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高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2019秋冬新作チェック(前編)

2019/10/01

台風の襲来が相次ぎ、各地で大雨や洪水の被害が生じている本年。冬は雪が多いという予測もあるようだ。そんなこともあり、数あるアウトドアウェアの新作の中でも防水性に富むジャケットやパンツ類には、どうしても目が向いてしまう。

マウンテンハードウェアの今期製品の中にも、いくつもの注目のアイテムが登場しているようだ。それも、最新の技術や素材を使った先鋭的なモデルと、それとは反対に温故知新的な懐かしさを覚えるモデルと、両極端なのがおもしろい。街使いにも適していそうな雰囲気を持つものもあり、選択の幅が広くなっている。

今期の新作チェックは、今回の「前編」で防水性ジャケットとパンツをピックアップ。次回の「後編」ではインサレーションとパンツ、バックパックを取り上げていく。さて、今期の注目は……。

エクスポージャー2ゴアテックスプロジャケット
2019年の春夏の製品から、ひさしぶりに防水透湿性素材の代名詞的存在である「ゴアテックス」を使ったウェアが復活したことが話題になっていたマウンテンハードウェアだが、このエクスポージャー2ゴアテックスプロジャケットも名称通りにゴアテックスを使用した製品だ。ひとくちにゴアテックスといっても用途によって各種あり、これはそのなかでもタフなことで知られる「ゴアテックス プロシェル」。携行性のよさを考慮したレインウエアではなく、常に着て行動するという前提で考えられたハードシェルに位置付けられるジャケットだ。プロのガイドなどの使用にも耐えうる強靭さを持ち、その耐久性は雨よりも、さらに過酷な雪山のようなシチュエーションに向いている。

袖も立体裁断で作られている

エクスポージャー2ゴアテックスプロジャケットの生地は70デニール。かなりの厚みと張りを感じる素材だ。だが、実際に着てみると、はじめに触ったときほど生地のゴワつきは感じられない。これは体のラインに合わせた立体裁断が利いていて、体を動かしたとき、生地が無用に引っ張られたり、引き攣れたりしないからだろう。だから、柔軟とはいいがたい生地感なのに、体に負担なく行動できそうなのである。

もうひとつ気付いたのは、腰回りが広いことだ。以前のマウンテンハードウェアのジャケットには、お尻が大きめの僕には裾がタイトすぎるものもあり、つねに腰回りが締め付けられるような感覚が出てしまうものもあった。しかし、エクスポージャー2ゴアテックスプロジャケットにはゆとりがあり、リラックスして着られそうだ。これは後で紹介するビブと組み合わせて使う際に着用しやすくするためのデザインかもしれない。

身長177㎝の僕はサイズMを着用してみたが、腕の長さが過度に余ることもなく、レイヤードしやすい適度なサイズ感になっているのがわかった。袖を面ファスナーつきのテープで留め、手首にフィットさせられるのは一般的なジャケットと同じだが、エクスポージャー2ゴアテックスプロジャケットはかなり強く引き締められる(袖の口径を狭められる)ようになっているのが特徴だ。

袖が引き締められれば雪や雨が入らず済むため、要チェックポイントだ

僕はお尻が大きいのに手首は細いという体形なのだが、こんな袖ならウェアと腕の隙間をしっかりと閉じられ、袖から雪や雨が入りにくくできる。この点も好印象だ。立体裁断のよさや腰回りのゆとり、そして手首のフィット感といい、自分のウェアを買い直したくなるような着用感なのである。

ドローコードでフィット感を調整できる裾とフードには、近年開発された「Cohaesiveエンベデッドコードロック」が採用されている。

Cohaesiveエンベデッドコードロック。丸い模様がある部分を押すとロックが解除される

コードを引けば締まり、ボタンを押せばロックが解除される便利な仕組みだ。このパーツが大ぶりで少し違和感があるのは以前と変わらないが、邪魔になる場所につけられているわけではないので、良しとしよう。また、フードはヘルメットをかぶったままでも支障なく使えるサイズ感で、つばの部分には張りがあり、強風のときでも視界を妨げられることはなさそうだ。

