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高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2019春夏新作チェック(後編)

2019/04/17

テレビの登山番組や、アウトドア・登山系の雑誌、ウェブサイトなど、多くのメディアで活躍されている山岳ライターの高橋庄太郎さんに、マウンテンハードウェアの2019春夏の新作アイテムをチェックしていただきました。(前編はコチラ

高橋 庄太郎
宮城県仙台市出身。山岳/アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌などを中心に執筆。特に好きな分野は、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでも野外のテントで眠る」こと。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。


9年ぶりに復活したゴアテックスのウェアをチェックした「前編」に続き、「後編」では高機能素材を使ったウインドシェルと、パンツ、バックパックという新作をチェック。今期も実力派のアイテムがそろっているようだ。

コアプレシェルフーディ

袖を通した途端にわかるのは、その軽さと柔らかさ。脱ぎ着も容易でほとんど着ている感じがしないフルジップタイプのウインドジャケットだ。なにしろ超薄手で程よく伸びる素材を使い、たった140g。数年のアウトドアウェアのなかでも、このような超薄手タイプは人気だが、改めてこのタイミングで発売されるアイテムだけに、完成度はますます増しているようである。

このようなウェアは、なんといっても素材に尽きる。使用素材は「パーテックスカンタムエア」というもので、「風を遮りながらも通気性がある」というちょっと矛盾した機能を持っているという。そこで僕は実際に生地に息を吹き付けてみたところ、メーカーが言わんとしていることはだいたい理解できた。つまり、少し遠くから息を吹き付けたときは、ほとんど風が生地を通過しないのだが、口を直接つけて息を吹き込むと、たしかに風が抜けていくのである。この微妙な感じが「風を遮りつつ、通気性がある」ということなのだろう。この程よい感じが山中では便利そうで、とくに汗ばみやすい時期には活躍するだろう。とくにトレラン愛好家の方などには合いそうだ。

伸縮性のあるパーテックスカンタムエア

身長177㎝の僕はサイズMがピッタリで、腕の長さもちょうど。「前編」でチェックしたジャケット類はどれも腕が余ってしまったが、コアプレシェルプルオーバーはまるでアジア人用にデザインしたかのようなサイズ感なのだ。薄手のウェアは袖の調整がしにくいものが多く、あらかじめ適した袖丈になっているのはうれしいことである。フードもしっかりと頭を覆い、無用な隙間が生まれないのもいい。風が吹き込むこともなく、強風のときも頭部を温かく守ってくれそうである。
右手をポケットに入れてみたときに発見したのが、さらに内部につけられている伸縮素材のポケットだ。これなら貴重品もしっかりとキープできそうである。この伸縮素材のポケットにはウェア本体が押し込めるようになっており、パッカブル仕様で携行性も良好。収納時は手の平サイズであった。

製品名:コアプレシェルフーディーMEN’S / WOMEN’S
¥16,200(税込)

コアプレシェルプルオーバー

コアプレシェルプルオーバーは、「コアプレシェルフーディ」のフードを省き、ハイネックのデザインにしたものだ。フードの分に加え、プルオーバータイプでフロントのファスナーが短くなっていることもあり、重量はたった115g。持っているのを忘れそうな軽量性である。もちろん素材は同じ「パーテックスカンタムエア」となっている。
この素材は撥水力がハンパない。水滴を落としてみると、瞬間的に玉のように弾き飛ばし、ウェア表面はほとんどドライなのである。あまりによく水を弾くものだから、僕は両手で揉むように水を無理やりこすりつけてみたが、それでもあまり水は浸透しない。小雨程度なら、少しの間はこれで乗り切れるだろう。このウェアもパッカブル仕様だが、腰にポケットがあるフーディとは異なり、胸ポケットの裏側の位置に伸縮素材のポケットを付け、そこにウェア本体を収納するようになっている。

サイズ感や着心地は「コアプレシェルフーディ」と変わらない。しかし、同素材でフーディとプルオーバーを用意されると、どちらを選ぶべきか迷ってしまう。脱ぎ着しやすく、頭部も守れる点ではジャケットタイプのフーディのほうがよさそうだが、このハイネックタイプもじつは便利そうなのだ。これほど薄い生地のウェアならば、アウターとしての用途以外にレインジャケットなどを合わせて中間着として活用できるが、その際にはフードなしのほうが、首回りがすっきりして着心地がよいからだ。また、首がべたつきがちなレインウェアの裏地に触れることも無くなり、さらっとした着心地を得られる。
そのような使い方もできるからか、ハードシェルやレインウェアのような、いかにも防御性が高い「シェル」の一歩手前の存在ということで、「プレ」シェルという名前なのだろう。個人的には、ハイネックでフードなしのフルジップタイプという「コアプレシェルフーディ」と「コアプレシェルプルオーバー」の間を取ったタイプにも興味があるが、現在のラインナップならば……。僕は脱ぎ着のしやすさを重視して、フーディにするかもしれない。いや、レイヤードに使いやすいハイネックのプルオーバーか? なかなか結論は出しにくい。

