コロンビア登山学校「WIN THE SUMMITE ACADEMY 第9回 立山・雄山で春の雪山を楽しむ」【イベントレポート】
2019/06/19
コロンビア登山学校
2019年4月27(土)-28日(日)
国際山岳ガイド・近藤謙司氏が講師を務める、コロンビア登山学校「WIN THE SUMMITE ACADEMY 第9回 立山・雄山で春の雪山を楽しむ」に参加してきました。
吹雪の立山に到着した時はどうなることかと思いましたが、翌日は無風快晴。最高の登山となりました! その2日間をレポートします。
文章と写真=杉村航
GWの最初の週末、立山アルペンルートでバスやケーブルカー、ロープウェイを乗り継いで室堂ターミナルで顔合わせ。大混雑で都会の喧騒さながらのカオス。
人混みの大部分は観光客です。そして滑り道具を抱えたスキーヤーやスノーボーダーたちと登山者が入り混じり、ごった返して熱気でムンムン。
全員集合したら、さっそくガイドの紹介を済ませて身支度を整えます。
<ノルベルト・プライニングさん オーストリア出身の国際山岳ガイド
いまは日本在住で日本語は堪能。しかも読み書きもできます。
身長は197cm。遠くからでも見つけやすい! >
<イノッチ 山岳ガイド
人懐っこい笑顔に的確なアドバイスをくれるのでお客さんも安心。
お酒が大好き。山小屋でも遅くまで飲んでますが、朝にはスッキリ! 誰よりも早く起きます。>
ここは標高2450m。乗り物で一気に標高を上げたので体調を崩す人がでる場合もあります。
とにかくゆっくりと行動したいのですが、混雑のなかにいるのも疲れます。
逃げるようにターミナルの外へ。扉の向こうは……。
<激しく降る雪が風に舞い上がり、完全に吹雪。ちょっと先も見えないホワイトアウト状態です。サングラスだと辛いくらいに荒れていました。フードをしっかりと被って歩き出します>
<かろうじて雪面から出ている案内標識>
<吹き殴るような雪。視界はかなり悪いです>
宿泊する室堂山荘までは平らな雪原をまっすぐ歩いていくだけ。
夏ならわずか10分ほどの距離ですが、とにかく視界は真っ白!
ルートの目印となる竹ポールに沿って、吹雪に耐えながらじわじわと進んでいきます。
<ようやく室堂山荘に到着。外でアイゼンを外し雪を払って中へ>
部屋に入って荷物を整理したらリラックスして自己紹介タイム。冬山登山の経験なども話してもらいます。
<ほとんどが初対面。まだまだ遠慮しがち>
<コロンビアとアドベンチャーガイズからの参加記念品>
<真剣な眼差しでハーネスの装着をチェックするノルベルトさん>
装備の確認を室内で行います。いろんなメーカーのギアが登場します。お店で買うときに説明を聞かれてはいるようですが、それぞれの装着の仕方や使い方のレクチャーを受けました。
さぁ、外に出て明日の登山に向けてトレーニングです。皆さんやる気はあるのですが、快適な小屋から出るのは僕も含めて億劫になります。
天候は相変わらず荒れ模様。小屋からあまり離れないようにして明日の登山に必要な技術の練習です!
<アイゼンの爪を引っかけないように両足の間隔も開けて>
・フラットフッティング
足裏全体、アイゼンの全ての爪が雪面につくように足を運びます。
登りは比較的簡単ですが、下りは難しい。コツは腰を落とすこと。
<ピッケルの握り方やポジションについてもレクチャー>
<ロープとの接続を確実にできるようにカラビナのセットの仕方も教わります>
<お互いの顔を見て。声をかけてあげて>
凍傷は自分で気付きにくいものなので、お互いの顔をチェックしあって色が変わってないか気にしてあげます。早めに気づけば軽傷で済みます。再び、室堂山荘に戻ってからはロープの扱いの基本中の基本を学びます。まずは8の字結びを確実に。
<フィギアエイトノットオンアバイト練習中>
<上手にできたかな?>
<みんなの楽しみ、夕餉の時間。食堂は活気にあふれています。
待ちきれなかった人たちはすでにビールを飲んでましたが、あらためて乾杯!>
明日に備えて早めに就寝。
一部、例によって遅くまで飲んでる人もいたようですが……
ハッと目覚めると外が薄ら明るい。
すでに抜け殻になった布団もちらほら。
予報より早く天候が回復して、慌てて外に出てみると……。
<ピラミダルな奥大日岳が素晴らしい>
<キンと冷え込みマイナス10℃ほど。奥のピークが雄山山頂>
一面新雪に包まれた室堂平周辺の山々。
吹き溜まりでは新しい雪が30cm以上積もっています。
厳冬期に近い雰囲気に今日の登山への期待も高まります。
<朝ご飯。緊張とワクワク感が入り混じりますね>
じっくり時間をかけて準備を行います。
とにかく、美しく輝く一面の銀世界。寒さも気になりません。
<あらためて一人ひとりの装備を確認>
アイゼンがちゃんと履けているか。ハーネスの装着に間違いはないか。
山岳ガイドがしっかりチェックしてくれるので安心です。
<山の天気は気まぐれです。出発前に雄山をバックに記念撮影!>
いよいよ雄山の山頂を目指して出発です。
