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高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2019春夏新作チェック(前編)

2019/04/10

テレビの登山番組や、アウトドア・登山系の雑誌、ウェブサイトなど、多くのメディアで活躍されている山岳ライターの高橋庄太郎さんに、マウンテンハードウェアの2019春夏の新作アイテムをチェックしていただきました。

高橋 庄太郎
宮城県仙台市出身。山岳/アウトドアライター。山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌などを中心に執筆。特に好きな分野は、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでも野外のテントで眠る」こと。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。


アウトドアウェアは毎年、毎シーズン、変化を遂げていく。とくに素材の進化は著しく、多種多様な生地を使い分け、さまざまな用途に合わせたウェアが開発されている。興味深いのは、人間が考案した最先端の生地が使われる分野として「アウトドア」以外に挙げられるのは、「ミリタリー」だということ。共通点は、ウェアの良し悪しが“命”に直結しかねないということで、貴重な素材が惜しみなく使われているということになる。登山を趣味にする大半の人には“命”は大げさだろうが、少なくても“快適さ”は大きく変わってくるはずだ。

今期のマウンテンハードウェアのトピックスは、ひさしぶりに防水透湿素材の代名詞的存在である「ゴアテックス」を使ったウェア類が復活したことだ。マウンテンハードウェアの防水透湿素材といえば、独自開発した「ドライQ」が有名だが、これからはウェアによってゴアテックスと使い分けを行なっていくのだという。

今回の新作チェックは、「前編」でゴアテックスを使ったウェアのバリエーションを確認。「後編」ではとくに注目すべきウェアとバックパックを見ていきたい。

エクスポージャー2ゴアテックス3Lアクティブジャケット

意外と知られていないのが、ゴアテックスを使った生地にはいくつかの種類が用意されていること。このジャケットに使われているのは、アイテム名にも入っている「ゴアテックスアクティブ」で、文字通り“アクティブ”に行動することを念頭に、透湿性を上げているものだ。柔らかくて軽いのも特徴のひとつである。

超軽量のGORE-TEX Activeを採用したエクスポージャー2ゴアテックス3Lアクティブジャケット

僕は代謝がよいのか、行動中に大汗をかく。夏にはTシャツを絞りながら歩くことも珍しくはない。もちろん夏以外はそれほどでもないが、雨のときにレインウェアをはおったり、雪の中でハードシェルジャケットを着こんだりすると、やはり内部の蒸れが気になってくる。そのとき、この「ゴアテックスアクティブ」のウェアがいい。他のゴアテックス製品と比べ、たしかに湿気がよく抜ける感じがするのだ。
このジャケットのポイントは、透湿性が高い素材を使っているだけではなく、脇の下からサイドにかけて大きく開くベンチレーターをつけて換気性を上げ、徹底してウェア内部の蒸れを抑えようとしていること。僕のような汗かき体質の人間は小雨程度であれば、多少内部に雨水が入ろうとも、ベンチレーターを開けておくほうが蒸れずに気持ちがいい。気温が高いときにウェアのファスナーを閉めたまま行動していると、外部の雨水や雪はシャットアウトできても、内側でかいた汗の処理に透湿性が追い付かず、結局自分の汗でウェア内がずぶ濡れになることも多いからだ。だからこそ、ベンチレーターがついていることは、僕にはとてもうれしいことなのである。

脇に大型のベンチレーションを配置

さて、僕の身長は177㎝ほどで、上半身は平均よりも少し細め。しかし下半身はわりとガッチリしており、腰回りも太い。マウンテンハードウェアではサイズM程度である。
試着してみると袖が少し余るものの、ジャケットはやはりサイズMが適当だ。立体裁断で作られたラインが体に合い、ストレッチ性の生地ではないのに違和感なく着られる。フロントのファスナーは少々ゴツめだが、大きな抵抗なく開け閉めでき、なにより頑丈そうなのがいい。フードと裾のフィット感の調整には、「Coheesiveエンベデッドコードロック」というやたら長い名称のパーツが使われているが、これはコードを引くだけで締まり、ボタンを押すだけでロックが解除されるという便利な仕組みだ。このパーツはいくぶん大ぶりなのが気になるが、着心地を損ねる場所につけられているわけではなく、とくに支障はない。

フードと裾に配されたCoheesiveエンベデッドコードロック

むしろ僕のような下半身がっちり型の者が着たときに気になるのは、裾が少し絞られ過ぎている気がすることだ。僕が着る際には裾のコードロックを最大限に緩めておかないと窮屈な思いをする。それでも動いているうちにズリ上がってくる可能性もないわけではない。お尻が大きい人は、購入前にしっかり試着して確認してほしい。
この原稿を書く前に僕はこのウェアを自宅に持ち帰り、ヘルメットを着用してからフードをかぶるなど、改めて念入りにチェックしてみた。フードにつけられた張りのある庇部分もよくできており、生地の引き攣れや視界を遮られるなどの問題もない。よくできているジャケットだと感じる。残雪期にも使える高機能製品で、お値段はなかなかのものだが、それだけの価値がある品質なのである。

