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Mantra Summits Challenge inインドネシア│レースレポート

2019/08/06

長い距離のトレイルを得意とするアウトドアライター中島英摩さんより、インドネシアで開催された『Mantra Summits Challenge』というトレイルランニングレースのレポートが届きました!


7月上旬、梅雨がなかなか明けずジメジメだった東京を飛び出して、乾季真っ只中のインドネシア・スラバヤへ行ってきました。これまでわたしはTDS、UTMB、Tor des Geantsなどヨーロッパのレースに毎年参加していたのですが、そこで東南アジアの選手を見かけることが多くなり、彼らはどんな場所でどんな風に山を走っているのか気になって東南アジアへ繰り出すことにしました。Asia Trail Masterというアジア圏の年間チャンピオンシップシリーズからレースを探し、日程の都合と「景色が良さそう」という理由だけでレースを決めました。

Mantra Summits Challenge(以下、MSC)です。
場所は、インドネシアのスラバヤ。えっ?スラバヤ?どこ?

ここです。
首都ジャカルタからは遠く、ジュアンダ国際空港というところから入ります。幼少期にジャカルタに住んでいた従妹を訪ねたことがあったものの、インドネシアは初めてといってもいいくらい全く何もわかりません。そこで、ジャカルタ在住のトレイルランナーの知人に連絡を取ったところ、MSCに出る日本人を紹介してもらえることになりました。

知人曰く、インドネシアのトレイルはとにかくトレイルの路面が複雑で、荒れていたり、テクニカルだったりと一筋縄ではいかないらしい。さらには、MSCは標高3,000m級の活火山(!)が舞台。かろうじて読める英字で書かれた過去参加者のBlogを読み漁ると硫黄臭で気持ち悪くなる人がいるほどだとか何とかという話。ということは、富士山と藪と泥を想定することにしました。

さて、そこでシューズの選択に悩みました。わたしが出るカテゴリは75km。普段100km前後の距離を走っているのでわたしにとっては少し短め。疲労を想定したクッション性は必要なく、それよりもどんな路面でも対応できる汎用性があったほうがいい。グリップはほどほど、耐久性は必要。なにより初めての土地でのレース。足のトラブルがないことを最優先。と、いうことでUTMBでもTor des Geantsでも履いて慣れているカルドラドにしました。初代モデルからアップデートの度に履き替えています。実はカルドラドⅡの柔らかなアッパーが一番好きだったけれど、カルドラドⅢは耐久性が向上したというので今回で初投入。アッパーのメッシュが硬くなっていて、今回のレースではその方が良いだろうと思い、履きつぶしたⅡからⅢへ買い替えて挑みました。

会場に着いて初めて知ったのですが、Columbia montrailがメインスポンサーのレースでした。会場にはブースがいくつも出ていて、コースガイダンスも丁寧で(インドネシア語と英語の両方で話してくれる)、東南アジアのトレイルランニングレースのなかではかなり大きな規模のレース。さすが、Asia Trail Masterシリーズ。現地で合流した東南アジア在住の日本人の方々も驚いていたほどでした。

さて、レースはと5時スタートの116kmカテゴリを見送り、75kmは夜が明けた6時にスタート。思ったよりもスタート地点に人がいます。75kmだけで80人強、女性の数はおよそ20人以下。5人くらいなら完走したら入賞かな!?なんて考えていたもので、屈強そうな女子に囲まれ、急に緊張して走り出しました。

長距離は慣れているものの、一体どんな山が待っているのか、道迷いしないのか、お腹を壊さないかなど不安は尽きず、久しぶりに「なんとか這ってでも完走せねば!」という気持ち。ボコボコの石畳とスタート早々から激しい藪。前のランナーを追いかけるようにすることで、かろうじて判別できるトレイル。標高が上がるにつれて火山らしい砂が積もったような土になり、雨が降ったら大変なことになりそうです。(乾季で良かった!)

