アウトドアで求められる利便性を備えながら、日常の装いとしても自然になじむ。
そんな、街と自然を行き来するライフスタイルに向けて、コロンビアから新シリーズ「ワンダーリッジ」が登場しました。
アウトドアを特別なものとして切り分けるのではなく、日常の延長として捉える。その発想はどのような背景から生まれ、どんな考えのもとでかたちになっていったのか。商品開発担当の立花祐樹さんに話を聞きました。

コロンビアスポーツウェアジャパン 商品開発担当の立花祐樹さん
INDEX
アウトドアと日常の中間に立つ、新シリーズの立ち位置
「オーバースペック」にしない。アウトドアから日常までを考えた、ちょうどいい機能性
シワになりにくく、扱いやすい。長く使うための素材設計
足すことだけが正解じゃない。心地良さをつくるための取捨選択
「アウトドアへの入り口」としての、手に取りやすさ
「境界」を行き来する。ワンダーリッジという名前に込めた想い
まず、「ワンダーリッジ」というネーミングに込められた意味から教えてください。
立花:「WANDER(行き来する)」と「RIDGE(稜線・境界)」を組み合わせた言葉です 。
コロンビアには、「UNLOCK THE OUTDOORS FOR EVERYONE (すべての人にアウトドアをひらく)」というフィロソフィーがあり、「ドアを開ければそこはもうアウトドアである」という考え方を大切にしています。
そうした考え方のもとで、自然と街、アウトドアと日常という境界を軽やかに行き来し、どのような環境にもなじむように、という想いを込めて名づけました。

立花さんが着用しているのは「ワンダーリッジスウェットフーディ」14,300円(税込)。
具体的には、どのようなシーンでの着用を想定されているのでしょうか?
立花:気軽な低山ハイクやキャンプはもちろんですが、旅行も立派なアウトドアだと考えています。家を出て、移動し、自然のなかで過ごし、帰りに食事をして帰宅する。その一連の流れすべてを快適に過ごせることを目指しています。
また、日常のなかにある「アクティブな瞬間」も想定しています。たとえば、駅まで自転車で移動したり、旅先で軽くランニングをしたり。そうした身体を動かすシーンにおいてストレスを感じないスペックを備えています。



アウトドアと日常の中間に立つ、新シリーズの立ち位置
コロンビアのラインナップ全体で見ると、ワンダーリッジはどのような立ち位置のシリーズになるのでしょうか?
立花:コロンビアには、登山やハイキング向けのアパレルをはじめ、フィッシングに特化した「PFG」シリーズ、日常使いを想定したライフスタイルカテゴリなど、複数のシリーズがあります。また、都市での毎日を快適にする、スタイリッシュで機能性に優れた「BLACK LABEL」というシリーズも展開しています。
そうしたラインナップのなかで、今回開発したワンダーリッジはアウトドアフィールドを起点に、かつ「快適さ」をキーワードに、アウトドアと日常の中間地点を担うようなシリーズですね。
こうした発想は、近年の市場の変化とも関係しているのでしょうか。
立花:そうですね。コロナ禍を経て、アウトドアウェアを「登山やキャンプのための服」ではなく、日常着として選ばれる方が一気に増えました。これまでアウトドアブランドの服を着たことがなかった方が、店頭で手に取ってくださるケースも増えています。
以前は「山に行ければいい」「高機能であれば高価でもいい」という価値観が主流でしたが、いまは「いろいろなシーンで使いたい」「一枚でどこへでも行ける服がいい」といった、汎用性を求める声が強くなっていると感じています。そうした変化が、ワンダーリッジの企画につながっていきました。