製品名:エクスポージャー2ゴアテックス3LアクティブジャケットMEN’S / WOMEN’S
¥61,560(税込)

エクスポージャー2ゴアテックスパックライトストレッチPO

「アクティブ」が透湿を高めることに比重を置いた生地であれば、「ゴアテックスパックライト」は、軽量性とコンパクト性を重視した素材だ。この場合、軽量性とコンパクト性は「携行性」と言い換えることもできる。だからこそ「パックライト」という名称なのであり、不必要なときはバックパック内に入れて保管しておくレインジャケットの素材として、軽量コンパクトさを重視する人の用途にマッチしている。

しかもこのジャケットに使われているパックライトは、さらにストレッチ性を加えた高機能なもの。先の「エクスポージャー2ゴアテックス3Lアクティブジャケット」に比べると少しタイトなフォルムになっているが、体を動かしても体の動きが妨げられることはなく、じつに着心地がいい。伸縮性がない一般的なパックライトに比べ、価格が上がるのは仕方ないだろう。

フロントのファスナーは腰元までのプルオーバータイプだ。フロントのファスナーを全開にして頭からかぶってみたところ、いくら生地に伸縮性があってもタイトなフォルムということもあって、正直なところ着やすいとはいえなかった……というのは僕の勘違い。よく見ると左側のサイドにファスナーが取り付けられていて、これを開くとボディが広くなり、難なく脱ぎ着ができるのだ。ただし、この部分のファスナーは止水タイプではなく、一般的なもの。水が浸透する可能性はあるが、その上にフラップがついているので、大きな問題はないだろう。

着脱を容易にするサイドジッパー

袖丈は「エクスポージャー2ゴアテックス3Lアクティブジャケット」よりも、さらに少し長めという印象。ストレッチ性の素材ゆえに、少しタイト気味に着てもストレスがないので、袖丈の長さが気になる人は、1サイズ小さいものを選んでもよいかもしれない。
おもしろいのは、フロントのポケットだ。左右が内部でつながっている、いわゆるカンガルーポケットで、大きなものも楽に入れられる。また、このジャケットのフィット感の調整は、「Coheesiveエンベデッドコードロック」ではなく、小さなコードロックを使う一般的なタイプ。生地以外でも「パックライト」なウェアを目指しているのが、こんなディテールからもわかる。
個人的には、濃淡のあるグリーン2色とカーキを使ったマルチカラーが気に入った。これはかつてマウンテンハードウェアがゴアテックスを使っていたときの色をイメージしたものだといい、数年ぶりの復活を記念して採用されたカラーリングらしい。こんなところにもメーカーの意気込みを感じてしまう。

製品名:エクスポージャー2ゴアテックスパックライトストレッチPO
¥44,280(税込)

エクスポージャー2ゴアテックスパックライトジャケット

このジャケットに使われている素材は、「エクスポージャー2ゴアテックスパックライトストレッチPO」と同じ「ゴアテックスパックライト」だが、ストレッチ性は持たせていないタイプ。着用感を率直に述べれば、やはりストレッチ性素材のものには敵わない。だが、その分だけ安価で買い求めやすく、コストパフォーマンスは高いといってよいだろう。それに着心地はあくまでも「エクスポージャー2ゴアテックスパックライトストレッチPO」と比較しての話であり、これ自体が悪いというわけではない。

目を引く特徴は、左右のサイドにつけられているポケットの開口部の広さだ。メジャーで計ってみたところ、ちょうど30㎝にもなる。その理由は、このポケットの内側がメッシュ素材になっており、開けたままで行動すれば、ここがベンチレーターの機能を果たし、内部の湿気を排出できるようにするためである。しかしベンチレーターとして機能させると、どうしてもポケットに入れたモノが落ちやすくなり、収納力は下がってしまう。しかしベンチレーターを他の場所につけるよりもウェアの軽量化に貢献できるというわけだ。ポケットとベンチレーターを分けて作り、両者の機能性を妨げないデザインのほうがいいのか、ポケットとベンチレーターをひとつにまとめ、軽量化を重視したほうがよいのか。どちらのほうを好むのかは、人それぞれであろう。

ポケットの開口部が広いということは、ポケット自体も大きいということである。その特徴を生かし、このジャケットは右ポケットの裏側にもファスナーの引き手を付け、ポケット内にウェア本体を収納できるパッカブル仕様になっている。このあたりも携行性に優れた「ゴアテックスパックライト」を生地に選んでいる理由とリンクしているのがおもしろい。