製品名:コアプレシェルプルオーバーMEN’S / WOMEN’S
¥14,040(税込)

ダイヘドラルプリカーブパンツ

アイテム名にも入っている「プリカーブ」とは、脚部をただ立体的にとらえるだけではなく、その動きにも対応して設計した超立体裁断のことだという。たしかに細身なのに足の動きが妨げられるような感触はほとんどない。
……と言いながら、足腰がとてもがっしりとしている僕がサイズMを履くと、まるでタイツのようにピチピチだ。だが、それでも足の動きが妨げられる感覚はないのだから、やはり驚くべきことなのである。これはプリカーブによる厳密な設計もあるだろうが、それ以上に超伸縮性の生地が一役買っているとも思える。

その生地は「ドットエアストレッチ」というもの。生地を伸ばして光にかざしてみると、ドットというよりはライン状の隙間が確認でき、これによって伸縮性の高さと風通しのよさを同時に実現しているのである。僕はこの原稿を3月下旬に書いているが、この時点でダイヘドラルプリカーブパンツを履いてみると、「涼しい」という感覚を越え、もはや寒いほど。春先や晩秋に着用するのはお勧めできないが、真夏は大活躍しそうだ。直射日光が肌に当たらないので、ショートパンツ以上に涼しく感じるかもしれない。もっと蒸し暑くなってから試してみたいパンツなのである。

生地の撥水性の高さは、プレシェルのフーディやプルオーバー並みだ。ライン状の隙間から浸水してくる感覚もなく、これまた小雨程度ならしのげそうである。ただ、超伸縮・超薄手の素材だけに、岩や枝の突起には引っかかりやすい。また耐久性はあまり高いようには見えないが、実際にはいかほどなのかは、今回は山中で試したわけではなく、確認しきれていない。もしも高耐久性だったら、すみません……。

ディテールで面白かったのは、バックル付近のみが露出するような形でベルトが付属しているのに、その上にも別途ベルトループが付けられていることだ。付属ベルトが気に入らないときは外してしまい、他のベルトにチェンジできるということなのだろう。地味ながら、あまり類を見ないデザインである。

ちなみに、このパンツはアジアンフィット。欧米人ほど足が長くない日本人にも合いやすい丈の長さだ。それなのに、もしも僕が自分の足の太さに合わせてサイズLやXLを履いてしまったら、丈がかなり余ってしまうだろう……。裾の構造がシンプルなので、丈詰めしやすいという点も覚えておいてよさそうだ。

製品名:ダイヘドラルプリカーブパンツ
¥15,120(税込)

スクランブラー35バックパック

アウトドア用に使われる素材の中で「見た目」だけでも人気を得られるものはほとんど見られない。例外的な存在のひとつが、このバックパックに使われている「Xパック」だ。特徴的なX型に交差する線は、生地の耐久性を上げるリップストップの役割を果たし、もともと丈夫な生地と相まって、強靭極まる素材として知られている。しかも軽量で防水性も高いのだ。一方でハードかつ上品にも見える魅力的な素材感から、それほど強靭さを必要としない製品にもいまやたびたび使われている。僕自身もXパックという素材が好きで、バックパックのみならず、財布やポーチなどのいくつかの小物を愛用している。

とはいえ、スクランブラー35バックパックは、Xパック本来の持ち味である強靭さを生かしたモデルだ。シンプルな本体の形状、取り外して軽量化できるトップリッド、サイドばかりかバックパック内部にも付けられたギアループなどは、どれも耐久性の高さが要求されるクライミングパックの特徴であり、Xパックを使う意味がしっかりとある。

天蓋は取り外し可能

クライミングに適したバックパックは軽量化とシンプルさを重視するために、ハーネス類や背面パッドを簡素なものにしがちだ。このバックパックも例外ではなく、ウエストにつけられているのは、幅が広いハーネスではなく、ストラップのような細いベルトである。これでは重いものをぎゅうぎゅうに詰め込むと荷重が全身に分散できず、肩や腰が痛くなるかもしれない。だが、日帰り山行や温暖な時期の山小屋泊などには充分で、素材の強靭さを生かし、長く使える小型バックパックの選択肢の一つになりそうである。

カラー展開が多いのも心惹かれる点だ。僕の好みは雪のようなホワイトだが、あっという間に汚れるだろうな……。しかし、それも味というものなのかもしれない。

製品名:スクランブラー35バックパック
¥19,440(税込)
(25Lモデル:スクランブラー25バックパック

「前編」「後編」にわけて行った新製品のチェック。すでに販売が開始されているものも多いく、僕自身もまだ把握し切れていない。新しい出会いを求め、これからもウェブサイトやショップで再確認していきたいと思っている。

マウンテンハードウェア公式オンラインストア

2019/04/17