講師: 石川弘樹(チームコロンビアモントレイル)
大学時代にアドベンチャーレースの存在を知り、アウトドアスポーツ競技の世界へ足を踏み入れる。トレイルランニングをメインに経験を積み、アドベンチャーレーサーとなって世界を転戦。2001年より得意とするトレイルランニングに専念し、日本初のプロトレイルランナーとして始動。世界中のトレイル、レースを駆け抜け現在に至る。トレイルランニングの日本での健全なアウトドアスポーツとしての普及を目指し、全国でイベント講師やレースプロデュースを行っている。
【戦績】
日本山岳耐久レース(ハセツネ)優勝2回('02,'03)
Western States100mile 9位('07)
Hard Rock 100mile 7位 ('05)
UTMB 14位('05)
GRAND SLAM OF ULTRA RUNNING獲得:USA('07)
東海自然歩道FKT('16)
─まず、シューズを手に取った第一印象はいかがですか。
シンプルですよね。見た目の形状とデザインがスッキリしていて余計な飾り気がないところがいいですね。ウエアを選ばないので履きやすいと思います。シューズの好みはあまり偏りがなく、苦手なものもないので、何でも履きます。でもデザインに関してはシンプルなものが好きですね。もちろん機能は最も大切ですが、ウエアとの組み合わせでコーディネートしやすい方が着用率はうんと上がります。今回の青のカラーは、持っているウエアや好きなコーディネートに合わせやすそうです。
─実際に履いてみた感触はいかがでしょうか。
バハダを思い起こすような着地の時の安定感があります。やっぱり安心ですよね。アッパーは最近のモデルに例えるならばmontrail F.K.T.をさらに軽く柔らかくした印象です。それでいてmontrail F.K.T.などでも採用されているソックライナー(アッパーとシュータンが一体化している)形式で包まれるようなホールド感があります。履き心地は、バハダ3よりもしなやかで、montrail F.K.T.よりもソフトで軽いですね。ソールが厚いので見た目には重く見えますが、履いてみると軽くて驚きました。トゥボックスはやや広め、足指が動いてちゃんと使えるのも良いと思います。
─どんなフィールドやコンディション、レースにむいていると思いますか。
アスファルトや硬い土の路面にも、トレイルにも、どちらにも"いける"シューズですね。まさに葉山の裏山コースのように、コロコロと路面状況が変わっても対応できるオールラウンダーですね。変化に富んだM I Xトレイルのような場所で活躍してくれると思います。履き心地が軽いので、短い距離を走る時、速めに走ってみたい時、あるいは気軽にちょっと走りに出掛けたい時などにぴったりだと思います。ロードランから入った人が初めて履くトレランシューズとしてもあまり違和感がないはず。初心者はもちろん、中級でもおすすめできるシューズですね。レースならショートからミドルくらい(30〜50km)の走れるレースが良いと思います。
登ってゴールじゃない、下りもあるバーティカルに挑戦する時などにも合うかもしれません。
─石川さんがトレイルランニングシューズに求めるものは?
コロンビアモントレイルは2008年からずっと履き続けているので、それはつまり自分の足に合っているということでもあり、とても信頼しています。もちろん、様々なブランドのシューズに足を入れてみたこともありますが、モントレイルが最もしっくりくるポイントのひとつに「かかとの収まり具合」があります。走る上で、フィット感とフィーリングとしてとても重要視している部分です。
また、今回の新モデルの土台となっているバハダについては、初代から3まですべて履いてきました。初代はゴツくて、現行のラインナップではトランスアルプスのような屈強さがありました。そこから2〜3に続くアップデートで洗練されていくなかで、どんどん軽くなっていきました。やはりシューズの軽さも大事ですよね。ただ、下りをカッ飛ばす時などは、安定感も欲しいものです。その安定感は保ちながら、アッパーの柔らかさや屈曲性、フィット感によって、バハダの頃に比べて実際の重量よりも軽く感じるようになったと思います。
BAJADA
BAJADAⅡ
BAJADAⅢ
フィット感は外せないポイントです。気持ちよく走り、より良いパフォーマンスを発揮するには、足とシューズが一体化していることが理想です。これまでのバハダにはなかったソックライナー仕様によって理想的なフィット感に近くなっていますね。
もうひとつ加えるとすれば、シューズの耐久性。アッパーはしなやかな生地ですが、そこへ最近の技術革新のひとつでもあるプロテクションコーティングが追加されたおかげで耐久性も良さそうです。
─2020年の活動について教えてください。
レースやイベントがほぼ開催できず、プライベートで行きたい場所にも行けない1年でした。でもそのおかげで、いろんなことをじっくり考えて発信することができました。最近は脚の不調もありあまり思うように走れていないのですが、走る姿で伝える人もいれば、環境保全活動やトレイル整備などを通じてメッセージを伝えるなど、自分だからできることもあると思っています。いま、自然環境や地球で起きていること、フィールドに出て自分の目で見ていることも、発信して伝えるようにしてきたので、今後も継続していきたいですね。
─まだまだ先の見えない今。2021年の目標は?
コロナ禍の後、この先の将来、何をどうしていくか考えなければなりません。まず、トレイルランナーとしての自分のことで言えば、治療を進めていき、また自由に走りたいと思っています。そして、シーンのなかでの自分自身の役割を考え、長く続けてきたからこそトレイルランニングの健全性などに耳を傾けてもらえる立場として、これからもトレイルランニング界に貢献していけるように活動していきたいと思っています。