普段から練習に訪れるというこの地で、姉妹のある1日に密着。プロアスリートとして練習に打ち込むONの時間、自分らしく過ごすOFFの時間から、それぞれの競技への想いや向き合い方に迫りました。
INDEX
目の前の課題をひとつずつクリアして、技を磨いていく――冨田せな
自分らしさを模索し、できることから積み重ねていく――冨田るき
趣味に打ち込む素顔の時間で気持ちを切り替える
練習前にカフェでおしゃべりするリラックスタイム
トレーニング前にカフェで過ごすひとときは、せなさんとるきさんにとってリラックスできる大切な時間。姉妹として、そしてスノーボードという競技に挑む仲間として、お互いの成長をどう見つめてきたのでしょうか。これまでの競技人生をともに振り返ります。
左から冨田せなさん、冨田るきさん
気づいたときには身近な存在だったスノーボード
せな:私もるきも、3歳頃からスノーボードを始めていました。 スキー場が家から車で15分の距離にあって、学校から帰ってきたらナイターで滑って、週末は家族皆でスノーボードをする日々。まさに生活の一部でした。るき:ゲレンデで滑り始めた記憶も、大会に出始めたときの記憶もほとんどないくらい、スノーボードは身近な存在でしたね。でも中学生で日本国内のプロツアーに参加するようになってから、少しずつプロとしての自覚を持つようになったというか。
せな:私は中学3年生で国際大会に出たときですね。スノーボードを仕事にして一生懸命頑張りたいし、応援してくれる方々のためにも中途半端にはできないという意識を持つようになりました。
大胆なせなと慎重派のるき、でもお互い負けず嫌い
るき:せなは大胆な性格で、行動力もあるところが見習いたいなと思う。でも、競技をやっているときは2人とも負けず嫌いなところがあって、そこは似ていますね。
せな:あとはよく「顔が似ているね」って言われます(笑)。性格は真逆で、るきは昔から几帳面で慎重派。でもここ数年は自分で考えて行動するようになってきたし、スノーボードへの向き合い方も少しずつ変わってきたなと思います。
るき:学生から社会人になって自由な時間が増えたぶん、自立心を持たなきゃと思うようになったからかもしれません。せなは数ある選手の中でも、「かっこよさ」を突き詰めているなって思うし、新しい技にも果敢に挑戦している。怖いという気持ちがないのかな? って不思議に思うくらい、年々怖いもの知らずになっている気がします。
せな:いや、怖い気持ちはあるんです(笑)。だけど目標に向かうためにはやるしかないし、最終的に挑戦することの楽しさや面白さのほうが勝つんですよね。私としては、るきも苦手なことに対してストイックに頑張っているなと感じるし、そういう姿を見て私も頑張ろうと思える。お互い刺激し合える存在だと思っています。
撮影協力:cafe & marche ichinii
目の前の課題をひとつずつクリアして、技を磨いていく――冨田せな
午後のトレーニングのため、ジャンプ練習施設の「小布施クエスト」にやってきたせなさんとるきさん。姉・せなさんの練習が始まると、和やかな空気は一変。数々の国際大会で結果を残し、挑戦を続ける姿の裏側には、彼女なりのこだわりと積み重ねた努力がありました。
私なりの「かっこいい滑り」を目指して
せな:感動をたくさんの人に伝えたいから、力強く勢いのある「かっこいい滑り」を普段から意識しています。もちろん、かっこよさは人それぞれだけど、私なりのかっこよさを表現することにこだわって、普段から練習に励み大会に臨んでいますね。その結果、ステイルフィッシュグラブ(ジャンプしたときに後ろ手でボードのかかと側のエッジをつかむこと)などの技に「せならしさが表れているね」と言ってもらえるようになったし、自分らしいプレースタイルが出せるようになってきたと思います。
雪のない場所で行うブラシ練習(人工芝でのオフシーズン・トレーニングのこと)では、基礎の部分をシビアにチェックすることを意識しています。たとえば、利き足ではないほうを軸にして回転する「キャバレリアル」というトリックがあります。
普段使っている大きなジャンプ台では、回転数を上げるぶん、ジャンプの抜けが甘くなりがちです。そこで今日は、あえて低い台を使い、抜けの感覚を確認しました。トリックの完成度を高めて、大会本番での実践につなげたいと考えています。

競技の技は危険なものが多く、わずかなミスで大怪我につながることもあるので、集中力を保つことが欠かせません。これまでも練習中の怪我でそのシーズンを棒に振ってしまうという悔しい経験がありました。
だからこそ練習中もON・OFF の切り替えを大切にして、2時間半のセッションでもなるべく集中力がある間は練習に打ち込み、集中力が途切れる前に早めに切り上げるようにしています。
ウェアは速乾性が高くて伸びのいい快適さで選ぶ
