ページの先頭へ戻る

高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2020春夏 新作チェック(後編)

2020/03/26

山岳ライターとして山岳雑誌やアウトドア専門のwebメディアで活躍され、ギアのレビューや実地での使用レポートで信頼が厚い高橋庄太郎さんに、マウンテンハードウェアの2020年春夏の新作ウェアとバックパックをチェックしていただきました。後編はパンツとバックパックです。

※撮影商品はサンプルのため実際のカラーリングと異なります。

ますます気温が上昇し、桜の開花を迎えた日本列島。今年はどんな山に行こうかと、計画を練り始めている方も多いのではないだろうか?

マウンテンハードウェアの春夏の新作のなかでジャケット類とシャツをチェックした「前編」に引き続き、今回はパンツとバックパックを取り上げる「後半」。実際にそれぞれのアイテムを履き、背負ってみて、そのポテンシャルを探ってみた。


アセントクロップドパンツ
ストレッチナイロンを使った7分丈ほどの長さのパンツが、アセントクロップドパンツだ。伸縮性素材の進化によってフィットしていても足さばきがよい細身のパンツがアウトドアでは人気だが、それとは一線を画する太めのシルエットである。今、山歩きに使えば新鮮なルックスに見えるだろう。だがクライミング用と考えれば、以前から人気が高い足上げしやすいタイプである。

ズドンと太いフォルムが印象的。着こなしのセンスが問われそうだ。

ところでこのパンツ、何かに似ていないだろうか? 実はアセントクロップパンツは、その昔、マウンテンハードウェアにあった「ドウギパンツ」の流れを汲む製品。「ドウギ」とは、すなわち「道着」。そう、日本人にはなにかとなじみやすい柔道着のような雰囲気のルックスなのである。高校時代、必須科目として柔道の授業を受けていた僕としては、なんだか懐かしい気分になってしまった。

だが、柔道着と決定的に違うのは、やはり最先端の伸縮性素材が使われていること。ただでさえ緩やかなシルエットで足へかかる負担は少ないのに、大股で歩いても、かがんでも、足を組んでも、どの方向からも引っ張られたり、引き攣れたりする感覚がない。立体裁断でもない平面的な設計なのに、大したことだ。

すばらしい伸縮性。着ている感じがあまりしない。

素材が優れているだけではない。股の部分のガゼットがよい働きをしているようである。

こちらが股のガゼット。この+αの生地により、余裕が生まれる。

ディテールも見てみよう。裾にはドローコードが取り付けられ、引き絞れば裾が足へフィットしていく。裾のバタつきを抑えたいときや、パンツ内部への風の侵入を防いで保温力を上げたいときには重宝しそうだ。身長177センチの僕は、今回Mサイズのパンツをはいてみたが、直立しているとドローコードの位置はふくらはぎのほぼ中央部。コードで絞めつけながら歩いていると、コードの伸縮性によってパンツの裾はふくらはぎの上で固定された。膝上で引き絞って、ショートパンツのように履きこなすのもよさそうだ。

裾のドローコード。引き絞りすぎると、少し長く余る。

ウエストの部分もゴムで伸縮させてあり、使う人の体格によってはベルトなしでもいい。だが、ベルト自体はあらかじめ付属しており、ウエストが少し緩いと思われる方はわざわざ別に購入する必要がなく、うれしいことだろう。ちなみに、このベルトはパンツの内部に大半が隠れる構造だが、取り外しも可能。バックルは小さくてパックパックのハーネスに干渉しにくい形状で他のパンツにも流用しやすく、少し得した気分になれるはずだ。また、別途ベルトループもウエスト部分に付けられており、付属品とはタイプが異なるベルトを組み合わせることもできる。

ウエストのベルトループは、幅5㎝ほどの太さだ

こんなリラックスフィットのパンツは、山中での行動時に履く以外に、帰宅前の着替えとしてもよさそうだ。僕がもし手に入れたら、気楽な普段着にするかもしれない。

製品:アセントクロップドパンツ
価格:14,300円(税込)


ローンマウンテンクライムパンツ
極太のシルエットのアセントクロップドパンツに対し、ローンマウンテンクライムパンツは一般的なシルエットだ。いや、若干太めだろうか?

