に合わせて最適化できそうです」
左:コアライトダウンジャケット ¥33,000(税込)・右:サーキューボウルジャケット ¥36,300(税込)
もうひとつのお気に入りは700フィルパワーのダウンを封入したパッカブル仕様の『コアライトダウンジャケット』。「ボートで 湖面を走っている時は、肌の露出を最低限にするなど、本気の防寒対策が必要なんです。このダウンなら軽量で持ち運びやすいし、インナーとしては最適ですね。撥水機能のオムニシールドも搭載しているので、ちょっとした釣りならアウターとしても使えそうですね」
どんなに過酷な状況に追い込まれても、積み重ねてきた知識と経験を駆使して笑顔で乗り越える伊藤巧選手。怪我を完治して万全の体制で臨む2026年シーズンの活躍を今後も追い続けていきます。
INFORMATION
■店舗情報
COLUMBIA TOKYO FLAGSHIP
東京都渋谷区神宮前6丁目27-8 エムズ原宿ビル 1&2F
営業時間:11:00~20:00(不定休)
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Text:高梨達徳
Photo:菊地晶太