せな:普段のブラシ練習では、散水で全身が水浸しになるので、濡れても快適なウェアを選ぶようにしています。このコロンビアのロングスリーブTシャツは、OMNI-WICKという吸湿速乾機能を持つ素材なので、肌にくっつかず、伸縮性に優れているので動きやすくて 乾きも早いです。ストレスなく練習できるので、普段から愛用していますね。今日着ているパンツも動きやすいし、薄手ですぐに乾いてサラサラになります。夜の練習では、動いていても寒く感じることが多いので、水や風を防ぐことができるフードなしのジャケット を着て、体温を保ちながら練習に集中しています。
せなさんが愛用する「マウンテンズアーコーリングロングスリーブTシャツ」¥8,250(税込)
同じくせなさんが愛用する「ヴェナドリムパンツ」¥13,200(税込)
せな:寒さが厳しくなる冬は、バックパックにOMNI-HEAT INFINITYを搭載した薄手のダウンジャケット を入れて常に持ち歩いています。着るとすぐに暖かさを実感できるほど機能性が抜群だし、デザインも好み。アウターを脱いでも「かわいい!」と思えるウェアならコーデも楽しめて、より気分が上がります。
誰かの憧れになれるような存在を目指したい
せな:プロとしてのキャリアは13年。怪我やスランプのときは、悩んで引退を考えた時期もありましたが、「もう一度大会に出てから決めよう」と思い直し、挑戦を続けてきました。怪我=マイナスという考えが変わったのもその頃です。ここで諦めてしまうのはもったいない。まだまだ自分ができることがあるのなら、できるところまでやりたいし、支えてくれる人たちにも恩返ししたい。それが後悔のない道だと信じて突き進み、そこに結果がついてきたらいいなと思って踏ん張っています。
かつて私が先輩たちの背中を追いかけたように、いまは私自身が見られる側。これからは、誰かの憧れになれるような存在を目指していきたいです。
自分らしさを模索し、できることから積み重ねていく――冨田るき
一つひとつの技と真摯に向き合い、着実にステップアップを重ねてきた冨田るきさん。丁寧な練習を積み重ねながら、自分らしさを追求し続ける彼女の瞳には、競技へのまっすぐな想いとアスリートとしての芯の強さが宿っています。
反復練習を重ね、一つひとつの滑りを丁寧に
るき:ハーフパイプではバックサイド(後方宙返りのトリック)が得意で、エアターン(コースの壁面を使ってジャンプし技を繰り出すこと)でも見せ場をつくりやすいと感じています。技の練習を始めた頃は苦手意識もあったけれど、何度も練習を重ねるうちにコツをつかんで自信が持てるようになりました。それ以降、技を完璧に仕上げてからも反復練習を重ね、余裕が出てきたところで次のステップへ進むようにしています。最近は、技そのものだけでなく見せ方にもこだわるようになり、滑りのなかで自分らしさを表現する工夫をしています。

ブラシ練習では、まず低回転の技から入り、調子がよければ新しい技へ、うまくいかなければ基礎に戻るというサイクルで取り組んでいます。
特に重視しているのは、地面を滑っている体勢や、ジャンプの抜けのタイミング。今シーズンは手術の影響で後ろ足に力が入りづらいため、細かな動きにも注意を払いつつ、一つひとつの滑りを丁寧に仕上げています。
ウェアは機能性と見た目のかわいさ、どちらも大事
るき:私のスイッチがONになるのは、ストレッチを終えてブーツを履く瞬間。気分が乗らない日でも、そのタイミングで「よし、やろう」と自然と気持ちが切り替わります。練習前のコンディションチェックも丁寧に。負担のかかる左膝が固まっていないかを確認し、アップで動かしながら、怪我を防ぐためにも時間をかけてゆっくりと可動域を広げていきます。
練習のときに着るウェアは、通気性がよく、動きやすい素材を選んでいます。特にブラシ練習では摩擦が激しいため、耐久性の高さも重要。コロンビアのウェアは、たくさん動いて汗をかいてもヨレにくく、長く使えるのが嬉しいですね。
るきさんが愛用する「エクスプローラーズキャニオンバックショートスリーブティー」¥4,950(税込)
同じくるきさんが愛用する「ウィメンズロックリップストップジョガー」¥8,800 (税込)
ブーツは「マイレージレイン ツー ブーツ ウォータープルーフ」¥12,650(税込)を愛用
冬場の遠征では、防寒性と携帯性を両立したアイテムが欠かせません。インナーダウンやロングスリーブTシャツ、私服としても使えるジャケット を持って行き、寒暖差に備えます。
ビーニーやネックウォーマー といった小物類も私にとって欠かせない存在。ビーニーはヘルメットの下にかぶるので、フィット感や薄さはもちろん、色やデザインにもこだわっています。ネックウォーマーも呼気で凍ることがなく、すごく快適。機能性と見た目のかわいさ、どちらも大事にして選んでいます。
スノーボードの魅力を多くの人に届けたい
高校時代の世界大会出場をきっかけに「世界でもっと上を目指したい」という気持ちが芽生えました。そのモチベーションがいまもあるから挑戦を続けられていますし、怪我を経験したことで、スノーボードへの思いはさらに強くなりました。いまは滑れること自体が嬉しいし、日々の練習がかけがえのない時間だと感じています。最近では「子どもがファンなんです」と声をかけていただくことも増え、自分の滑りが誰かに届いていることを実感します。いつか、レッスン会やイベントを通して、子どもたちの身近な憧れの存在になれたら嬉しいですし、SNSなどを使ってスノーボードの魅力を伝える活動にも力を入れていきたいですね。