「オーバースペック」にしない。アウトドアから日常までを考えた、ちょうどいい機能性
数あるアウトドアウェアのなかで、ワンダーリッジならではの特徴はどこにありますか?
立花:一番の特徴は「ちょうど良さ」です。3,000m級の山に登るためのスペックと、公園で過ごすための快適さはまったく異なると思います。ワンダーリッジは、アウトドアで安心して楽しめる機能はしっかり確保しつつ、日常着としても違和感のないデザインや素材感を重視しました。
そのため、アウトドアウェア特有のバリバリとした硬い素材感や日常では使うシーンが限られてしまうディテールを抑え、普段のジーンズに合わせてもなじむような佇まいを意識しています。
機能のためのディテールがデザインとして前面に出すぎてしまうと、どうしても着るシーンが限定されてしまいますからね。使える機能は保ちつつ、主張しすぎないバランスを、デザイナーや店舗スタッフと話し合いながら追求しました。


シワになりにくく、扱いやすい。長く使うための素材設計
今回展開されるアイテムのなかで、特に象徴的なものを教えてください。
立花:象徴的なアイテムとして、まず挙げたいのがジャケットですね。一見するとシンプルなウィンドジャケットですが、裏面に加工を施して耐水圧を高めているため、ちょっとした雨であれば傘なしで対応できます。

「ワンダーリッジジャケット」20,900円(税込)。コロンビア独自の撥水機能「オムニシールド」を採用

立花:アームホールを広めに取っているのも特徴ですね。春先はTシャツの上から、秋冬はフリースの上から羽織るといったレイヤードがしやすく、長いシーズン着用いただけます。
背面のベンチレーション(通気口)も、スポーツウェアのようにガバッと大きく開くのではなく、日常になじむ控えめなデザインにこだわりました。ジャケットのファスナーも表から見えないような仕様を採用したり、機能が全面に出すぎない工夫を施しています。
また、耐久性が高くシワになりにくいため、脱いだ際にはくしゃっとカバンに入れても気になりません。移動の多いシーンでも扱いやすい一着を目指しました。

着用時の動きやすさを考慮した、肩周りのパターンと立体裁断のアーム


背面にベンチレーションを備え、衣服内のムレを軽減する

次に、パンツについて。ストレッチが効いているのに、生地がしっかりしていますね。
立花:このパンツには、ポリウレタンを使わず、ポリエステル100%のストレッチ素材を採用しています。ポリウレタンは伸縮性に優れた素晴らしい素材ですが、今回は「長く使えること」を最優先に考え、より経年変化の少ないポリエステル糸を選びました。
ジャケットと同様、シワになりにくく、「道具」としてのタフさと、日常着としての使いやすさを両立させています。

「ワンダーリッジパンツ」13,750円(税込)。撥水機能「オムニシールド」を採用。ストレッチ素材を採用し、さまざまな動きに対応できる


シャツについてもこだわりを聞かせてください。
立花:シャツには吸湿速乾機能「オムニウィック」を搭載しています。ドライな肌触りの素材を採用することで、生地と肌のあいだにわずかな隙間が生まれ、汗をかいても肌に張りつきにくい仕様にしています。
また、胸ポケットの配置にも工夫があります。バックパックのハーネスに干渉しないよう、通常より少し中心に配置したり、ポケット口の仕様を自然に出し入れしやすいように検討したりしました。胸元は物を入れても揺れにくい場所でもあるので、スマートフォンなどを入れても不快感が出にくい設計です。
シリーズ全体の考え方として、アウトドアと日常のどちらでも快適に使えるよう、細かな部分まで配慮しています。

