「山のスキルを磨けば、山頂はもっと近くなる。」をテーマに登山知識・スキルの向上を目的とした10回+番外編の計11回の講座を予定している2024-2025シーズンのコロンビア登山学校。日帰り登山から雪山登山やテント泊まで初心者から中級者まで幅広くご参加いただける内容を用意しており、ご興味のある回のみの参加も可能です。
第3回は長野県と山梨県に跨る八ヶ岳連峰の北部で行われ、苔の森や様々な高山植物を楽しめる夏山シーズンに限らず、秋は紅葉の名所として有名で、冬はスノーシューハイクや雪山登山など四季を通して多くの人で賑わう人気のエリアです。
今回ガイドを務めたのはコロンビア登山学校主任講師の伊藤伴さんで、参加者は初めてのテント泊の方からヒマラヤの6000m峰に登頂した経験のある方まで合計6名が集まりましたが、登山の経験値に関わらず皆様和気あいあいとしたムードでの山行となりました。
初日はピラタス蓼科スノーリゾートに集合し、自己紹介と講座の説明を行ってから北八ヶ岳ロープウェイで標高2237mの山頂駅へ。 ロープウェイ内からは南八ヶ岳の山々や、遠くに北アルプス・中央アルプスも見え、山好きにはたらまない景色を楽しみながらの空中散歩となりました。
歩き出す前にガイドからシューズの履き方、バックパックの背負い方、トレッキングポールの適切な長さの合わせ方などをレクチャー。 テント泊装備でいつもより重量のある荷物なので入念に準備をしてからスタートします。
午後から小雨が降る予報でしたが、午前のうちは晴れ間も見えていました。 整備された木道を進みながら青い三角屋根が可愛らしい縞枯山荘を通過し、一休みしてから樹林帯に入り本格的な登りが始まります。
足元には大きな岩が多く、慎重に進みながら徐々に標高を上げます。 木漏れ日の差す樹林帯はとても神秘的で、ガイドからの山域の植生や生息する動物の話に皆さん興味津々でした。
日帰りや山小屋泊登山とは勝手の違う大型のバックパックなので、倒木を通過するのも一苦労でした。
最初に登頂した標高2403mの縞枯山の上部はシラビソやコメツガの木で覆われており、立ち枯れた樹木が数段の横縞を作る「縞枯現象」が山名の由来との説明があり、実際にその様子を見ることができました。
山頂からの展望はありませんが、少し進んだ展望台から周囲の景色を楽しむことができ、ここで長めの休憩を取りながら記念撮影。 目の前にはこれから登る茶臼山を望むことができました。
展望台から一度大きく下り、再び岩の多い樹林帯を上り詰めて標高2384mの茶臼山へ登頂。 ここまで雨雲から逃げるように歩いてきましたが、麦草峠へ向けて下り始めた途端にパラパラと雨が降ってきてしまいました。
ガイドの判断で、木々が雨から守ってくれる樹林帯の中ではすぐにレインウェアを着用せず、樹林帯を抜けて雨ざらしになってしまう麦草峠に出る手前でレインウェアを着用してバックパックにはレインカバーを装着。 登山において降雨は好ましいものではありませんが、雨のなかでもレインウェアを着用するタイミングや判断基準などの学びがあるのも登山学校です。
麦草峠を経て小雨が降る中を40分ほど進むと宿泊地であるテント場に到着。 この日は白駒池の畔に建つ青苔荘(せいたいそう)のテント場を利用しました。
ガイドからまずテントを張る場所や向きの選び方をレクチャー。 出入口を風下に向けた方がテントが飛ばされたり壊れたりしにくかったり、水が流れた跡がある場所は雨が降った時に水の通り道になるなどの知識を基に場所を決め、それからテントの組み立て方、ペグの打ち方、張り綱の使い方を習い、それを実践しながら各自のテントを設営しました。
ほぼ止んでいた雨が、テントを設営し終えたタイミングで強く降り出してしまい、一旦テントへ避難。 雨が弱くなり夕食時に再び集合しましたが、各自持参した食事をバーナーで調理し、いざ食べ始めようとした時にこの日一番の強い雨が降り始めてしまい、再びテントへ避難することになってしまいました。
夜になって雨雲が過ぎ去った後はお酒やお菓子を持ち寄って山やギアのトークで盛り上がり、テント泊回ならではのゆったりとした時間を楽しむことができました。
テント場の真横にある白駒池は標高2115mに位置する湖で、夕刻、夜、早朝で様々な表情の変化を楽しむことができ、特に夜の満天の星が印象的で、この日は夏の大三角がきれいに見えました。
2日目は朝から好天で、集まって朝食を食べながらテント泊時の軽量化のコツや食糧計画の話で盛り上がりました。
食後は出発前に講習を行いテント泊向けのギアについてガイドから解説。 テントはダブルウォールとシングルウォール、自立式と非自立式、マットなら折り畳み式、エアー式、自動膨張式、シュラフの種類や収納のコツといったそれぞれのタイプのメリット、デメリットやどんな山行スタイルに合うかを詳しく学びました。 各自のギアを持ち寄って実際に比べたり触ったりしながら使用感を情報交換できるのもテント泊回ならではです。
講習を終え、テントを撤収してから重いバックパックは小屋に置いて必要最低限の荷物で北八ヶ岳屈指の展望スポットである高見石に向けて出発します。
朝の樹林帯は心地良い気温でしたが、前日の雨の影響で足元がぬかるんでいたり、岩や木道は濡れて滑りやすくなっていたりと非常に集中力を要しました。
白駒池山荘経由で1時間ほど登ると高見石小屋に到着し、そのまま小屋の脇から大きな岩が折り重なった標高2225mの小ピーク、高見石へ登頂。 上からはテントを張った白駒池を見下ろすことができました。
記念撮影をしてから高見石小屋名物の揚げパンでランチ休憩。 ココア、きな粉、抹茶、チーズ、黒ゴマの5種類で、この日もこれを目当てに小屋を訪れる人で賑わっていました。
休憩後は別ルートで直接青苔荘へ下り、荷物を回収して下山を開始。
北八ヶ岳の原生林には485種類の苔が生息しており、特に下山ルートは大小様々な苔が絨毯のように敷き詰められていてとても幻想的でした。
帰りは前日に登頂した縞枯山と茶臼山を巻いて出逢ノ辻、五辻を経由してロープウェイ山頂駅まで戻りました。
再びテント泊装備の重い荷物を背負って歩き始め、最後の最後まで地味な長い登りや滑りやすい木道が続き疲労感も感じられましたが、それ以上にゴールした時の皆さんの達成感に満ちた表情が印象的でした。
作成者情報
- 北島
コロンビア・マウンテンハードウェア昭島アウトドアヴィレッジ店 -
コロンビア・マウンテンハードウェア昭島アウトドアヴィレッジ店店長。夏山シーズンはテントや小屋泊で日本アルプスや八ヶ岳を中心に高山のピークハントに行くことが多く、雪山登山にもハマっています。
店舗インスタグラムで登山レポートを投稿しています。
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