僕の太い足でも、キツくない緩やかなシルエット

膝には立体裁断が施され、なにより最高にストレッチ性に富む素材なので、足をどう動かしてもほとんど違和感がない。アセントクロップドパンツとは別方向で設計されたパンツなのに、ストレスなく履くことができるという点は共通なのが興味深い。

しゃがんでも足の突っ張り感はいっさいない

裾はゴムによって引き絞られ、ぬかるんだ場所を歩いても裾がシューズにつきにくく、泥などで汚れにくい。また、ウエストもゴムで伸縮させてあり、ベルトは付属していない。その代わり、パンツの内側にはヒモが通され、これを縛ればウエストの緩みを抑えられる。レインパンツでよく見られる仕様であり、今回チェックした色がブラックということもあって、チェック中には一瞬レインパンツと見間違えそうになこともあったくらいだ。

パンツの内側のヒモ。平織りのシンプルなタイプだ

使用されている伸縮性素材はSOLOTEXというもので、非常に薄い。撥水性に加えて通気性も持っており、風がわずかに通って涼しさを感じる。むしろ春先に使うと寒さを覚えるかもしれず、もっとも活躍するのは夏だろう。春や秋に使う場合は、内側にタイツを合わせて温度調整するとよいかもしれない。

モデル名に「クライム」という言葉が入っているだけあって、クライミングによさそうなパンツである。すべてのポケットにファスナーが付いているので、足を大きく上げても内部のモノが落ちないのもポイントだ。そんなローンマウンテンクライムパンツのポケットのうち、後ろポケットは引き手が表側にも裏側にもついている。これが意味するのは、ひっくり返すとポケットの中にパンツ本体を押し込めるというパッカブル仕様だということ。宿泊地にサブパンツとして持っていくときに重宝する工夫かもしれない。

こちらがパッカブルとしてポケットに収納した状態

ジャケットのような上物ならば多少サイズが合わなくてもなんとか着てしまえるが、大きめのパンツは自分で裾を踏んで転倒の原因になったりと、無理に履くのは危険が伴う。それに、わざわざ裾をゴムで伸縮させてあるパンツは、丈詰めするのも難しい。その点、アジアンフィットのパターンで作られているこのパンツは、日本人が履いても丈が余って困る可能性は少ない。そういう意味では、アジアンフィットのパンツはとても有用なのではないだろうか。

製品:ローンマウンテンクライムパンツ
価格:16,500円(税込)


UL20バックパック
“パッカブル”という点で、ローンマウンテンクライムパンツと共通するのがUL20バックパックだ。

※撮影商品はサンプルのため実際のカラーリングと異なります。

持ち運びに便利なパッカブル仕様

フロント部分には三角形のポケットがあり、この部分にバックパック本体を収納できる。大型バックパックと併せて使い、キャンプ地や山小屋から山頂に往復したり、帰りに温泉へ立ち寄ったり、お土産を買いに行ったりするときにも便利そうだ。容量20リッターの大きさは、温かい時期の日帰り登山にも適したサイズ感でもある。

ポケット内に収納した状態。表面にはバックパックのイラスト

モデル名に入っている「UL」とは、「ウルトラライト」のことだ。このバックパックの重量は340グラム。正直なことを言えば、これ以上に軽量なバックパックは巷に多く、ウルトラライトというほど軽くないように思うのだが……。

これはどこかのメーカーと比較しての相対的なウルトラライトなのではなく、マウンテンハードウェアというブランドなりのウルトラライトなのだろう。そう考えたほうが誤解しないで済みそうである。

実際、ウルトラではないとしても、相当軽いライトなモデルであることは間違いない。例えば、この次に紹介するキャンプ4 21バックパックは、UL20バックパックよりも1リッター大きいだけだが、重量は750グラム。軽く倍以上の重さなのである。

使用されている素材は、表面も内部も薄くて軽いものばかりだ

軽量なバックパックだけあり、シンプルな構造でディテールも簡素化されている。それでも1リッター以上のボトルが入るサイドポケットがひとつあり、ショルダーハーネスは通気性と速乾性に秀でるメッシュ地が使われるなど、重要な部分はおろそかにしていない。

サイドのポケットは、縦はもちろん横幅も充分だ

両サイドにはエンジ色の小さなループが5つずつ付けられていることにも注目してほしい。この部分を利用して自分で細いコードを取り付ければ、脱いだウエア取り付けたり、コンプレッションストラップ代わりにバックパックを小さくしたりと、使い勝手が大きくアップする。使う人のアイデアが試されるディテールといってよいかもしれない。ただ、できればあらかじめそれ用のコードが付属していれば、わざわざ自分で買い足す必要がなく、より有用だった気もする。

写真では3つ見えるエンジ色の小さなループ。ジグザグにコードを付けられる

その他、チェストストラップにホイッスルが付いていたり、荷室への開口部はストラップを引くだけで閉まるものだったりと、小さい体のなかに工夫がいっぱいだ。

チェストストラップのバックルは、ホイッスルの機能ももつ

コードを引くだけで閉まる荷室への入り口

個人的に気に入ったのは、チェストストラップの位置を変える部分の工夫だ。プラスチックや金属のパーツを使わず、ストラップの縫い方ひとつでしっかりと留められる仕様になっているのだ。こういう小さな部分まで気が利いていると、メーカーのモノ作りに対する信頼感が高まってくる。