ポケットは胸でも腰でもなく、腹部に集中してつけられている。表側にはフロントファスナーと並行するように2つのポケットが左右にあり、ほぼ同じ部分のさらに裏側にもサイドから手を差し込める2つのポケットが位置している。

中央のファスナーにあるポケットと、サイドにあるポケット

それだけではない。裏側を見てみると、表側からアクセスできるそれら各2つずつのポケットの真裏にも、左はメッシュ、右はファスナーつきのポケットが作られているのだ。少々ややこしいが、簡単に言えば、腹部の左右のほとんど同じ位置に各3つずつのポケット重なって存在しているというわけなのである。バックパックのハーネスが干渉しない位置にあるので使いやすいが、モノを入れすぎるとウェアの同じ個所ばかりが膨らむため、使用時はちょっと注意したほうがいいかもしれない。

裏の伸縮性のあるメッシュでできているポケット

ポケットの部分をチェックしていて気付いたのは、ファスナーの引き手の工夫だ。現在、金属の引き手に極細のコードをプラスしたタイプの引き手はとても一般的だが、このジャケットはそのコードの先端をゴムのような柔らかさをもつ樹脂で固めているのだ。固めているといっても指で持つだけで湾曲するような素材で、非常に小さいのに指をかけても滑らない。これまでにありそうでなかった仕様で、メーカーのこだわりが細部まで感じられる。見逃しそうなこういう小さな努力にはとても好感がもてる。

コードが樹脂で固めてある

脇の下にはこれと同じファスナーが付いたベンチレーターがあり、暑いときは広げて換気できる。ウェアの構造上、上から下にファスナーを下げるときはスムーズにファスナーを開閉できるが、下から上には少々動かしにくい。このあたりは改善すべきポイントにも思えるが、慣れれば問題なく使えるだろう。

脇のベンチレーターは大きく開く

製品:エクスポージャー2ゴアテックスプロジャケット
価格:78,000円(税抜)

エクスポージャー2ゴアテックスプロMビブ
エクスポージャー2ゴアテックスプロジャケットと対にして使いたいのが、エクスポージャー2ゴアテックスプロMビブ。ウェア内に雪が入りにくいように、腰から胸も覆う形状になったパンツだ。素材はジャケットと同じだが、腹部と背中の部分には伸縮性素材が組み合わされ、着心地のよさを上げることに貢献している。

足上げもしやすく、サイドの止水ファスナーで着用しやすい

ビブの表面には止水ファスナーが縦横につけられている。膝から裾につけられたファスナーはWタイプでどちらからも開き、着用のしやすさをアップするとともにベンチレーターとしても利用でき、なかなか便利だ。また、この部分のファスナーのうち、下部の引き手にはロックできるものが使われ、歩いているうちに知らないうちに開いてしまっていた、などということも防げる。

太ももの部分につけられた止水ファスナーは、ポケットへのアクセス部だ。このポケットには大きめのスマートフォンも収められる深さがあり、非常に使いやすそうである。ただし、開口部が真横のために、不用意に開けていると雪や雨が内部に入り込みやすい。気付いたら溶けた雪でスマートフォンが水没していた……なんてこともあり得るので、常にきっちり閉じておいたほうがよいだろう。ちなみにポケットは腹部に位置する伸縮性素材の部分にも左右に1つずつつけられている。

アクセスしやすい位置にあるポケット

そのポケットの上にあり、正面から見るとこちらもポケットのように見える2つのファスナーは裏側でつながり、実際は1本になっている。これは雪山用のビブによく見られる、トイレのときにお尻を露出できるようにつけられたファスナーだ。胸まで覆われていて一度着用すると脱ぎ着がしにくいビブだけに、このファスナーはやはりありがたい。

ウエスト部分が開くファスナーで脱ぎ着しやすい構造

裾にはパウダーカフがつけられており、ゲイターなしでも雪の侵入を気にしないでよい。同シリーズのジャケットは裾の裏側のパウダーカフが軽量化のためなのか省略されていたが、より雪が浸入しやすいパンツは簡略化していないのである。