「スノーボードって楽しそう」「やってみたい」と思ってもらえるきっかけを届けられるよう、これからも挑戦を続けていきたいです。

趣味に打ち込む素顔の時間で気持ちを切り替える
練習後のリフレッシュタイムでも、互いにまったく異なるアプローチでON・OFF のバランスを取っている2人。自然の中を散歩したり、ものづくりに没頭したり――競技のことを手放す時間が、新たな活力を生んでいます。
カメラを手に外に出るせな、編み物で無心になるるき
せな:私は競技に対して一生懸命になればなるほど考えすぎちゃうし、気持ち的にマイナスな面が多くなるから、OFFの時間は外へ遊びに出てリフレッシュするのが好きなタイプ。一眼レフカメラで自然を撮ったり、最近はアクションカメラを使った撮影にも挑戦したりしていて、撮り方を模索するのが楽しいです。練習の合間に自分の滑りを撮影することも気分転換になっていて、撮った映像をSNSで発信するために、編集も頑張っていますね。

せなさん愛用のカメラ「Insta360 Ace Pro 2」
るき:せなはOFFのときも基本的にアクティブな感じがしますね。そこで発散して切り替えているんだなって思います。そんなせなと一緒に自然を見に出かけたり、ごはん屋さんやカフェめぐりをしたりすることは私も好きです。
せな:私が実家を出て別々に暮らすようになってから、私たちの関係性もちょっと変わった気がします。それこそ10代の頃は喧嘩も多かったし、家族だから一緒にいましたが、いまは友だちのような感じで、お互いの趣味を共有できるようになりましたね。
るき:私の場合は、考えすぎてドツボにはまりがちな性格だから、手術を機に始めた編み物がすごく性に合っているなと思います。
1つのことに無心になって取り組んで、スノーボードのことを完全に忘れる時間が心地いいし、完全にOFFになるからONへの切り替えもスムーズなんです。まだまだ初心者レベルですが、少しずつ上達していきたいですね。
るきさんは2つめのかばんを製作中
コロンビアのウェアは欠かせない暮らしの一部
せな:コロンビアとは小学生の頃からサポートを受けている長い付き合いで、遠征でも普段の生活でも、コロンビアのアイテムは欠かせないですね。特にOMNI-HEAT INFINITYを搭載しているダウンジャケット は、Tシャツの上に羽織るだけで十分暖かくて、寒い時期に頼れる存在。友人や家族にすすめると「すごい!」ってみんな驚いてくれます(笑)。
るき:私は薄手でコンパクトに畳めるジャケット もよく使っていて、春や秋の肌寒い季節にバッグに入れておくと安心感があります。最近は、暖色の柄入りハーフスナップフリースに一目惚れ。定番アイテムだけど柄があるから新鮮だし、着心地がよくて毛玉にもなりにくいのが嬉しいんです。
るきさんお気に入りの「ウィメンズヘルベチアII プリントクロップドハーフスナップフリース」¥12,100(税込)
せな:定番アイテムもデザインやカラーが変わるとついリピートしちゃうんですよね。新作もかわいいものが多くて、なかでも今日着ているスウェットは切り替えのデザインがお気に入り。インナーとしても使えるから、これからの季節が楽しみです!
せなさんお気に入りの「ウィメンズトゥリースワロースウェットクルー」¥11,000(税込)
るき:コロンビアの服って、長く使いたいと思うものが多いし、街中で着られるおしゃれなアイテムが増えているから、普段着のコーデを考えるのも楽しい。暮らしの一部として欠かせない存在ですね。
撮影協力:小布施クエスト
プロフィール
3歳から父の影響でスノーボードを始め、小学1年でハーフパイプの大会へ出場。 中学1年でプロツアー「HASCO presents PSA OPEN」で3位になりプロ資格を取得。中学3年で全日本選手権で3位になり、スロープスタイルでナショナルチームに選ばれる。 翌年ハーフパイプのナショナルチームへ転向。2022年冬・北京で開催された、4年に一度のスポーツの祭典ではスノーボード女子ハーフパイプ初となる銅メダルを日本に持ち帰る。
Instagram: https://www.instagram.com/sena_tomita/
冨田 るき(とみた るき)
父の影響で3歳からスノーボードを始める。 保育園年中のとき、初めてハーフパイプの大会に出場以来競技の道を歩み始める。小学6年でプロ資格を取得し、2017年全日本スキー連盟強化指定選手となる。ジャパンカップでは3位入賞、全日本選手権では5位、ジュニアワールドカップ5位に入賞。2021年冬・北京で開催された、4年に一度のスポーツの祭典ではスノーボード女子ハーフパイプに出場し、5位入賞。
Instagram: https://www.instagram.com/ruki_tomita/
Text:Eri Ujita
Photo:Kyoko Asano
Edit:Yusuke Fukuda(CINRA)