折り畳んで縫っただけのストラップだが、固定力は抜群

ウルトラライトではないかもしれないが、UL20バックパックは十分に軽量である。日帰り山行に、サブバッグに、活躍の場は多そうだ。

製品:UL20バックパック
価格:19,800円(税込)


キャンプ4 28バックパック
UL20バックパックが実戦的な“山”の装備だとしたら、このキャンプ4 28バックパックは、“街”向きの新製品である。

モノの収まりがいいボックス型のシルエット

U字型に大きく開く荷室内部の背面にはノートPCが入るスリットが入り、その部分と背中の間には分厚いフォーム材のパッドが位置。PCを守りながら、背中のクッション性も向上している。

ファスナーは大きく開き、モノの出し入れは容易

ポケット類も豊富だ。トップ部分の短いファスナーを開ければ、柔らかなトリコット生地のポケットがあり、スマートフォンなどをダイレクトに放り込んでも傷がつかない。荷室のほうには外側から中身が見えるメッシュのポケットがふたつあり、一方はファスナー閉じることができ、もう一方はさらにペンホルダーなどが内蔵され、小物を小分けできる。サイドポケットも併せると、数えようによっては10以上のポケットになり、収納性では登山向けのモデルを圧倒している。

トップ部分のポケットは、内部でさらに複数のポケットに分かれる

ただし、このバックパックはそれほど軽いわけではない。生地が分厚くて丈夫なばかりか、ハーネスやストラップ類も軽量性よりも強靭さを志向した作りになっているからだ。もちろんその分だけ長く使えそうであり、登山のときほど長時間歩くことはなく、荷物も軽めの街使いならば、これくらいの重さは気にならないのではないだろうか。

人気が出そうなポイントがある。それは「直立性」のよさだ。ボトムはエッジを立たせた半円筒形の形状で、背面パッドの張りも加わって、適当に置いてもまっすぐに立つ。荷物の入れ方によってバランスは変わり、倒れやすくなる状況もないわけではないが、他のバックパックに比べれば、その直立する力は際立っている。これはクライミングの際に使う円筒形のホールバッグをイメージしたデザインだ。

ただ、そこに置いただけで直立。倒れにくい

街中で立ち止まったり、電車の中で立ち尽くしているときに、バックパックが倒れないというのは非常にありがたい。汚れないばかりか、他の人に迷惑をかける心配も少なく、いいこと尽くめだ。上部には硬いハンドルが付いており、手提げバッグのように持てるのもバックパックの直立性を生かすのに貢献している。クライミング用ホールバッグが原点にあるバックパックとはいえ、こういう点はやはり山よりも街使いで生きてくる長所だと思う。

ところで、この「ホールバッグがモチーフ」の新製品で、僕がもうひとつ気になっているバッグを最後に紹介したい。それはキャンプ4ダッフル95というものだ。

キャンプ4ダッフル95

自分の上半身よりも大きく、なんでも入れられる

その名の通り、長いアウトドアトリップに便利そうな95リッターの大容量で、強靭なナイロン素材を使っている。しかし大きさのわりには柔らかいともいえ、荷物を入れた状態でなければ縦には直立はしない。できるだけコンパクトに収納したいと思えば、このほうがいいのではあるが。

荷物を入れれば、この大きさでも直立してくる

ただデカいだけではない。バックパックのように背負うために取り付けられたハーネスは簡単に取り外して位置を変えられるので、見た目よりも背負いやすい。内部には大きなメッシュポケットがあり、シューズが入れられる巨大なサイドポケットまでついている。

横に寝かせればサイドポケット、立てればトップポケットという位置

しかも、このサイドポケットにはバッグ本体が入るパッカブル仕様だ。どうやらマウンテンハードウェアはパッカブルが好きなブランドのようである。

ポケットに本体を収納すると、まるで円盤のような形状に

こんなバッグに荷物をたっぷり入れて、長いアウトドアトリップに出たいという気持ちがわいてくるのは、やはり気持ちのよい春になったからだろうか……。

製品:キャンプ4  28バックパック
価格:25,300円(税込)

製品:キャンプ4 ダッフル95
価格:31,900円(税込)


そんなわけで、「前編」「後編」と併せてチェックしてきた計9点。どれもこれからの季節に活躍してくれそうである。しかし、好みや用途は人それぞれだ。自分により適したものを探しに、ぜひこのマウンテンハードウェアのウェブサイトをもっと自由に散策してみてもらいたい。

高橋庄太郎さんのマウンテンハードウェア2020春夏新作チェック(前編)

マウンテンハードウェア オンラインストア

2020/03/26