気の早いバックカントリー愛好家や登山者たちは夜明け前に歩き出しているので、すでにトレースがバッチリついています。ルートに間違いがないのを確認しつつ、進んでいきます。ラッセルがほとんどなくて助かりました。
まずは装着したビーコンがちゃんと発信しているかを確認。
間隔を空けてノルベルトさんの前を通過します。
<歩き出しでビーコンチェックをするノルベルトさん>
<浄土山の山腹をトラバースして一ノ越を目指す>
<一の越まではあと少し。急坂で雪面が氷化していて少々手こずります>
<一の越山荘周辺は想像以上に賑わっています>
<一の越からの歩き出し。ここからはアルパインムードが一気に高まります>
一ノ越から先は岩と雪の急な尾根を登っていくことになります。
ガイドひとりに4人ずつロープで繋がってゆっくりと歩き出します。
雷鳥のカップルがわずかに雪面からのぞくハイマツ帯にいるのを発見。枝葉をついばむのに夢中の雌。
そんな雌のために自分は囮になって目立つ位置で登山者たちを引きつける雄。
「そんな男性がいいな~ うらやましい~」
と女性陣から声があがります。
<景色はどちらを向いてもとにかく絶景>
<最初の核心部。急な雪壁を登ります>
<でもロープで繋がっているので安心。余裕の笑顔の方も>
<先ほどとは反対側にも雷鳥が軽快に雪面を歩いていました。天然のアイゼンが付いているようで羨ましい。しかも飛べる>
<ハードな登りですが、楽しんでいますね!>
<遠く八ヶ岳や南アルプス。奥には富士山までくっきりと見えていました>
<短いですが、ルンゼ状の岩場を抜けて登っていきます>
微妙に登高ラインが屈曲しているし、高低差もあるので、ロープを弛ませないようにお互いに配慮しながら登ります。
広く気持ちのいい雪田で休憩です。雪といっても風に磨かれた雪面はほぼ氷です。傾斜もあるし、いつ風が吹くかもしれません。
装備を下ろすときもザックやピッケルの置き方を考えないと転がっていってしまいます。
<ピッケルはシャフトを深く差し込むか。ピックを刺して>
<休憩時はここぞとばかり、思い思いにカメラのレンズを向けて>
<岩混じりのルートは少々歩きにくいです。アイゼンの爪を引っかけないようにご用心>
<山頂直下は傾斜も再び上がり、露出している岩が多いので気分はアルパインクライミング!?>
ついに山頂部へ躍り出ました。緊張していた人も達成感で満たされた表情です。
無事に全員登頂達成。コースタイムよりわずかに早いくらい。お見事です!
<祝登頂! 雄山3003m 笑顔で三角点にタッチ>
大きな雄山神社・峰本社の社殿も軒下まで雪で埋まっています。
そのままロープで繋がったまま一番高い祠へ。鳥居もほとんど埋まっているので、まだまだ積雪はたっぷりありますね。
<社殿の裏側に回ると、北側に剱岳が威風堂々と鎮座していました>
<祠で。最高の眺めを楽しみながら、全員で登頂写真>
昼食がてらにちょっと長めの休憩です。
こんなに無風な山頂部は珍しい。日頃の行いが良いからですね~。
<山頂付近にて。すっかりリラックス。もぐもぐタイムです>
<仲良くなった仲間たちと記念撮影>
絶景に囲まれしかもポカポカ陽気。
行動食を食べたりお茶を飲んだりしながら会話に花が咲きます。それでもここは標高3015m。ひとたび天候が荒れると大変です。
名残惜しいですが、下山を開始。
登りの難所は、下りではさらに難関となります。
十分に気を引き締めて。
<「登山の事故の多くは下山中です」>
<やはり下りは高度感があるので、最初は腰が引けてしまう人も>
再びロープに繋がって歩き出します。今度は登りとは逆にガイドが最後尾となるので、ルート選びやすれ違いの間合いも先頭の人に委ねられます。
責任重大です。
<アイゼンを履いた下りでは、下に向かってまっすぐ平らに足を置いて。ちょっと怖いけれど、これが一番安定してアイゼンが効きます。昨日のトレーニングの成果が見事に出てますね>
<一の越に戻ってきました>
ここまで来れば、急な岩場も終わったのでひと安心です。
結び合っていたロープも解除。ほっとした表情で健闘をたたえ合います。
けれどこの後も室堂山荘までは上部に大きな斜面がある危険箇所も通過します。休憩してリフレッシュしたら再び歩き出します。長い下りトラバース。疲れた足腰に響いてきますね。
<室堂山荘に向けて下りトラバース。進行方向には奥大日岳が目立っています>
<下りてきて室堂山荘前で集合写真。溢れる笑顔に今回の登山の充実感が出てますね~>
「昨日吹雪の中で練習しているときは夢中だったけど、おかげで今日の下山に役立った」
「楽しかった~」
「もっと山に行きたくなりました♪」
この2日間だけでも随分とスキルアップしたのは見てても分かりますし、みな実感してるのでしょう。
これからさらに山に行けば、きっとどんどん成長するはずです。
最高の天気に恵まれたおかげもありますが、ガイドも含めて全員そろって表情がキラキラ輝いていたのが印象的でした。
2019/06/19