ポケットを裏返して本体を収納するパッカブル仕様

ストレッチ性が高い「エクスポージャー2ゴアテックスパックライトストレッチPO」では感じなかったが、このジャケットも「エクスポージャー2ゴアテックス3Lアクティブジャケット」同様に、裾まわりが僕の腰には少しタイトである。だが、一般的な体形の方ならば、支障なく着用できるだろう。
一昔前ならば、「ゴアテックスパックライト」は携行性に優れるものの、耐久性には落ちるというのが定説だった。ゴアテックスのメンブレンを特殊加工で強化しただけのパックライトの裏面は、しっかり裏地を貼ったものよりも傷みやすかったからだ。だがこのジャケットの生地は、以前ものよりも見るからに耐久性を上げている。このような進化はうれしいものである。
これらのゴアテックスパックライトを使ったジャケットは、PFC(フッ素化合物)フリーの撥水加工を施している。じつは一般的な加工よりも汚れが付着すると撥水性が落ちやすいのだが、環境への負担が少ないのが大きなメリットだ。もっとも、撥水性の低下はこまめな洗濯を行なえば解消できる程度のレベルであり、多少機能が低下しても環境問題を優先するというのは、今後のモノ造りのひとつの流れといえるかもしれない。

製品名:エクスポージャー2ゴアテックスパックライトジャケットMEN’S / WOMEN’S
¥30,240(税込)

エクスポージャー2ゴアテックスパックライトパンツ

これは「エクスポージャー2ゴアテックスパックライトジャケット」と同じ素材で作られ、ジャケットと対になるパンツ。そのために、素材についての言及は省略しよう。
僕の体型にはジャケット同様に、サイズMがちょうどよい。丈の長さはまさにジャストだ。腰回りは少しタイトとはいえ、それは僕のお尻が大きすぎるということで仕方ないが、シルエット自体はよく計算されており、足の動きはほとんど妨げられない。

このパンツは両サイドに腰から裾まで長いファスナーがダブルで取り付けられ、腰近くだけを開いてベンチレーターのように使ったり、ブーツをはいたままでも足入れしやすいように裾だけを開いたりと、さまざまな使い方ができる。もちろん完全に開け放てば、座ったままでも脱ぎ着ができるほどで、非常に便利だ。もっともこのような仕様のパンツは他にもあるのだが、エクスポージャー2ゴアテックスパックライトパンツのファスナーはとても柔らかく、着用時にはもちろんのこと、収納するときにも邪魔にならないのが長所である。

サイドフルジッパーで脱着が容易

ウエストのサイズ調整は伸縮性素材とコンビになった面ファスナー。これがちょうど腰のファスナーの上に位置する場所につけられ、ファスナーを下げたときもパンツが無用に開かないような働きを持っている。とはいえ、これだけでは少しパンツがずれることもあり、スナップボタンなども併用してファスナー開放時に起こりうるずれをもっとしっかりと抑えられたら、さらに機能的だっただろう。大きな問題ではないが、リニューアルすることがあれば微調整してもらえるとよさそうだ。
裾の部分にはユニークな特徴がある。スナップボタンが二重についており、足が細い人や強風で裾がバタつくときは、パンツの膝下を絞って着用できるようにしていることだ。それに、ファスナーを開いたままスナップボタンで留めるという使い方をすれば、裾をばたつかせずに風を通すことができ、ベンチレーターとしての機能も発揮させられる。なかなか考えられた工夫なのである。ただ、ふくらはぎがやたらと太い僕は、上下に2つずつ並んだスナップボタンのうち、上段のほうはキツすぎて留められず……。地面に近い下段は留まるので、ある程度の機能は果たせるが、ここは自分の身体的特徴を恨むしかない。

サイズ調整用に2か所スナップボタンが配されている

ポケットはお尻にひとつだけついている。このポケットは裏返すと、パンツ本体を収納できるパッカブル仕様になっており、ジャケット同様に携行性を考えたデザインになっている。

製品名:エクスポージャー2ゴアテックスパックライトパンツ MEN’S / WOMEN’S
¥25,940(税込)

複数のゴアテックスを使い分け、それぞれのディテールにもこだわって作られたジャケットとパンツ。ぱっと見では違いが分かりにくいかもしれないが、その微妙な差にこそ、よいものを作ろうというメーカーの意気込みが伝わってくる。なにしろマウンテンハードウェアがゴアテックスを使ったウェアを再開するのはなんと9年ぶりなのだ。ちなみに、これらのウェアのアイテム名に共通して入っている「エクスポージャー」は、1993年のブランド創設時、初期のゴアテックスのウェアに付けられていた言葉である。今期は「エクスポージャー2」としているのは、当時のスピリットを継承するという意味なのだろう。

どれも優れたウェアだが、僕が実際に山中で使ってみたいのは「エクスポージャー2ゴアテックスパックライトストレッチPO」だろうか?やはりあのストレッチ性は着心地よく、多少値が張っても「エクスポージャー2ゴアテックスパックライトジャケット」よりも心惹かれる。プルオーバーではなく、同素材でフロントがフルオープンする一般的なジャケットタイプもいずれ開発してもらいたいところだ。「エクスポージャー2ゴアテックス3Lアクティブジャケット」も捨てがたいが、正直なところ価格面で躊躇してしまうのは否めない。しかし機能面ではすばらしく、そのあたりが悩ましい……。

この「前編」では、待望の復活を果たしたゴアテックスのウェアをチェックした。次回の「後編」では、機能性に秀でるジャケットと、パンツ、バックパックの新作を見ていきたい。
後編はコチラ

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2019/04/10