フライフィッシングは家族をつなぐものであり、仲良くいられる秘訣<モデル・小西里果>

京都府出身のフライフィッシャー、小西里果さんは、父・母・姉の4人家族で、幼少時代から家族で釣りを軸とした旅に出ることが日常になっています。旅先は国内だけでなく、オーストラリアやニュージーランド、そしてカナダなど、世界にも足を広げています。

里果さんの人生において、フライフィッシングはどんな存在になっているのか。小西家の釣り旅に同行しながら聞きました。

子どものころは、父の釣りにとにかくについていきました



テレビCMやファッション系のモデルのほか、釣り関連の番組出演やイベントMCなど多方面で活躍している里果さんは、釣り歴20年のベテランで、フライフィッシング専門誌の表紙を飾るなど注目のフライフィッシャーです。

そんな里果さんはフライフィッシングをメインに、渓流釣りからソルトウォーター(海釣り)まで幅広く家族とともに釣りを楽しんでいます。ハイシーズンになると少なくとも月に1回は家族全員で釣りに出かけ、シーズン以外でも海外釣行に出かけることもあるそうです。



家族で釣りをするようになったきっかけについて、里果さんは次のように語ります。

「父がフライフィッシングを少年時代からやっていて、その影響が大きいです。私や姉が生まれる前は父も友人たちと釣りに行っていたようです。次第に高齢でフライを引退する友人も出てきたタイミングで、引き続きだれかと一緒に楽しみを共有しながら釣りをしたいと思ったようで、それから父の釣りについていく機会が少しずつ増えていったんです。

幼いころの私や姉が父の釣りについていくとなると、母も心配して見守り係としてついてきてくれて、次第に母も一緒に釣りをするようになりました。母自身、最初はルアー釣りをメインにしていたのですが、5年ほど前から徐々にフライフィッシングに移行し、今では家族の中で1番ハマってると思います(笑)。

私自身は学生のころ、バレーボールやダンスといった部活動もありましたし、アルバイトをしたり、友人とも遊びたくて、正直あまり釣りに時間を使いたくない時期もありました。

ただ、川を歩くこと自体は好きだったことと、子どもながらに、釣りをしたら父が喜んでくれるっていうのを感じ取っていたので、めげずにとにかく父についていって、なんとなく続けてこれたんです。大学生のころに釣り関連の仕事をいただくようになったことがきっかけで、家族で釣りに出かける時間が一層増えていきました」

ドライフライの釣りは、家族みんなでも楽しめます



釣りのスタイルの中でもフライフィッシングを好む里果さん。フライフィッシングはキャスティングと呼ばれる動作を経て、フライ(擬似餌)を狙ったポイントに落とす必要があるため、簡単な釣りではありません。ルアーフィッシングの経験もある里果さんが、フライフィッシングにハマりだした経緯についても聞いてみました。

「小さいころはルアーから始めて、父の影響で中学生くらいから少しずつフライに移行していきました。フライをはじめたばかりのころは、木にフライを何度も引っかけてしまったり、キャストがうまくいかずにティペットを絡ませてしまったりなど苦しい時期もありましたが、徐々に感覚をつかんでいって、少しずつ自信を持てるようになりました。

それからはほかの釣りのスタイルと比較してみても、渓流特有の木々が生い茂り、薄暗くて木漏れ日が降り注ぐような素敵な景色を背景にキャスティングをするシルエットが美しいと感じるようになり、フライフィッシングにハマっていきました」



続けてフライフィッシングや家族での釣行の魅力については「フライフィッシングの場合はフライを自分で巻くところからはじまるので、準備の段階から楽しめます。最初から最後まで自分で完結できるんです。特にドライフライの釣りではフライが流れている時間がスローに感じるのでフライフィッシングは坐禅かのように、心が整う釣りだと思います。

家族との釣行では、順番に釣っていき、魚が釣れるごとに交代していきます。ドライフライの釣りであれば、順番ではない人も一緒になってドキドキしながらフライに魚が食いつく瞬間を共有できるので、みんなで釣った気になりながら楽しめます」

釣りは、家族が仲良くいられる秘訣だと思います

現在は家族4人で一緒に住んでいるという小西家の皆さん。食卓でも自然と釣りの話題があがるそうです。

「家族全員で釣りに行くことがほとんどなので、自ずと話題も釣りに関することが多く、その結果家族間でコミュニケーションを取るいい機会になっています。

例えば晩ご飯のあとも、次の釣行ではこのフライがいるよねだとか、ロッドは何番手がいいよねというように準備の話をしたり、今度はあそこに行ってみようだとか、この前行った川はどうだっただとか、そういった話を共有しています。



家族4人で一緒に生活をしていると、家族だからこそ出てくるちょっとした不満をそれぞれが抱えていると思うんですけど、いざ釣り場にくると、目の前の魚のことしか考えなくてよくなります。

釣りを始めてしまえば、楽しい気持ちをその場で共有できるので、そういった日常で抱えている不満を忘れられ、気がつくとまた仲良しの状態に戻っています。

釣りがあることで、家族のバランスが保たれてるような感じがしますし、家族が仲良くいられる秘訣といえます。釣りは家族をつなぐものであり、自分の人生で大切にしたい趣味です」

「釣ったら交代」というルールが原則としてはありながらも、小西家の釣行に実際に同行して感じたものは、家族ならではの穏やかで微笑ましい空気感です。

「木にフライが引っかかってしまったときは近くにいる人がフライを取ってくれたり、絡まっていたら結び直してくれたりします。その間に他の人に先頭を譲ったりしながら、ローテーションしています。

順番待ちの時は、自分の番がきた時にどう釣るかというイメージを膨らませていたり、順番の人のキャストを見ながら『私だったらもうちょっと右に投げるんやけどなぁ』といった思いもあったりしながら、互いに学びもありつつそれぞれのやり方で自由に楽しんでいます」

しばらく釣り上がると、川の畔で休憩。家族みんなでゆっくりお昼ご飯を食べる姿からも、純粋に家族で釣りを楽しむ様子が伝わってきました。

歳を重ねても、釣りをしながら川を歩き、癒される時間を大切にしたい

最後に、今後の展望について聞いてみました。

「今は家族で行ってますが、自分が親になったり、新しい家族ができた時に、家族を紡ぐような釣りのスタイルを続けていけたらいいなと思います。

私の父のフェーズまで行くと、自分が釣ることよりも、子どもたちと一緒に釣りをして、子どもたちが魚を釣って喜んでくれるのを1番に思ってくれているんです。

私はまだ自分が釣りたいですが、いつか私も父と同じような釣りの楽しみ方ができたらいいなと思いますし、もし歳を重ねて、体力がなくなって、今ほどハードな釣りができなくなっても、釣りをしながら川をゆっくり歩いて、癒される時間は持ち続けたいです」




(プロフィール)
モデル/小西里果

京都府出身。OHAKO management所属。テレビCM・広告・アパレルブランドのカタログやWeb媒体に多数出演。幼少時代より釣りをしていたことから、現在は釣り関連の番組・雑誌・イベントMCなど幅広く活動している

Photos:Satoshi Eto
Text:Nobuo Yoshioka