ところで、このレース。75kmの獲得標高は5680m!ハセツネは約4500m前後。しかもスタート地点は標高763m、最高地点が3,339m。富士山の8.5合目くらいの高さです。これをスタート地点から一気に最高地点まで登るのです。13kmで標高2576mUPです。

わたしは登山が好きで、日本では年間通して標高2000~3000mの山に登ります。今回もすでに夏山シーズンに入ってから富士山含めてアルプスにも行っていて高度順応は十分。ストック使用可となれば、こっちのもの。そんなわけで気付けばどんどんランナーを抜いていき、結果的にはこの最初の登りが勝敗を分けることになりました。

噴煙もくもくの火山を2つ、息をするのも苦しいなかを駆け抜けます。日本ならば立ち入り禁止になりそうなレベルの火山。ゴーロや岩場も多く、どんどん脚もシューズも削られていく感覚がありました。

走りやすい樹林帯の記憶は2箇所程度。火山からの下りは、今度はガレ場ではなく草すべりのような藪の急坂。背の高さ(!)まである草や枝に、倒れた草や倒木。もうわけがわからないトラップになんども脚をすくわれて、なんどもゴロゴロ前に回転しながら下りました。足さばきに集中しながらも、足元は草で見えない、足元どころか前も見えない(笑)マーキングも見えない!

大きな山を終えると今度はゆるやかなアップダウンと林道が10km以上続きます。そうなると今度はバリバリ走ることに。後半は「絶対に走れないとんでもないトレイル」と「走るしかない林道とロード」の差が激しく、後者は登りも下りもとことん走ることになりました。ゴツいシューズにしなくてよかった!

後半にやってくる標高約2000m級と1400mの山。このどちらも「とんでもないトレイル」でした。2000mの山は登りの最後が約1kmで600mUP、つまり傾斜60%近い・・・壁? 路面は岩とマッドな赤土。下りは岩。1400mの山はこれが登山道だなんて信じられない!というジャングルでした。重症なけが人が出なくてよかったと思うほど。命からがらで、写真を撮る余裕など一切ありませんでした。

途中から、最初の山以降どんどん周りにランナーが少なくなり、異国の地で、ほぼ一人旅。75km以外にも4カテゴリあり、もっとランナーがいるはずだけどおかしいな、前の方にいるのか、あるいは遅すぎるのか、ロストしているのか。そんなことをグルグル考えつつも、とにかく無我夢中で楽しむことにできるだけ集中して走りました。スタッフや近くを走る男性ランナーに、いけいけ!もっといけ!となぜか煽られながら、最後の長い下りやロードまで、全力を振り絞って走りました。

制限時間は24時間。めいっぱいかかると思っていたら、あれ?もしかして20時間切れるかな?あれ?19時間切れるかも?今日中に終わっちゃうかも?あれ?あれれ?後ろから誰か来るかな?来ないな?何番目かな?計算が合わないままにもうあと数km。

現地時間で0時26分、真っ暗な中にかすかに光るゲートを目がけて猛ダッシュしてFINISH!真夜中だというのにマイクの大音量で祝福され、スタッフに囲まれ、首にかけられる完走メダル、そして数字が書かれた札。

「Congratulations! You are first woman!」

えっ?1位?
なんと、嬉しいことに女子で最初に帰ってくることができました。さらに嬉しかったのは、男女総合で4位だったということ。前の3人はほぼ見かけなかったので相当なレベル差があるものの、これまで入賞経験などほぼないわたしが、初めての東南アジアのレースで思わぬ結果を残せたことは何よりも最高の想い出になりました。

今回のレースは、事前情報通りの変化に富んだトレイルで、さらに岩や泥、枝、砂利、アスファルトなど否応なく脚もシューズも消耗されるコースでした。ほとんど新品に近い状態で履いたカルドラドは、ソールがすっかり傷めつけられて可哀想な見た目になりましたが、アッパー破れやソールの剥がれもなく、最後までわたしと闘い抜いてくれました。

MSCに挑むなら、タフさと軽快さの両方を備えている必要がある。いつもなら、レース直後は「もうこりごり!」なんて思うけれど、このタフさはクセになりそう!次は116kmのカテゴリにチャレンジしたいと思います。

着用シューズ:カルドラドIII

コロンビアモントレイル公式オンラインストア

2019/08/06