個人的に好印象なのは、裾の内側の補強だ。雪山用ハードシェルパンツは、アイゼンの歯が触れやすいこの部分に強靭な生地を当てて補強しているのが普通だが、大半のものは素材が硬すぎたり、張りがありすぎたりして、着用感を損ねている。だが、このパンツの補強素材はじつに柔らか。メインとなるゴアテックスプロの生地と変わらない程度の柔軟さで、あまりゴワつきがない。実際に雪山で試したわけではないので耐久性の程度はわかりかねるとはいえ、ストレスなく歩けそうだ。

このビブのサイズMを身長177㎝の僕が着用すると、足の長さはまさにジャスト。試着の際の目安にしていただきたい。ただ、僕は足がかなり太いため、パンツはもう少し緩めのラインのほうがうれしかった。ゴアテックスプロの生地は伸縮性に欠けるため、なおさらである。とはいえ、それは僕個人のこと。一般的な体系の方には、ちょうどよい大きさなのではないだろうか?

製品:エクスポージャー2ゴアテックスプロMビブ

価格:74,000円(税抜)


パラダイムジャケット
正直なところ、「これを今、販売するのか!?」と思ってしまったのが、パラダイムジャケット。素材こそ、同社オリジナルの「ドライQ」という現代的な透湿防水素材が使われているが、どの部分を見ても20~30年前のジャケットのようなデザインなのだ。

なつかしいデザインだが、素材は現代的

フロントファスナーは一般的な形状のもので、止水タイプではない。その代わりにフラップで覆うことで防水性を高めている。

止水ではないことで開け閉めはしやすい

サイドのベンチレーターやポケットも同様にフラップで覆われていて外側からはよく見えず、まさに昔ながらのマウンテンジャケットそのもののルックスだ。しかも、ライナーは通気性と肌触りのよさを考えたメッシュで、これまた過去にはよく見られた仕様である。また、パウダースカートはファスナーで取り外せるようになっている。

メッシュがあることで肌に張り付かない

じつは、パラダイムジャケットのオリジナルは、ブランドが創業当時に販売されていたエクスポージャー ゴアテックス シェル。これはその復刻バージョンといえるものなのだ。それがわかると、フードのフィット感を調整する部分が昔っぽいナイロンのテープだったり、ファスナーの引き手が妙に大ぶりで重い金属だったり、袖にÐリングが付いていたりするという、現代のアウトドアウェアにはあまり見られない仕様が多いことにもうなずける。それに重量は760gもあり、現代の透湿防水性ジャケットとしてはだいぶ重いのだ。

カラビナ的に使えるDリングつき

機能面で見れば、先のエクスポージャー2ゴアテックスプロジャケットに敵うはずがない。このジャケットでも問題なさそうなのは、ちょっとした雪遊びのときくらいだろう。価格は半額以下だが、僕はこれを本格的な雪山登山で着用しようとは思わない。

だが……。僕はこのジャケットに異様に惹かれてしまう。じつは今期のマウンテンハードウェアのなかでも、個人的興味はトップクラス。その昔、同じようなジャケットを愛用していたときの思い出がよみがえり、懐かしくて仕方ないのだ。本気で購入を考えるほどである。もちろん街着としてではあるのだが。

なお、昔のマウンテンジャケットと少々異なるのは、身ごろのシルエットだ。当時のものよりも少しタイトめでデザインが洗練されており、明らかにカッコよくなっている。僕と同世代の方には懐かしく、若い人には新鮮に見える現代的なマウンテンパーカは、買いやすい値段ということもあり、ヒットするかもしれない。

製品:パラダイムジャケット
価格:29,000円(税抜)

これらの新作防水系ジャケットとパンツは、これからの寒い季節にかなり活躍しそうだ。山がメインならエクスポージャー2、街使いが中心ならパラダイムで間違いない。

さて、次回の「後編」でとりあげるインサレーションとパンツ、そしてバックパックはどうだろうか?


高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2019秋冬新作チェック(後編)

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2019/10/01