「ワンダーリッジロングスリーブシャツ」14,850円(税込)。吸湿速乾機能「オムニウィック」がサラッとした着心地を保つ。ボタンは着脱に便利なスナップボタン仕様


足すことだけが正解じゃない。心地良さをつくるための取捨選択
開発にあたって、特に苦労された点や、こだわったエピソードはありますか?
立花:何が必要で、何が不要か。その取捨選択には時間をかけました。その前提として、あえて高山や極端な悪天候といった極端な環境ではテストをしていません。このシリーズが想定しているのは、日常の延長線上にあるアウトドアフィールドだからです。
低山でのハイクやキャンプ、日常の移動など、実際に使ってほしいシーンで着用しながら、「ちょうどいいかどうか」を確かめていきました。
立花さんご自身は、登山やトレイルランニングもされるそうですね。
立花:そうですね。ハードな環境も知っているからこそ、3,000m級の山に必要な機能と、日常で心地良く使える機能では、求められる基準が違うと感じています。ただ、その感覚だけで判断するのではなく、実際にお客様と接している店舗スタッフの意見も重要だと考えました。
そこから、現場の声を反映するプロセスにつながっていくわけですね。
立花:はい。サンプルを見てもらいながら、「これは本当に必要か」「日常で使いやすいか」といった率直な意見をもらい、ディテールを詰めていきました。

現場の声を反映して、ディテールを変更した例などはあるのでしょうか。
立花:スウェットアイテムは、その1つですね。当初はシリーズとしての統一感やより機能性を高めるために、スウェットの背中にもベンチレーションを入れる案がありました。
ただ、試作を重ねるなかで「もともと通気性の良いスウェット素材にベンチレーションは本当に必要なのか?」という疑問が出てきて。機能を持たせることで、かえってスウェット本来の着心地を損なってしまうのであれば、潔くなくしてしまおうと考えたんです。
最終的には「日常での快適さ」というコンセプトに立ち返り、ベンチレーションの採用は見送ることにしました。このように「足したり、引いたり」を何度も繰り返して、いまのかたちに辿り着きました。


「アウトドアへの入り口」としての、手に取りやすさ
これまでうかがってきた「ちょうど良さ」という考え方は、価格や使いやすさにもつながっているように感じます
立花:おっしゃる通り、コロンビアは「適正価格で、本当に使えるものを提供する」という姿勢を大切にしています。高価なウェアだからといって汚れを気にして使うのは、アウトドアの楽しみ方として少し違う気もしますよね(笑)。
ガシガシ使えて、ケアもしやすく、価格も手頃。そんな親しみやすく、日常的なウェアであることがワンダーリッジらしさであり、このシリーズの強みだと感じています。
最後に、ワンダーリッジをどのような方に届けていきたいですか?
立花:このシリーズが、多くの方にとって「アウトドアへの入り口」になれば、とてもうれしいですね。「ハイク専用」「キャンプ専用」といったように用途を限定するのではなく、これを着ていれば街からフィールドまでシームレスに楽しめる。そんなシリーズとして愛用していただければと思っています。
「ドアを開ければそこはもうアウトドアである」という考え方のとおり、ワンダーリッジが皆さんにとって、次につながる「玄関」のような存在になってくれたら、これ以上にうれしいことはありません。

アウトドアと日常をつなぐ、ワンダーリッジという選択肢
「欲しいときに、適正価格で、本当に使えるものが買える」。立花さんのこの言葉は、今回のシリーズ全体を貫く考え方を端的に表しています。
ワンダーリッジは、過剰なスペックや用途を限定した設計ではなく、日常の延長線上で使い続けられることを前提に企画されたシリーズです。流行を追うのではなく、誰もが気負わずに手に取れることを大切にしています。
「ドアを開ければ、そこはもうアウトドア」。
コロンビアが掲げるこの考え方のもとで、ワンダーリッジは、特定のシーンに縛られず、幅広い層の方々が取り入れやすいラインとして展開されています。

作成者情報
- 立花 祐樹
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コロンビアスポーツウェアジャパン 商品開発担当。ファッションやスポーツブランドでの販売、営業、企画を経て、2021年にコロンビアに入社。現在はMDとしてコロンビアスポーツウェアジャパンの企画・開発に携わる。もともと身体を動かすことが好きで、趣味はトレイルランニングや登山など。「ワンダーリッジ」を相棒に、子どもとキャンプへ出かける日を心待ちにしている。
Text:Nozomu Miura
Photo:Takanobu Soma
Edit:Kyohei Kawatani(CINRA)